12月11日(日)に四季劇場[秋]にて初日の幕を開ける『ノートルダムの鐘』。劇団四季がディズニーとタッグを組み、大人のシアターゴアーを視野に入れて送り出す新作ミュージカルだ。11月24日(木)には初日に先駆け、四季芸術センターにて稽古場公開と囲み取材が行われ、各キャストの候補者、及び演出のスコット・シュワルツ氏をはじめとする海外スタッフが報道陣の前に姿を現した。
先日掲載した公開稽古レポートに続き、今回は囲み取材の模様をお伝えしたい。
稽古場から場所を移して行われた囲み取材。演出を担当するスコット・シュワルツ氏と、カジモド役候補の海宝直人、飯田達郎、田中彰孝の3名が席に着き、プレスからの質問に答える。
まずシュワルツ氏が「現在、特に西欧諸国で、自分と考え方が違う他者・・・マイノリティを排除する動きが顕著になっていると感じます。『ノートルダムの鐘』で言えば、フロローと同じ考えの人間が増えているんですね。この作品がアメリカで開幕したのは今から2年前ですが、当時より今の方がその傾向は強まっています。本作ではさまざまな問題を物語の中で投げかけますが、答えは観た人それぞれに考えて欲しいというスタンスを取っています」と、本作が現代に通ずるミュージカルであることをアピール。
カジモド役候補者の3名は役を演じる上でのアピールポイントを問われ、海宝が「ピュアで真っ直ぐな心を持ったカジモドの繊細さと肉体の力強さ・・・その両方しっかり見せていきたい」と語ると、飯田も「僕は稽古場で通し稽古や小返しが行われているのをずっと見ているのですが、毎回涙が出るくらい感動します。歌に関しては、高音まできっちり声を出せるよう、日々稽古をしています」と続き、田中が「初めて台本を読んだ時は、カジモドの台詞を自分の言葉として語ることが難しく、自分なりの試行錯誤を続けました。今は作品の持つ深いメッセージをきちんとお届け出来るよう、この役を演じていきたいと心から思っています」と真剣な表情で話した。
演出に関しては「俳優の演技と音楽に重点を置きながら、光の使い方を強く意識するステージングになっています。劇中に登場するクワイヤ(聖歌隊)は、実際に1482年、ノートルダムに実在した人たちでもあります」とのコメントもあり、派手な仕掛けを前面に押し出すのではなく、繊細な人間ドラマと15世紀の世界観とを特に大切にした作品となりそうだ。
公開稽古の際はカジモドの複雑な表情を作り、身体的にも負荷がかかった状態でいた海宝の華のある笑顔と、時に笑いを取り混ぜながら力のあるトークを展開していく飯田、天然の素顔も覗かせつつ、真摯に質問に応えていく田中・・・三者三様の個性あるたたずまいも強く印象に残る会見となった。
劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』は、12月9日(金)、10日(土)のプレビューを経て、12月11日(日)、いよいよ四季劇場[秋]にて初日を迎える。
(取材・文/上村由紀子)