宅間孝行が主宰する「タクフェス」に新シリーズが誕生した。その名も「タクフェス春のコメディ祭!」。“タクフェス=感動作品”というこれまでのイメージと差別化を図り、笑いに特化した作品を上演するこの新シリーズ第1弾となる『わらいのまち』が、2017年3月30日(木)に東京・東京グローブ座にて開幕した。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、作・演出・主演を務める宅間のほか、永井大、柄本時生、柴田理恵、鈴木杏樹が登壇し、作品への意気込みを語った。
「タクフェス」としては本作が初のコメディ作品だが、本作は劇団「東京セレソンデラックス」にて約6年前に初演されており、これが待望の再演となる。宅間は「これまでの切ない作品でも笑っていただきたい部分はあったので、特にコメディだからという意識はありません。ただ、泣かせる必要がないから(演じる自分たちも)プレッシャーなく楽しめます(笑)」とコメント。また、芝居はお客さんに育ててもらうものだと語り、「決して安いものではないチケット代を払っていただいた分、楽しませるぞ!という思いでキャスト・スタッフ一同劇場でお待ちしています」とメッセージを送った。
柴田も「お客さんの反応で自分たちも変わると思うので、そこが勝負です」と同調し、「人の出入りが繰り返される中、ひとつの事柄でもさまざまな見え方があって、複雑に絡まったものが集結して最後のシーンに繋がる。そこが妙味だと思います」とアピール。
コメディ初挑戦となる鈴木は「人を笑わせることの難しさを感じました」と感想を述べるも、「お客さんとの兼ね合いで変化していくのが楽しみです」と笑顔。永井も「間やテンポ感が難しいんですよね」と苦戦しつつ、作中では町おこしの実行委員長役ということもあり「回を重ねるごとにもっと楽しさを届けていきたいです」と意気込む。柄本はこれまでの稽古を振り返り、「つらい事があるからこそ出来あがっていく過程が楽しい、“つら楽しい”ですね」と独自の言葉で心境を表現していた。
物語は、田舎町のさびれた温泉旅館「まつばら」が舞台。翌日から始まる町おこしイベントを視察するため、代議士が急遽宿泊することになり従業員らは大喜び。次男であり主人の信雄(永井)、三男の板前・将雄(柄本)、仲居の真知子(鈴木)、くにゑ(柴田)たちを中心に準備が進められる中、長年音信不通だった“疫病神”のあだ名を持つ長男・富雄(宅間)の帰郷が噂され―。
囲み会見で、見どころについて聞かれた柴田は「展開の早さ」と即答したが、その言葉通り暗転なし・転換なし・ノンストップで駆け抜ける約150分のステージ。舞台上から客席へ語りかける場面や、写真撮影OKのサービスタイムを設けるなど、会場中を巻き込みながらドタバタ劇を繰り広げる。富雄がアドリブで従業員らに絡むシーンと、すれ違いにより生まれるコントのような会話も爆笑必須で、笑いに振り切ったベテランキャストの勢いに負けじと、辻本祐樹や岡本玲などの若手も奮闘。笑いのタネを随所に散りばめながら真面目な展開も迎え、メリハリのある疾走感の先に真実が待っている。
舞台『わらいのまち』は4月12日(水)まで東京・東京グローブ座にて上演。その後、愛知、兵庫を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。
【東京公演】3月30日(木)~4月12日(水) 東京グローブ座
【愛知公演】4月14日(金)~4月16日(日) 中日劇場
【兵庫公演】4月18日(火)~4月23日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
(取材・文/堀江有希)
(5枚目以外撮影/齊木恵太)