【撮影:阿部章仁】
2016年12月に四季劇場[秋]で上演される劇団四季の新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』。4月18日(月)、四季芸術センター(横浜市)にて本作オーディションの本選が行われ、主要キャストであるカジモド役とエスメラルダ役選考の模様がプレスに公開された。今回はエンタステージも潜入(?)したオーディションの模様をレポートしたい。
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まず、審査会場にエスメラルダ役の候補者・6名が集められ、演出を担当するスコット・シュワルツ氏から「エスメラルダは自分の面倒をずっと自分で見てきた女性。男性的な面を持った人と捉えられがちだが、本当は純粋で女性らしい面も併せ持っているんだよ」と役についてのイメージが伝えられ、候補者一人一人による歌唱審査と台詞の審査へと移行した。
6名のエスメラルダ役候補者は以下の通り(五十音順)
岡村美南、三平果歩、平田愛咲、松山育恵、宮田愛、吉田絢香
一人ずつ会場に入り、課題曲2曲と3パターンの台詞を、海外スタッフ、四季スタッフ、関係者が見守る中、順に披露していく候補者たち。エスメラルダの強く野性的な面を押し出す者もいれば、キュートなモードで意外性のある役作りをしたり、「神」との対話に重きを置いた表現を打ち出す者もいて、その個性の違いに驚かされる。候補者全員が大役経験者でもあることから、レベルの高い審査となっていた。
短い休憩を挟んだところでカジモド役候補たちの審査がスタート。10名の候補者たちは以下の通り(五十音順)
飯田達郎、飯田洋輔、笠松哲朗、神永東吾、厂原 時也、鈴本務、田中彰孝
一和洋輔、海宝直人、李涛(3名=外部からの参加)
【撮影:阿部章仁】
シュワルツ氏から10名の候補者たちに向けて「この役を演じることは大きなチャレンジ…特別な役だからね。カジモドは身体的には普通の人ではないが、その反面とても強いパワーを持っている。この役を特殊メイクで表現する方法もあるが、今回のプロダクションではそうではなく“芝居”で見せていきたい。だからオーディションでも身体的なチャレンジが見たい…足や腕、肩の動きを少し工夫して演じて貰いたいんだ」とのレクチャーがあったところでオーディションがスタート。こちらも一人ずつ会場に入り、課題曲2曲と台詞2パターンの審査が行われた。
カジモド役の解釈は正に十人十色で、切なさや心の奥の叫びを表出させる者、辛さを見せずあえて明るい芝居をする者、ピュアな面を前に出してくる者…と、こちらも個性豊か。何人かの候補者には、シュワルツ氏が更にディレクションを加え、同じシーンを再度繰り返させる場面もあった。カジモド役の候補者たちは若手から大きな舞台でのメインキャスト経験者と年齢もキャリアもさまざまな分、より“カジモド役に本当に必要なものは何か”という点が大きく浮き上がった審査だったように思う。歌の表現力、肉体や表情の使い方、繊細な心理表現、声の強さ、シュワルツ氏のディレクションに対する反応…オーディションとは言え、非常に見応えのある2時間弱となった。
そして今回取材をして改めて感じたのは、劇団四季の層の厚さとオーディション受験者たちへの周囲の眼差しの暖かさだ。台詞の審査では座内のベテラン俳優、道口瑞之、田邊真也、荒木美保らが候補者たちの状態を見極めながら相手役を務め、フロントで審査を行う6人以外の関係者たちも常にポジティブなモードで彼らを見守っていた。勿論、役が決まって稽古に入れば厳しいことも多々あるのだろうが、少なくともこの日のオーディションでは候補者たちが委縮したり、ネガティブになったりする空気は一切感じられなかった。
本オーディションは劇団内外から広く人材を募集したオープンオーディション形式で行われ、カジモド、エスメラルダ、フロロー、フィーバス、クロパンのメイン5役に関しては応募総数1600通(アンサンブル、クワイヤ含む)の中から38名が本選へと進んでいる。
『ノートルダムの鐘』出演候補者たちの“戦い”はまだまだ続く。それを勝ち抜いた俳優たちが立つ12月開幕の舞台が今から楽しみでならない。
(取材・文:上村由紀子)