韓国発ミュージカル『シャーロック ホームズ』シリーズのシーズン2『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』がいよいよ2015年4月26日(日)より東京芸術劇場プレイハウスにて開幕!名探偵ホームズと、実在した猟奇殺人事件の犯人「切り裂きジャック」との対決が描かれていく今回のストーリー。物語のキーパーソンとなる全盲の聖女マリアを演じる秋元才加に自身の役どころや、稽古場での様子、見どころを伺った。
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――出演が決まった時の感想を教えてください。
2年半ぶりのミュージカルで、AKB48を卒業してから最近は歌う機会がぐっと減ってしまっていたので素直に嬉しかったです。舞台に立てる喜びと、歌を歌うことの出来る喜びもあったし、チャンスをいただけた!と思いました。
――台本を読んだ時の感想はいかがでしたか?
私自身がミステリーというジャンルになじみがなかったので、特に先入観なく台本を読めました。確かに、事件が起こってそれを解決していく話なのですが、登場人物一人一人のキャラクターの感情が深く描かれていて共感できるところがあったんですね。DVDで見たシーズン1もそうでしたね。一見すると事件を起こした人たちは人として歪んでいるのかもしれないけれど、そのなかに愛があったり、それぞれのドラマが透けて見えたんです。犯人の気持ちもなんとなく理解できました。なんだか切ない気持ちになりましたね。台本を読み終わった時は涙が止まりませんでした。
――秋元さんが演じられる全盲の聖女・マリアは、連続殺人事件の犯人を追うなかで登場する、今回のストーリーでは重要な役回りですよね。
今回、聖母マリアのような、目が見えない、母性にあふれていて、まっさらな女性を演じるんだと言うと、「え、それ才加がやるの?」ってみんなに驚かれるんです(笑)確かに難しい役で、すごい挑戦だと思っています。稽古前に、演出の板垣(恭一)さんに「難しい役だよ」と言われていたんですけど、稽古を始めてみて確かにそうだなって。稽古が始まる前に思い描いていたマリア像が、稽古を進めていくうちにどんどん変わっています。
――どういう部分が稽古前から変わりました?
稽古が始まるまでは、すごくか弱くて、守ってしまいたくなる女性というイメージが強くて、「か弱い女性を演じるには…」って考えていたんです。でも、実際に稽古を始めてみると、マリアはいつも十字架を持っているプロテスタントの熱心な信者で、残忍な事件に巻き込まれても「主は私を救ってくれる」「主はあなたのことを見てくれているのよ」って言うんですよね。こんなにも神を信じて、純粋にまっすぐなことを言える彼女は実は強い人間なんじゃないかなって思えたんです。人に対して、こんなにも疑わずにまっすぐに立ち向かえる。何にも染まらずにいられる存在って、実はこの物語のなかの誰よりも強い人なんじゃないかなって。みんな葛藤を抱えて、気持ちが揺らぎそうになるなかで、マリアが一筋の光のようにどんな時でもひとり微笑んでいる。「神様は私のことを見てくれているはず」って。強いですよね。
――なるほど。稽古場では、板垣さんからは具体的な役柄についての指示はあるんですか?
板垣さんは、「最終的には舞台は役者のものだから、僕はあまり言いたくないんですよね」とおっしゃっていて。ヒントはくださるんですけど、肉付けするのは個々に託す部分も多い。今までの活動では、振り付けも与えられたものをやることが多かったですし、自発的に行動することって少なかったんですよね。だから今回の稽古場のみんなで相談しながら作り上げている感じはすごく楽しいです。
――シャーロック・ホームズ役の橋本さとしさん、ワトソン役の一路真輝さんほか、稽古場での共演者のみなさんはいかがですか?
作品が作品だし、張りつめた空気の稽古場を想像していたんです。ところが、すごくわいわいしている稽古場ですね。ムードメーカーというか、コング桑田さんと竹下宏太郎さんがずっとしゃべっています(笑)橋本さんは、実際にお会いするまではもっとダンディな、キリっとした方だと思っていたんです。でもけっこう“ほんわか系”“癒し系”なんだなって(笑)。すごく優しくて、柔らかい方です。一路さんは…緊張しちゃうんですよ。AKB48にいたこともあって、私、年上の女性には特に礼儀正しく挨拶してしまうんですよ。それが宝塚歌劇団にいた一路さんにとってはまるで宝塚の後輩といる感覚だそうです(笑)。いつも背中をさすってくださって、「もっと柔らかくていいのよ~背中が固いと声が出なくなっちゃうから」って声をかけてくださったり、スカートのさばき方を教えてくださったり・・・。マリアは全盲の役なんですが、一路さんも以前舞台で演じたことがあるそうで、ダイアログ・イン・ザ・ダーク(まったく光のない暗黒を体験出来る場所)にいってみたらいいよって。いつも笑顔で、チャーミングな方です。ほんと素敵な皆様に囲まれて稽古が出来るのは嬉しいです。
――マリアに寄り添う青年エドガーを演じるのは、良知真次さんと小西遼生さんのWキャストですね。お二人の印象はいかがですか?
同じ役ですけど、全然違うんですよね。良知さんのほうが、感情がストレート。抑えているんですけど、情熱的な感じが伝わってくるお芝居をされています。小西さんは、繊細で複雑な感情をぶつけてくる感じがします。二人とは稽古場でずっと話をしています。話しているなかで「そうだったんだ」って気付くこともよくあって。二人いるので、私が思っているマリア像だけじゃなくて、二人が考えるマリア像が参考になったりするんですよ。橋本さんにセリフの相談をしたときにもマリアについての新たな発見をしたり。共演者のみなさんが私が思ってもいなかった印象を教えてくださるんです。それも活かしたいですね。舞台って、こうやってみんなでコミュニケーションを取りながら作っていくんだって感じています。
――この作品は、歌が難しいとのことですが、実際に歌ってみていかがですか?
難しいですね。「クリアした」と思っても、翌日になると本当に出来ていたのか不安になってしまうくらい。歌についても本当に挑戦というか、自分のなかで、「もうちょっとできるようになれば変わるのにな」って思っている時に、今回のようなチャンスをいただいたので、きちんと向き合って頑張りたいと思います。スキルアップしたいですね。何事も、地道にやっていかないといけないんだなって最近すごく思うんです。歌はまさにそうで、ちょっとずつ練習していくだけでも歌いやすくなるし、体が変わってくるのも如実にわかる。そういった変化も楽しみなんです。
――本作でのご自身の見どころを挙げるとすれば…?
マリアはポイントポイントで重要な役。私も舞台を観に行って思うんですけど、たとえば、少ししか出なくても印象に残る役ってありますよね?自分が出た時にいかに輝けるか。みんなが険しい顔で事件の真相に迫っていくなかで、ひとり微笑みを絶やさないマリア。印象に残る役の一人として、みなさんにご覧いただけたらと思います。
――最後に、作品に向けての意気込みをお願いします。
今回のカンパニーでは、19名の全キャストのなかで若輩者なので、先輩たちの胸を借りつつ勉強していきたいと思っています。物語は、一人一人のキャラクターが際立っているし、一緒に推理している気分も味わえると思います。音楽もドラマティックだし、それがスピーディな展開をさらにあおってる感じで、あっという間に観終わってしまう感じかもしれません。街の場面とか、ミサの場面のちょっとミステリアスな感じも見どころです。私は台本を読んだ時に、涙とともに「愛ってなんだろう?」って思いました。みなさんは観終わった後にどんな気持ちになるのでしょうか!?ご期待ください。
◇秋元才加(あきもと・さやか)プロフィール◇
1988年7月26日生まれ、千葉県出身。2006年、二期生としてAKB48に加入。チームKのキャプテンとして活躍。2003年に同グループを卒業した後は女優としての活動を中心に、現在は『マネーの羅針盤』(テレビ東京系)のメインMCなど6本のレギュラー番組を持ち、多方面でマルチに活躍中。主な舞台出演作に、『国民の映画』『ロックオペラ モーツァルト』『ローマの休日』など。主演映画『媚空~ヤミギリノチ~』が今秋公開予定。