2016年9月2日(金)に東京・CBGKシブゲキ!!にて、劇団プレステージ第11回公演『リサウンド~響奏曲~』が開幕した。劇団プレステージ(以下、劇プレ)は、アミューズ所属の俳優20名で構成され、昨年10周年を迎えた劇団。今回は約1年ぶりの本公演となり、脚本・演出には、ほさかよう(空想組曲)を迎えた。劇プレとほさかがタッグを組むのは、これが3度目となる。
(記事内にて、一部配役と内容に触れています)
倉橋家の三男・奏(大村まなる)は、売れないバンド活動を続ける長男・響也(今井隆文)に憧れていたが、楽しみにしていた兄のライブ中に突発性の難聴にかかり、耳が聞こえなくなってしまう。不意に抱えることになった障害を嘆くでもなく、何事もなかったかのように大学へ進学する奏は、親の代わりとなり働く次男・楽(長尾卓也)の期待に応えるため、大学で教師への道を歩んでいく。だが、次第に兄弟の気持ちはすれ違い、周囲の人間を巻き込み、不協和音を奏ではじめる・・・。
大村が「演じながら気になることが普段より多く、なかなか集中するのが難しい役でした」と語る奏というキャラクター。障害を嘆くこともなく生きるキャラクター性からか、物語は悲壮感だけに包まれることなく、兄弟愛、仲間、音楽という要素を加えて熱さを生み出していく。
響也を演じる今井も、「リアクションを間違えてしまうと、聞こえないことが伝わらなくなってしまうんです」と今回の舞台の難しさを明かしながらも、奏の気持ちに気づいてやれず悩む長男役を好演。
役の見どころについて、今井が「全部と言いたいんですけど、(バンドマンとして)格好つけるのが、ちょっと恥ずかしいんですよ(笑)。格好つけるぐらいなら、脱いだ方が楽・・・」とおどけて話すと、大村は「楽屋裏でよく脱いでるんですよ!みんなのテンションを上げようとしてるみたいなんですけど、こっちのテンションは上がってないんですよね(笑)」と暴露し笑わせた。
そんな大村は、見どころに「現在のシーンと過去の回想シーンを行き来するところ」を挙げた。「自分で納得できるものにしたいと思っていますし、お客さんにも注目してもらって、プレッシャーをかけていただきたいですね。聞こえている時、聞こえてない時、耳だけの問題じゃなくて心の中も違うだろうから、そこの違いを表現したいです」と語った。また、自身の改名についても触れ「名前が“まなる”になって初の舞台なので、生まれたての“まなる”をぜひ観に来てください!」と力強くアピールしていた。
そして、今回の最大の注目は劇団員自ら挑むライブシーンだ。そのライブシーンについて、今井は「変なところで音が出たり、ノイズが入ったりしないように、楽器のチューニングや、バンドの音周りに色々と注意しています。バンドは二度とやらないかもしれないというぐらいの気持ちで演じています。見逃すと損しますよ!と言いたいです。新しい今井を観てください」と気合い十分。
ラストの心を震わせるライブシーンと、そこに至るストーリー。大村も「今までで一番“生”を味わえる作品」という劇団プレステージ流のロックな舞台を、ぜひ劇場で目撃してほしい。
舞台『リサウンド~響奏曲~』は9月18日(日)まで東京・CBGKシブゲキ!!にて上演。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)