多くの観客を魅了し続けてきたミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』が、2025年5月10日(土)に東京建物 Brillia HALLにて開幕を迎えた。これに先立ち、公開ゲネプロと取材会が行われ、主要キャストが公演にかける熱い思いや、20周年という節目を迎える本作への意気込みを語った。

劇場が熱狂と興奮のるつぼと化す!血沸き肉躍るミュージカル
ロマン・ポランスキー監督のカルト映画『吸血鬼』を原作に、脚本・歌詞をミヒャエル・クンツェ(『エリザベート』など)、音楽をジム・スタインマンが手掛けたミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』(通称:TdV)。
1997年にウィーンで世界初演された本作は、2006年、クロロック伯爵役に山口祐一郎を迎え、山田和也の演出のもと鮮烈な日本初演を飾った。圧倒的なエネルギーで観客を虜にし、千秋楽には1,200人もの人々が当日券を求めて並んだという伝説を持つ初演以降、5度にわたる再演を重ねる超人気演目となった。
そして2025年、6年ぶり6度目の再演が実現した。運命的なことに、今年は日本初演から20周年というアニバーサリーイヤー。 血沸き肉躍る熱狂のミュージカルに、新キャストを交えて新たな血が注がれる。
クロロック伯爵役、20年目の到達点と新たな挑戦
取材会に登壇したのは、クロロック伯爵役の山口祐一郎と城田優、サラ役のフランク莉奈と中村麗乃、アルフレート役の太田基裕と寺西拓人、そしてアブロンシウス教授役の石川禅と武田真治(いずれもWキャスト)の面々。城田、フランク、中村、太田、寺西、武田は今回が初参加となる。
まず口火を切ったのは、本作の象徴ともいえるクロロック伯爵役を20年間務める山口。「この牙があると大変しゃべりにくいんですが(笑)」とユーモアを交えつつも、「作品がようやく成人式を迎えました。そろそろ、(クロロック役に)誰か来ないかな~と思っていましたら、(城田の方を向き直り)こんな美丈夫な息子ができて私は幸せです」と喜びを滲ませた。
今回、初めてクロロック伯爵役に抜擢された城田は、「いろいろな課題と不安要素が多々ありまして、そんな感情がまだ自分の中で整理しきれてない状態なのですが・・・」と率直な気持ちを吐露したが、すぐに表情を引き締め、「20年続いた『ダンス・オブ・ヴァンパイア』のシンボル的存在であるクロロック伯爵を、自分なりに精一杯、日々向上心を持ち続け全うして、最後の最後まで演じきれれば幸いです。お客様には、このコメディとホラー要素がふんだんに備わったミュージカルを楽しんでいただけるよう精一杯頑張りたい」と決意を語った。
サラ役を演じるフランクは、以前から客席でこの作品を観ており「憧れだった」と目を輝かせながら、「初めてこの舞台に立たせていただける喜びと、それをお客様と共有できる楽しみな気持ちでいっぱいです。観客として参加していた時に、最後にみんなで踊ったところとか、本当に楽しかったので、観に来てくださるお客様にもその楽しい気持ちを持って帰っていただけたら」と期待を寄せた。
同じくサラ役の中村は、ゲネプロを「すごく緊張しちゃいました」と振り返りつつ、自身と役の不思議な縁について語った。実は、「麗乃(れの)」という名前を付ける際に「以前、母と父が『レノ』と『サラ』で迷ったという話を聞いていて。役をいただいた時、これはご縁かもしれない!と思いました。『サラ』だったかもしれない私をお見せできるので、楽しみにしていただけたら嬉しいです」と、役にまつわる不思議な縁を明かし、会場を和ませた(これに寺西が「僕も親に聞いたら、名前の候補がアルフか、拓人だった」と重ねると、城田が「記事の見出し、それになっちゃうよ!」とツッコむ一幕も)。
お互いの印象について、フランクが中村に「麗乃ちゃんは、私の実の妹よりも年下なので、すごく守ってあげたくなる」と、姉のような温かい眼差しを向けると、中村もフランクに対し、「私が本を読んだ時に想像していたサラ像がまさにフランクさん。本当に気さくな方で、それにすごく救われた瞬間がたくさんありました。ご一緒できて本当に嬉しいです」と、全幅の信頼と尊敬の念を向ける。ウフフと微笑み合う二人は、本当に姉妹のよう。
アルフレート役は太田と寺西のWキャスト。製作発表の終了後に互いに「たくぴー(寺西)」「もっさん(太田)」と呼び合おうと言っていたが、太田はいつの間にか「テラ」になっていたことが明かされた。それについて、太田が「あまりにも昭和すぎるなと思って(笑)」と弁明すると、「演出の山田さんだけがずっと律儀にたくぴーって呼んでくれてたよ」と寺西。太田は、初志貫徹(?)できなかったことを「山田さん、すみませんっ!」と詫びつつ笑った。
台本だけでなく、お菓子ボックスも共有するなど、共に役作りに励んできたという二人。太田は「テラとは本当に仲良くさせてもらっていて、自然体でいられる関係になりました」と信頼を寄せる。寺西も「もっさんは、こんなに端正な顔立ちなのに、ビビってる感じがキマるんです。お芝居の時の、何かが憑依しているような目が僕は大好き。僕にはできない魅力」絶賛し、互いの個性を認め合いながら高め合う様子を明かした。
続いて、教授役の二人。アブロンシウス役の石川は、6年ぶりの再演に「私は、実はこの作品はもう二度と上演がされないかと思っていました。というのも、この作品は全員が客席に降りるんです。お客様とすごく近いところでコンタクトできる、とても楽しい作品であります。コロナを経験し、今もなお大変な思いをしていらっしゃる方もいると思いますが、またこうして皆様とお会いできる機会ができたことを幸せに感じながら、最後まで務めたいです」と、観客との再会への想いを真摯に語った。
新たにアブロンシウス役のWキャストとなった武田は「この役は、初演では僕の個人的な心の師匠である市村正親さんがなさっておりましたので、同じ役をやらせていただける喜びに打ち震えております」とコメント。そして、「この作品、教授の何気ない一言が音楽のキューになっていたり、段取りがものすごく多いんです。限られた稽古の中で、それを自分が理解して実践できるようになったのは、これまで演じてこられた方が現役で演じて見せてくださるという、一番理想的な形で稽古を進められたから。石川さんがいなかったら、僕の初日は開かなかったかもしれない」と深い感謝を示した。
この言葉に、石川も「私は市村正親さんから役を継いだんですが、初日はもう自律神経がおかしくなって、自分がどこを向いているのかわからない状態だったので、今の彼の気持ちはとてもよく分かる」と共感していた。
初めてWキャストができたのは、山口も同じ。山口は城田を「これから宇宙が始まるようなエネルギーに満ちた息子ができたので、これで私は次から縁側で落ち着いて、息子の活躍をゆっくり眺めることができる」と最大級の賛辞で称えた。「稽古場でも『客観的に初めてクロロックを見られたから、すごく面白い発見が色々あった、ありがとう』ということを毎日のように伝えてくださって、励みになりました。少しでも何かのお役に立てたなら良かったなと思います」と、恐縮しつつもレジェンドからの言葉に喜びを語った。
最後に山口が「2025年、いろんなことがありますけど、皆様に一番元気をお届けすることができるミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』、ぜひ劇場に足をお運びください」と力強くメッセージを送り、会見を締めくくった。
レジェンドと新キャストの新たな感性が融合!やっぱりWキャストはおもしろい
長きにわたり愛されてきたゴシック・コメディミュージカルの傑作が、新たなキャストと熱意を加えて帰ってきた!『ダンス・オブ・ヴァンパイア』で長きにわたりクロロック伯爵として君臨し続ける山口は、観客に深い安心感と抗えない興奮を与える、まさに伝説的な存在となった。劇場空間を制圧するような帝王感は揺るぎない(劇場が変わったことでさらに増したかもしれない)。また、自身も会見の中で語っていたが、城田という“息子”を得たことで新たな進化が起こっているように感じられた。これだからWキャストはおもしろい。
そして、城田のクロロック伯爵像はすべての想像を超えてきた。そこに現れただけで誰をも納得させる、人間ではないヴァンパイア役としての説得力。もはや美の暴力。圧倒的な歌声はまさに人間をかどわかす武器だ。城田という俳優が持つ繊細さが、その抗いがたい引力を強め、新たな伯爵像を見せてくれる。
経験豊富なフランクの見せる小悪魔的サラと、乃木坂46からの卒業を発表しミュージカル界の新星として羽ばたき始めた中村の純粋無垢なサラの違いもおもしろい。そして、アルフレート役の太田・寺西、アプロンシウス教授の石川・武田の組み合わせのバランスは、作品のテンポ感を自在に変化させそうだ。
また、山口と共に20年出演し続ける駒田一のWキャストとして伊藤今人(梅棒)がクコール役を演じるのも触れておきたいところ。クコールと言えば、幕間のパフォーマンスがファンにはおなじみ。ゲネプロで、伊藤は「先代が20年やってるから緊張してる!」と言っていたが、そのスピリッツはしっかりと受け継がれるようだ。
レジェンドと新キャストの新たな感性が融合し、さらにパワーアップさせる『ダンス・オブ・ヴァンパイア』の世界。チケットは入手困難だが、幸運にも“舞踏会への招待状”を手にできた方は、赤いハンカチやタオルを忘れずに。なお、公式サイトには「当日券」へのエントリー方法が掲載あり。
(取材・文・城田・中村・寺西・武田ver.ゲネプロ撮影/エンタステージ編集部1号)
※そのほかの写真はオフィシャル提供



ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』公演情報
ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』 | |
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キャスト | クロロック伯爵:山口祐一郎 / 城田優 サラ:フランク莉奈 / 中村麗乃 アルフレート:太田基裕 / 寺西拓人 シャガール:芋洗坂係長 レベッカ:明星真由美 ヘルベルト:ジュリアン マグダ:青野紗穂 クコール:駒田一 / 伊藤今人 ヴァンパイア・ダンサー=伯爵の化身:佐藤洋介 / 加賀谷一肇 アブロンシウス教授:石川禅 / 武田真治 |
スタッフ | 【脚本/歌詞】ミヒャエル・クンツェ 【音楽】ジム・スタインマン 【ヴォーカル・ダンス編曲】マイケル・リード 【演出】山田和也 |
チケット情報 | チケットぴあで予約・購入する |
公式サイト | https://www.tohostage.com/vampire/ |
公式SNS | X(Twitter):@toho_stage |