少年社中×東映の舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』が、2018年1月6日(土)に東京・サンシャイン劇場にて開幕した。本作は、毛利亘宏が主宰する劇団少年社中の20周年記念第1弾。井俣太良、大竹えりら劇団員に加え、鈴木勝吾、宮崎秋人、椎名鯛造、佃井皆美、相馬圭祐、丸山敦史、唐橋充、松本寛也、細貝圭、大高洋夫といった面々を迎え、悪漢たちによる“ピカレスクロマン”を描く。
物語の舞台は、江戸時代。長き戦乱の世は終わりを告げ、三代将軍トクガワイエミツ(宮崎)の治世となっていた。トクガワ幕府のもと天下の泰平は永劫に続くかと思われたが、世を乱世に戻そうとする“東照大権現”トクガワイエヤス(大高)が現れた。かつて、トクガワ幕府を開き泰平の世を築き上げたその人が、日ノ本の滅亡を目論む。
イエヤスに立ち向かうべく、イエミツは7人の極悪人を召喚し、日ノ本奪還の戦いを始める。イエミツの元に現れたのは、マクベス(鈴木)、織田ノブナガ(細貝)、ピーターパン(椎名)、フック船長(唐橋)、ジャック・ザ・リッパー(佃井)、ファントム(堀池直毅)、リチャードIII世(山川ありそ)。
一筋縄ではいかない極悪人たちの中で、魔女(井俣、相馬、大竹)の予言を受けたマクベスは、日ノ本を自らの手中に収めるべく、策を巡らす。その裏で、リチャードIII世、織田ノブナガらも動き出し・・・。果たして、日ノ本を手に入れ、世界を収めるのは一体誰なのか―!
毛利が、開幕前に「こんなにも自分自身が劇場で観たい!早く観たい!と思う作品は記憶にないほど」と語っていた本作。毛利が描いた悪の華が、役者の肉体を通じ乱れ咲く様は、エンターテインメントの極み!といった感じだ。登場人物は22人と多いが、すべての悪漢の中に煮えたぎるような熱を感じる。
中でも、マクベス役を演じる鈴木が放つ、一瞬で劇場の空気を変えてしまうような存在感が強烈だ。『マクベス』の物語をまといながら『ピカレスク◆セブン』のマクベスとして、入り乱れる野心の中で一際輝く。悪として突き進みながらも苦悩し、悶え苦しむ姿さえも魅力的で、目が離せなくなる。
対するイエミツ役の宮崎は、ちょっとおバカで、世を治める立場となるには青い自分を隠さない。未熟な部分を飲み込んで、理想を叫び、揺るがない信念を貫く。その姿は、芝居からにじみ出る宮崎自身のイメージともどこか重なって見えた。丁寧に作り込んでいながらも、どこまでも自然体。今の宮崎が持つ魅力が、これでもかと詰め込まれているようだった。
また、本作で目を引くのが殺陣の多さ。井俣曰く「少年社中史上、一番殺陣アクションの多い舞台」となったそうだが、各人物の個性に合わせた殺陣は見応えたっぷり。中でも、剣だけでなくハイキックなど肉体をフルに使った佃井のアクションが非常にかっこいい。そして、少年社中と言えば・・・と代名詞の一つにしてもいいぐらい、いつも観るのが楽しみな衣裳。今回も、和洋交じる世界観を見事に融合させた前衛的な衣裳が揃っている。ぜひ、細部までご注目を。
このほかにも、井俣演じる魔女が、ヌルハチという清の始皇帝になったり、椎名がピーターパン、唐橋がフック船長だったり、山川がリチャードIII世だったり・・・と、少年社中と共に歩んできた人がはっとする楽しみや、東映とのコラボならではの設定や台詞などがふんだんに盛り込まれており、少年社中が歩んだ20年すべてへの感謝が垣間見えた気がした。
「きれいは汚い、汚いはきれい」魔女たちがマクベスに投げかけるこの言葉が、耳に残る。自分の善は、誰かの悪かもしれない。極悪人と呼ばれた者たちがぶつかり合い、たどり着くラストで、自分が何を感じるのか。ぜひ、劇場で確かめていただきたい。
少年社中20周年記念第一弾 少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』東京公演は、1月15日(月)までサンシャイン劇場にて上演。その後、大阪、愛知を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。
【東京公演】2018年1月6日(土)~1月15日(月) サンシャイン劇場
【大阪公演】2018年1月20日(土)・1月21日(日) サンケイホールブリーゼ
【愛知公演】2018年1月27日(土) 岡崎市民会館 あおいホール
なお、各会場日付限定で、スペシャルカーテンコールショーも行われる。テーマ曲とナレーションに合わせて、出演者たちが特別仕様のカーテンコールでは、本編で声の出演をしている神谷浩史の特別ナレーションが披露されるとのこと。
◆スペシャルカーテンコールショー対象回
【東京公演】
1月9日(火)15:00公演、1月10日(水)15:00公演/19:00公演、1月11日(木)19:00公演、1月12日(金)15:00公演/19:00公演
【大阪公演】
1月20日(土)17:00公演
【愛知公演】
1月27日(土)11:30公演
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)