2014年の韓国版初演以来、空前の大ヒットとなったグランドミュージカル『フランケンシュタイン』がいよいよ日本に初上陸!2017年1月より日生劇場にて幕を開ける。
“天才”ビクター・フランケンシュタインと“鬼才”アンリ・デュプレとが織りなすドラマティックな展開と、主要キャストが一人二役を演じる構成が話題の本作。エンタステージではキャスト5人からそれぞれ日本初演にかける思いや意気込みをじっくり聞いた。
第一弾として登場いただくのは、ビクター・フランケンシュタインと、見世物小屋の主人・ジャックの二役を演じる中川晃教。彼が見据える『フランケンシュタイン』の世界とは―。
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ドラマティックな世界で一人二役を演じ切る
――『フランケンシュタイン』今回の日本初演で、中川さんは“天才”ビクター・フランケンシュタインと、見世物小屋の主人・ジャックの二役を演じられます。
熱い作品ですよね。特にビクターに関しては、常に運命や神に対して殴りかかっていくようなところもあり、そこにドラマティックな音楽が乗っかって、とんでもなく重厚で濃密な世界になっていると思います。
ビクターは普通の人間が決して踏み込まない領域に自ら入り込んでいきます。それは死者を蘇らせる、ということなんですが、彼がそこに至るまで、どういう経緯や思いがあったのかを考えていくと、ビクターという人物像が明確に浮かび上がってくる気がします。
――「神」の存在をどう捉えるかも重要になってきそうですね。
現時点での解釈ですが、ビクターは「この戦争や人の死を引き起こしたのは神だ」と考えていて、だからこそ、キリスト教的には神への冒涜とも言える人体の再生術・・・死者を蘇らせるという行為に踏み込んだようにも思うんです・・・彼なりの神への挑戦として。
――ビクターは演じ手によって、さまざまな方向性で構築できる役だと思いました。
確かにそうですよね。この作品のビクターは、ある意味、アンリに“恋”をしているのではないかな、と僕は思っています。もちろんそれは恋愛的な意味とは少し違って、ビクターはアンリの中に自分にはない才能や、自らの実験を導いてくれる光を感じたということなのですが。
ビクターにとって、アンリは運命の分岐点となる人物なんです。だからこそ、彼に対して強い思いも抱くし、何をしてでも助けたいと思って、結果「怪物」を生み出してしまうんです。
――もう一役、見世物小屋の主人・ジャックについてはいかがでしょう。
まず、ビジュアルにびっくりですよね(笑)。ちょっと映画の『アリス・イン・ワンダーランド』でジョニー・デップが演じたマッドハッターみたいでしょ(笑)。演劇の構造としても、ビクター役の俳優がアンリの変容した姿である「怪物」を金づるにする役柄を演じるのはかなり面白いと思います。ビクターがハジける部分がない分、ジャックでいろいろやれそうですし・・・本当、ジャックって気持ちが良いくらいのクソ野郎なんですよ(笑)。
また、ビクターの姉で、彼の庇護者でもあるエレン役の女優さんが、見世物小屋では、ジャックを尻に敷く金の亡者・エヴァを演じるっていうのもナイスアイディアだな、と思いました。今回、エレンとエヴァを演じるめぐさん(濱田めぐみ)とも、2つの関係性を一緒に作っていくのが楽しみです。
――音楽も、かなりドラマティカルなナンバーが山盛りです!
ですよね(笑)。今、ちょうど歌稽古が始まったところで、自分が歌う曲と向き合っているのですが、特にビクターのナンバーはかなりキーも低めなんです。歌の部分でも、彼の天才の部分というか・・・神々しさまで表現できればと思っていますので、これからもっと深めていきます。そして実は、ビクターとジャックの歌って、キー自体はさほど変わらない構成なんですよ。
――その分、曲調が違うんですね。
そう!ビクターが変拍子多めの歌い上げ系だとすれば、ジャックのナンバーはスイングですね。その部分の歌い分けにも注目していただきたいです。
魅力的な共演者とともに、作品を創り上げていく
――今回、Wキャストとして同役を演じる柿澤勇人さんとはどういう関係になりそうでしょう?
まだ本格的な稽古に入っていないので何とも言えませんが、俳優だったら誰しも“自分だけの役の色”を魅せたいと思うんです。それを最初から強く出してくる人もいますし、稽古が進むにつれ、徐々に作り上げるタイプの方もいます。彼がどういうタイプかは、ご一緒するのが初めてなのでまだ分かりませんが、とても繊細な俳優さんだと感じています。ビクターは非常に難しい役ですので、僕で役に立てるなら時に彼の背中をポンと押したいですし、また僕もかっきーに触発されていく部分もあると思っています。
――柿澤さんにとって、中川さんはずっと憧れの人だったというお話が製作発表の場でありました。
でしたね(笑)。それはとてもありがたいことですが、板・・・舞台の上に乗ったら、お互いひとりの俳優ですから・・・その点はあまり関係ないと僕は思っています。公演期間中に2回だけ、スペシャルバージョンとして2人が舞台上で共演できる日がありますので、そこは素直に楽しみです。
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――アンリ役のお二人についてはいかがでしょう。
加藤和樹君とは今回が初めましてで、コニタン(小西遼生)とは共演経験があります。二人とも全く違うタイプのアンリ像を創ってくるはずです。そこにどうビクターとして対峙していくのか・・・今からテンションが上がってますよ。お二人とも、周囲の方たちに愛されているのが近くで見ていても良く分かりますので、カンパニーとしても良い雰囲気になるんじゃないかな。
――エレン役の濱田めぐみさんとは『マーダー・バラッド』に続いて、二作目の共演です。“感覚”トークが炸裂しそうですね。
その通り!めぐさんとは『マーダー~』の現場で『フランケンシュタイン』の話をすることもあったのですが、いつも「あっきーみたいな弟が欲しい!」と言ってくださって(笑)・・・『マーダー~』では姉弟とは違う関係性の役柄だったので、若干、切なかったですが(笑)。普段はとってもキュートで可愛いのに、舞台に立つとめちゃめちゃカッコ良いんです。またがっつりご一緒できて幸せです。
舞台の世界で輝き合うふたりの“友”
――本作のテーマのひとつが「友」・・・友情だと思うのですが、中川さんにとって熱い思いを持つ友人と言えばどなたでしょう?
井上芳雄君・・・よっしーはその一人です。常に会って一緒にいるという関係ではないですが、ミュージカルでのデビュー時期もほぼ同じですし、『モーツァルト!』ではWキャストとしてヴォルフガング役を一緒に演じ、一緒に戦った間柄です。互いが歩む道を見つめながら「自分も頑張ろう」と常に思わせてくれる同じ業界の友人ですね。
――今年も『DNA-SHARAKU』から始まり、ご自身のコンサートや春の『グランドホテル』、夏の『ジャージー・ボーイズ』そして秋の『マーダー・バラッド』等、大活躍の一年でした。
ありがとうございます!今年は特にお客さま・・・そしてファンの皆さんに支えられた年になったと思います。僕の俳優としてのポリシーのひとつが“常に新しい中川晃教を見せていきたい”ということなのですが、その点でも今年はいろいろなキャラクターを演じることが叶いました。どんな役を演じていても、何があっても応援してくれるファンの皆さんの存在・・・改めてありがたいな、と思います。
『ジャージー・ボーイズ』では、シングルキャストとして、フランキー・ヴァリ役をやらせていただきました。正直、お話をいただいた時は“絶対に倒れることはできない”“声が完璧な状態で持つのだろうか”というプレッシャーもあったのですが、多くの方に支えていただき、無事に務めることができたんです。この作品では、自分がこれまで歩んできた道で集めた“ピース”が、ぴたっとすべてハマったという実感もありましたね。
――盟友・藤岡正明さんとは『DNA-SHARAKU』、『グランドホテル』、『ジャージー・ボーイズ』と三作品でのご共演でしたね。
彼がいてくれたから、僕は『ジャージー・ボーイズ』でフランキー・ヴァリとして舞台に立てました。音楽的にも完璧でしたし、彼にしかできないトミー像を創り上げ、僕の横にいてくれたと思っています。元々、とても仲が良い藤岡氏と、舞台上であそこまで濃密にやれたことは忘れられない経験になりました。
――中川さん、藤岡さんから、互いに対するコメントをうかがうたびに強い絆を感じます。そして2017年はミュージカル『フランケンシュタイン』からのスタートです!
日本初演の『フランケンシュタイン』がどんな作品となるのか、ぜひ劇場で目撃していただければと思います!また4月にはシアタークリエで『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』、7月と8月に帝劇『ビューティフル』等のミュージカル出演もありますし、引き続き、コンサート、ライブ等の音楽活動にも力を入れていくつもりです。
2017年もお客さまやファンの皆さんとエネルギーのやり取りをしながら、音楽とミュージカルとを繋ぐ活動が出来ればと思っています。中川晃教にしか創れない世界をお見せできるよう前進していきますので、その姿を見守っていただければ幸いです!
これまで音楽的才能について語られることも多かった中川晃教が、その演技の実力をはっきり見せつけた一年だったように思う。特に『グランドホテル』で自らの死を意識した会計士・オットーを演じた直後に『ジャージー・ボーイズ』で生命力に溢れる天才シンガー、フランキー・ヴァリを見事な歌声とともに演じ切る姿には強く、強く胸を打たれた。
“天才”というキーワードで思い浮かぶのは、彼の代表作のひとつ『モーツァルト!』のヴォルフガング役だが、今回演じる“天才”ビクター・フランケンシュタインも、中川にとって新たなキャラクターへの挑戦となるだろう。他者を信じず生きてきた”天才“が、魂の響き合う相手に出会い、そこから悲劇の渦に巻き込まれていく・・・。
2017年の幕開けを“努力する天才”中川晃教がどう飾ってくれるのか・・・開幕を楽しみに待ちたい。
◆ミュージカル『フランケンシュタイン』
2017年1月8日(日)~1月29日(日)東京・日生劇場
(撮影/高橋将志)