キャスト全員で起きる化学反応で『ファントム』の世界観を作れたら
ミュージカル『ファントム』~オペラ座の怪人の真実~。エリック役を演じる城田優がこのミュージカルにかける意気込みとは?
前編はこちら:【インタビュー】ミュージカル『ファントム』城田優にインタビュー<前編>
――ミュージカル俳優としてキャリアを積んでこられた中で、城田さん個人としての課題はありますか?
単純にもっと歌が上手くなりたいですね。僕と世界のスターの違いは、歌の安定感だと思うんです。感情が高ぶってくると歌や声がどうしてもぶれてくる。感情を抑えればいいんでしょうけど、自分としては抑えたくない。でも時には涙や鼻水がじゃまをするんですよね。世界のミュージカルを観た時、めちゃめちゃ感情的になっていても、ブレずに歌っている方がたくさんいるんですよ。怒りや悲しみや切なさや苦しさ、そういうエネルギーをリアルに表現したい…作られたものではなく、リアルなものを出したいし、そこに歌の安定感も併せて持てるようになりたい。それが課題ですね。
――でもそのエネルギーを発散する表現を毎日続けるのは消耗しそうですね。
めちゃくちゃ消耗しますし、疲れますね。でもそれは僕達が生で芝居をやる楽しさだったり、お客様がそれを観て面白いと思う部分ですから。そこは妥協したくないですね。恋人が死んでるのに泣かない人がいますか、友達が殺されたのに発狂しない人がいますか、と。この間出演した『ロミオ&ジュリエット』の時も、マイクがオフになっているところでも叫んだりしていて、それって喉にも負担がかかるんですよね。2役やっているから肉体的にもきついし。先輩方に「優くん、すごく伝わってるから、そこまでやらなくていいよ。聞いてるほうが心配になる」と言ってくださって。でもそこで抑えてしまったら、ぼくの演ってる役柄が崩壊してしまうと思ったんです。だからそこでセーブしなくてもいいくらい強い喉だったり、強い歌だったり、エネルギーが欲しい。そう思いますね。
――最後に、この作品への意気込みを。
サッカーチームに例えれば、いろんな種類の選手が出るカンパニーだと思っています。スター選手が全員揃ってますというわけでもなく、フレッシュな選手ばかりでもない。でもその中でこそ起きる化学反応によって、この『ファントム』という世界観を出せればと思っています。
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稽古場レポート
まだまだ夏真っ盛りの稽古場。廃校の体育館を利用された広いスペースの片隅を見ると、セットの一部に高く積まれたマット? に寝転がる城田。どうやらここが定位置のよう!?
この日の稽古場は、山下リオ演じるクリスティーヌがオペラ座の衣装係として採用され、その歌声をエリックが聴いて…というシーン。脱ぎ捨てられた衣装を拾ったりかけたりしながら「Home – 私の夢が叶う場所」を歌う山下。一度シーンを返した後、音楽指導のスタッフから「もう少し楽しそうに」と指摘が飛ぶ。どうやら衣装にブラシをかけている時に沈んでしまっているように見えるようで、スタッフが再現した様子に山下も思わず笑ってしまう。
バルコニーのようになっているセットの高い場所から、山下の歌う姿を眺めている城田。この曲は途中からエリックが加わり、クリスティーヌとエリックのデュエットで終わる構成。最後をどう合わせるか、という話になり「最後の合わせは城田君が調整してもらって」というスタッフの声に城田が頷く。
その後、城田は一度休憩になっても気になる部分があったようで、部分的に一人歌稽古をしていた姿が印象的だった。主役として、この『ファントム』のクオリティを少しでも高めたいと尽力する、その熱意が垣間見えた稽古場。いよいよ、本番の幕が開く。