とてもリアルな作品。それがこの『ファントム』の魅力です
9月13日(土)より赤坂ACTシアターで上演されるミュージカル『ファントム』~オペラ座の怪人の真実~。小説『オペラ座の怪人』をもとに作り上げられたこの作品は、怪人ファントムの人間像に焦点をあてたストーリーと独創的な楽曲で世界中で親しまれている。今回、タイトルロールのファントム…エリック役を演じる城田優に、その意気込みをインタビュー。この作品にかける想いやいかに?
――まず、この作品が他の『オペラ座の怪人』と違う点をお伺いできますか?
オリジナルのストーリーではありますが「親子」ですね。エリックという少年と母親と父親、家族が物語の背景にある。それによってグッと親近感が湧くんですよ。要は、なぜエリックがファントムになったかという“エピソード0”が描かれているんですね。それはアンドリュー・ロイド=ウェバー版、ケン・ヒル版では描かれてない部分で。
エリックの生い立ちや心情、細やかな部分に焦点が当てられているというのが何よりも違うし、それが出てくるだけでエリックという人間に対して違う心情が生まれてくるというか。単なるホラーやサスペンスでなく、せつなくて、はかなくて、愛おしくて、美しくて、醜くて…いろいろな感情が生まれてくる物語になっているんですよね。これがもし現実に起こっていてもおかしくないな、とすら思うんです。
今から100年前の話ですけど、ちゃんとリアリティを追求してるというか。細やかな愛情やコンプレックスをちゃんと描いている、それがこの『ファントム』という作品だと思います。
じつはこれはエリックの物語であり、エリックの父親・キャリエールという人の物語なんですよね。彼がすべての物語の発端で、すべての人達と関わり、もともとはオペラ座をコントロールしていた。それが支配人を更迭させられて…目線を変えれば『キャリエール』という作品でもありえるんですよ。彼の存在、それが他の『オペラ座の怪人』とは違う部分ですね。
――実際、今稽古場でエリック役を演じられていていかがですか?
エリックは難しいですね。バランスが難しい。ダニエルはとても信頼して尊敬している演出家なんですが、感覚の違いや、お互いのエリック像のズレもある。大前提としてエリックは地下でずっと暮らしていて、従者という行き場のない人たちは周りにいるけれど、仲の良い人はいない。ずっと一人でキャリエールに育てられてきた。そんな人の前にクリスティーヌという人…自分が追い求めていた何万分の1のピースのような人が突然現れて、衝撃的に彼女の前に出てしまうんですけど…その後の流れがずっと地下にいた人物の割にはスムーズな部分もあるし、彼はとても良くしゃべるんですよね。そこの矛盾をどうしていくか、とか。
僕はエリックは人間として欠落がある人だと思っていて、空気がよめないところを出していきたい。でもダニエルの中では、エリックはもっとクールでジェントルマンな人だと。台本が説明すること、自分が想像する彼をマッチさせるのが難しい。そこを今すりあわせている最中です。
――チームの中では座長というポジションですが、その点に関してはいかがですか?
今回、舞台の中でがっつり絡むのは(吉田)栄作さんと(山下)リオちゃん、マルシアさんくらいなんです。でも栄作さんは初ミュージカルで「優についていくから」と言ってくださるし、マルちゃん(マルシア)も時々「ねぇ、ここ優だったらどうする?」とか。「あれ?」と(笑)。日野(真一郎)くんとリオちゃんに関しては初舞台、しかも日野くんは演技も初めて。僕も16歳の時、初舞台の時にそういう瞬間はもちろんありましたから、ダニエルに許可をとって稽古の合間にみんなで自主練とかをしています。
だから傍から見たら、結構生意気な感じになってるかもしれません(笑)。演出や音楽、いろんな点で僕なりにチェックして、言うことは言うし、アドバイスもするし。でも、僕ができているできてないは別として、今回の『ファントム』という作品のタイトルロールを演じる以上、すべての矢面に立つのは僕なんですよね。だから少しでも完成度はあげたいし、1mmでも高いレベルのものをお見せしたい。お客様にとって、誰が初舞台とか関係ないですから。
でも、この間の『ロミオ&ジュリエット』でも初舞台のキャストがいましたし、最近そういうポジションになることが多くて(笑)。本来自分がやらない台詞や歌をやってみることが多くなるんですよね。そうすると気づくこともあります。自分もそこで勉強できるというか、芝居のことで解決できることも多くて。なんか最近俺、芝居教えるの上手くない!? とすら思います(笑)。どうすれば伝わるんだろう、わかりやすいんだろう、ということを考えながらやってますし、勉強にもなるし。演出にも最近興味が出てきましたね。