撮影:上原タカシ (C)Disney
昨年の7月に日本公演通算10000回を達成した劇団四季のミュージカル『ライオンキング』。1998年の開幕以来、多くの観客に夢と生命の大切さを伝え続けるエンターテインメント作品だ。その『ライオンキング』が6月1日(水)~9月21日(水)の計16回公演で、あるキャンペーンをおこなうとの連絡を受け、久しぶりに四季劇場[春]に足を運んだ。
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最後に『ライオンキング』を観たのは10年前くらいだったか…。同じ敷地内にある四季劇場[秋]や、徒歩1分の自由劇場の客席には新しい作品がかかるたびに座っているものの、『ライオンキング』に関しては、長年に渡って常に上演されているということもあり、逆に足が遠のいていた感がある。
5月某日のソワレ。劇場内には制服姿の学生たちの姿も多く見え…さて、10年振りの『ライオンキング』はどんな風景を魅せてくれるのだろうか…。
撮影:下坂敦俊 (C)Disney
舞台上に物語の狂言回しとなるラフィキが現れ「ナーツィゴンニャー♪」と歌い出し、舞台袖や思いもかけない場所からサバンナに生きる動物たちが続々と登場する。そしてせり上がる“プライドロック”上に立つライオンの王、ムファサとその妻サラビ。彼らが歌う「サークル・オブ・ライフ」を聞いた途端、涙が止まらなくなった。
圧倒的なオープニングを久しぶりに観て一気に期待が高まったところで、本作の主人公・シンバ(=ヤングシンバ)の登場である。王であるムファサはその心得を息子に説くのだが、好奇心と元気に満ち溢れたシンバには父の言葉が響かない。
撮影:山之上雅信 (C)Disney
そんなシンバを利用し、自らが次の王になろうとするのがムファサの弟であるスカーだ。ムファサ役、内海雅智の深く低い声、威厳に満ちた態度に対し、スカー役の野中万寿夫は出来過ぎた兄に対して卑屈な態度を取りながら、労せず権力を手にしようとするセコさもはっきり見せてくる。
そしてシンバはまんまとスカーの策略にはまり、偉大な父王を失って傷心を抱えたままサバンナを後にするのだが、そこで出会うのが“大丈夫、なんとかなるさ”と日々を明るく生きているミーアキャットのティモンとイボイノシシのプンバァのふたり(二頭?)。シンバはティモンとプンバァとともに毎日楽しく暮らし始めるが、ある時から自らの“罪”について…そして“自分は一体何者なのか”と深く考え始める…。
撮影:上原タカシ(C)Disney
この日、成長したシンバを演じたのは海宝直人。劇団四季のミュージカル『美女と野獣』のチップ役でデビューし、その後『ライオンキング』でもヤングシンバとして舞台に立った経験がある俳優だ。まさに“成長”し、このサバンナに帰って来たという点でも役柄とぴったり一致する訳だが、海宝はエネルギーに溢れる若きライオンを華のある姿でストレートに演じ切り、シンバが自我に目覚めてからの苦悩や成長を繊細&ダイナミックに魅せてくる。
今回、約10年振りに『ライオンキング』の客席に座り、改めて本作が持つ「受け継がれていく生命」という不変のテーマを体全体に浴びた気がした。前述の「サークル・オブ・ライフ」もそうだが、星空に死んだ父・ムファサが現れ、ラフィキらによって歌われる「彼はお前のなかに生きている」など、年を重ねたことでより実感できる場面も多くあったし、シンバの叔父、スカーの自己評価の低さからくる言動にもどこか共感できる自分がいた。
長期にわたって上演されていることや、学校行事の一環として観劇される機会も多い作品ということで「大人が観ても面白いのだろうか」と思っている方も実は多くいるかもしれない。だが、オリジナル演出家、ジュリー・テイモアがインドネシアやアフリカのテイストを取り入れ構築したソリッドな演出や、エルトン・ジョンの優れた楽曲、“善人”だけではない魅力的なキャラクターなど、見どころは満載である。
そして本作『ライオンキング』において、日々の仕事で少し疲れた大人向けのキャンペーンが6月1日(水)より四季劇場[春]にてスタートする。平日夜の対象公演に来場し「四季の会」カウンターで「仕事帰りに来ました」と入場レシートを見せながら伝えると、ライオンキングの「心に響く台詞ステッカー」がもれなく貰えるというこの企画。個人的にはスカーの「人生は不公平だ」ステッカーが一押しだが(笑)、どのステッカーが当たるかはその日の運次第。ぜひ劇場で人生の指針となる(かもしれない)一枚をゲットしてみてはいかがだろうか。
・問い合わせ
劇団四季 東京オフィス 03-5776-6730
(文中のキャストは筆者観劇時のもの)
(取材・文 上村由紀子)