2018年7月7日(土)に開幕する『新・幕末純情伝』FAKE NEWS。「新撰組の沖田総司が実は女だった」という着想から生まれたつかこうへいの代表作の一つが、十代目・沖田総司役に北原里英を迎え、この夏新たな歴史を刻む。
本作で、土方歳三役に抜擢されたのは、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』や『アラタ~ALATA~』への挑戦が印象的な小松準弥。つかこうへい作品で、新境地を切り開く小松に、話を聞いた。
――『新・幕末純情伝』FAKE NEWSまもなく開幕です。初めてのつかこうへい作品出演となりますね。
つかさんの作品は、4、5年前にある劇団さんがやっていた『新・幕末純情伝』と、『熱海殺人事件』の「NEW GENERATION」と「CROSS OVER 45」を観させていただいていて。いつか僕も、つかこうへいさんの作品に出てみたいという思いはありましたが、実現した時は本当にびっくりしました。
――小松さんたちの世代にとって、つか作品はどういうものですか?
携わらせていただく前は、伝説みたいな感覚でした。直接作品を観たことはなくても、つかこうへいさんのお名前は知っていますし、作品についても聞いたことがありましたし。実際に作品を目の当たりにして思ったのは、今と状況も雰囲気も違う時代に書かれたものなのに、“今”観てもおもしろい。これがつかさんの作品の力なんだ!って実感しました。
――今回のご出演には、『アラタ~ALATA~』に挑戦されたことが大きかったのではと思いましたが、その点はいかがでしょう?
そうですね、かなり大きかったです。『アラタ~ALATA~』はもともと、早乙女友貴さんがご出演されているのを、お客さんとして観に行ったんです。その時受けた衝撃から「僕もこういう殺陣をできるようになりたい!」という思いを抱きまして・・・。演出を手がけられていた岡村俊一さんに勉強させていただきたいとお願いしたんです。そうしたら、本当に出演させていただけることになって!でも、稽古期間が10日しかなかったんです。
――10日!かなり殺陣の手数が多い作品でしたが・・・。
殺陣は、1,000手以上ありました!自分でやりたいと言ったものの、本番が始まっている作品でしたし、日々プレッシャーと緊張が・・・(笑)。でも、(出演者の)皆さんが本番終わりに僕のために、稽古に付き合ってくださったんです。僕が出ることにならなくても、舞台は成立しているのに。背中を押してくださる方々の思いをバシバシ感じていたので、始まる前も後もスタジオを借りて“一人アラタ”の自主練をやったり。死に物狂いでがんばりました。
――その経験は、小松さんご自身にとっても大きいものになったのではないでしょうか。
いろんなことに挑戦していきたいという思いがあった中で、一つ成し遂げられたことは自信になりました。また、『アラタ~ALATA~』と同じ主催元の作品に出られることになったので、がんばってよかったなと・・・。もう一つ役をゲットできた!よっしゃ!みたいな(笑)。今回は、あの時以上の気持ちで臨みたいという気持ちです。
――『新・幕末純情伝』FAKE NEWSでは、土方歳三役を演じられます。出演決定時、配役は決まっていなかったんですよね?
はい。ちゃんと決まったのは、本読みの後でした。本読みの段階で「土方を読んでみて」とは言われたんですが、その時はまだ、どの役をやるのか伝えられてはいませんでした。
――配役が決まって、『新・幕末純情伝』の土方歳三を、小松さんはどう受け止められましたか?
『新・幕末純情伝』では、まず坂本龍馬のカリスマ性が際立っていますよね。一方で、土方には、人間の弱さやダメさが集約されているなと思いました。「本当はこう思ってるけど、行動に移せない」とか、「自分が一番かわいい」とか、見る方が「私もそう、分かるわ~」って共感してしまうような部分が多いんじゃないかと。
――『新・幕末純情伝』で描かれている土方像は、パブリックイメージの土方像とはかなり違いますよね。
僕も、土方歳三という名前にはかっこいいイメージを持っていたんですけど、『新・幕末純情伝』の土方を初めて観た時は、「おや、ダサいぞ?」って思いました(笑)。今、「ダサい」を演じるって、めちゃめちゃ難しいなと思ってて。でも、それが表現できた時、観ている方に放っておけないとか、愛おしさを感じてもらえたりするんじゃないかなって。史実を参考にする部分ももちろん残っているので、そこも踏まえつつ、僕が演じる『新・幕末純情伝』の土方として、泥くさく、しっかり崩れていけたらいいなと思います。
――「泥くさく」「崩れる」って、いい表現ですね。
稽古に入ってみて「この人、本当に素直じゃないな」と思うんですよ。思っていることを全然素直に言わない。ちょっと卑怯というか、曲がった性格だなと(笑)。まだ課題だらけなんですけど、一つ一つを丁寧に拾いながら、感情を作っていきたいです。
特に人間の汚い部分や弱さといった人間味を大切に、舞台上で見せることができたらいいなと思っています。演出の河毛(俊作)さんにも「卑屈な感じがもっと見えたらいい」と言われたので、自分としての課題であり、踏ん張りどころだなと。
――フレッシュで前向きな印象の小松さんですが、土方に通じる部分はありますか?
弱る時、いっぱいありますよ~。でも、その弱さの表現が、土方とは違う気がします。僕は、全部吐き出します。一人で大声を出したり、歌ったり、飲みに行ったりして、「よし、がんばろう!」とパッと切り替えるタイプ。土方は、結構引きずっていそうですが(笑)。
――主人公の沖田総司が、最初に恋をするのが土方ですが、主演の北原里英さんはどんな印象の方ですか?
本当にプロ意識が高い方だなと。初舞台だそうですが、稽古中も積極的に発言をされていますし、初めて挑戦する殺陣でも、必死にくらいついてる姿が印象的です。舞台で役を演じるのは初めてかもしれないですが、アイドルとして(NGT48の)キャプテンをされていたんですよね。そういう経験が活きているんだろうなって思う瞬間が節々あります。同じ新撰組を演じる仲間として支えつつ、僕も北原さんからたくさん学ばせていただきたいと思っています。
――今回の座組には、2年前の『新・幕末純情伝』(主演:松井玲奈)で土方役を演じられていた細貝圭さんもいらっしゃいますが、何かお話されましたか?
同じ役を演じたことがある方が座組にいらっしゃることで、緊張もしていたんですが、細貝さんが「前回は前回、今回のは今回。新しい土方を作っていけばいいよ」と言ってくださったんです。だから、変になぞるようなことはしなくていいかなって、肩の力が抜けました。2年前の公演をご覧になった方の中には、細貝さんが演じた土方像が、ある種正解として残っていると思うので、それを踏まえて今の自分が感じたものを、うまく織り込みながらやっていけたらと思ってます。
――近年つか作品に多数ご出演されている坂本龍馬役の味方良介さんには、何かアドバイスをもらったりしましたか?
僕はまだまだ役者経験が浅くて、台本の解釈の仕方とか迷うことがよくあるんです。それで味方さんにも稽古に入ったばかりの頃すぐ相談したんですが「今回の『新・幕末純情伝』は始まったばかりで、これから変わってくものだよ。僕らが作っていくものだから、最初は無理にいろんなこと考えすぎなくていい。感情が乗ってくれば、自然に分かってくると思うよ」と言ってくださいました。確かに、土方自身のことや総司に対する想いなど、稽古を重ねるにつれて、台本が最初とまったく違うものに見えてきて。
これはどういうことなんだ?と考えすぎて、混乱してダメになるんじゃなくて、焦らずじっくり丁寧に向き合うことで、何が大切なのかが見えてくるようになりました。
――熱量のある稽古場で、どんな『新・幕末純情伝』が生まれるのか、楽しみです。
味方さんとか、(久保田)創さんが引っ張ってくれていて、すごく濃い稽古場です。皆、声を出したりしてる時間が多いんですよ(笑)。座組として一つになっていく形がすでに見えているので、緊張や大変さより楽しさが勝っています。本番までにもっと深めていって、まだまだ新しいものも生まれ続ける気がして、ワクワクしますね。
――熱い夏になりそうですね。
そうですね!この夏、一番熱い舞台にしたいと思います。一人の女性を巡る人間模様を、ぜひ観に来てください。僕は、とにかく泥臭さMAXで!そこが愛おしいと思ってもらえるような土方を、後悔しないように演じたいと思います。「ダメな土方が私は好き」って思ってもらえるように(笑)。観てくださる皆さんの中で、一番になるつもりでやります!楽しみにしてください。
◆公演情報
つかこうへい生誕70年記念特別公演『新・幕末純情伝』FAKE NEWS
7月7日(土)~7月30日(月) 紀伊國屋ホール
【作】つかこうへい
【脚本】渡辺和徳
【演出】河毛俊作
【出演】北原里英、味方良介、小松準弥、田中涼星、増子敦貴、松村龍之介、細貝圭/久保田創、大石敦士、須藤公一、山田良明、榛葉恵太、岡元次郎、佐藤賢一
【公式HP】https://shin-bakumatsu2018.com/
(撮影/エンタステージ編集部)