舞台『みえない雲』で初主演!上白石萌音にインタビュー

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瀬戸山美咲が主宰を務めるミナモザが、チェルノブイリ原発事故の直後に執筆された小説『みえない雲』を27年前のドイツと現在の日本を行き来する形で舞台化する。主演を務めるのは、今年公開された映画『舞妓はレディ』の主演で一躍脚光を浴びた新鋭・上白石萌音だ。
初ストレートプレイ挑戦、しかも現代日本の状況にもどこかリンクする重厚な内容、と初主演ながらもハードルは高い。16歳の彼女が、この作品にかける想いとは?

上白石萌音

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――最初にこの作品に出演する、という話を聞いた時はいかがでしたか?

私!?って思いました。それでお話を頂いた時に内容を教えて頂いて、原作の本を読んだんです。そうしたら『ヤンナ・ベルタってなんてすごい女の子だろう』と、すごく憧れる気持ちになったんです。だから楽しみだと思う反面、こんなに強い女の子を演じきれるのか、という不安もありました。

――それだけ、今回演じる『みえない雲』の主人公、ヤンナ・ベルタに憧れたんですね。

こんな人になりたい!と思いました。イヤなことはイヤって言えるし、『こうしたい』という意思がちゃんとある。私は結構優柔不断で、人の意見を聞きたいタイプなんですけど、ちゃんと運命を決めていくところがすごくカッコいい! と思って…もともと行動力ある人とか、自分の意見を持つ人に憧れていたんです。だから『あ、見つけた』と。『私はこの子になりたいんだ!』と思いました。でも、だからこそ不安もあります。

――今回舞台出演は2回目となりますが、舞台に関する印象はどうでしたか?

すごく楽しい、というイメージなんです。映像だと直接の反応はどうしても得られないけれど、舞台だとそれがある。ふだんお芝居を見るときも、劇場の一体感やみんなが一緒になっている世界観や…そういう空気感にすごく憧れていて。実際に自分が『王様と私』という舞台に出させていただいた時も、本当に楽しかったんです。もう一度あの空気を味わいたい、と思っていたので、お話を頂いた時はすごく嬉しかったです。もう一度舞台に立てるんだ!って。

――今回は初主演で初ストレートプレイということもありますし、いろいろと挑戦となる部分も大きいですよね。上白石さんの中で課題はありますか?

この作品は“リアル”なお話だと思うんです。非現実的な部分もあるんですけど、実際にそういう事態が起こった時のリアルさはあると思うんです。何があっても生きようとする、根っこにある生命力とか…“生きる”ということを伝えたいと思うので、観ている方に『私も一生懸命生きよう』とか『生きてるって凄いことなんだ』というのを感じていただきたいなと。私も舞台の上で一生懸命生きようとおもいます。

あと初舞台のときは、あまり台詞が多くない役だったのと、映画(『舞妓はレディ』)は方言を喋る役で。単純に今回は『台詞が多い』んです。それが私のハードルで(笑)。なので、しっかり標準語の台詞を喋れるように頑張ります!(笑)

――ストレートプレイは、実際稽古に入られてどうですか。

言葉でしっかり伝える、ということが大事なんだな、と実感しています。一つもムダな台詞がないんです。全部が何かの動機やその人の生き方を表していて…一つ一つの台詞に命があるので、それをちゃんと届けたいなと。

――しかも今回は題材もかなりシリアスなテーマですが、その点に関するプレッシャーなどはないのでしょうか?

それはあります、すごく。中途半端な想いや理解でこの作品に挑んではダメだな、と思いますし、お話をいただいてから私もいろいろなものを観たりして、自分が今まで考えていなかったことに気付かされました。また、稽古中にもみんなで話し合う時間も多くて。原作の本を読んでどう思ったか、現状をどう思っているか…そうやってみんなで考えたことを共有するんですけど、いろいろな大人の方の意見を聞いていると、私も考えなきゃ、ヤンナ・ベルタになるならまだ足りないな、って思います。理解してないものは届かないと思うんです。だから最後の最後まで向きあいたいですね。

上白石萌音

――瀬戸山美咲さんの演出はいかがですか?

美咲さんだけが意見を言うのではなく、みんなで創りあげています。まっさらな所から場面を作っていく…その光景にいつもすごいなと思うんです。すごく自由に意見も言わせていただけるし、違うところは“違う”と言っていただける。だからとても安心感があります。私が今まで経験してきた現場とはまた全然違うんです。稽古が終わってみたら想像もしなかったような場面になっていたり、毎日探検しているような感じです。すごく楽しいです。

――上白石さん自身も意見を出したりするのでしょうか?

たまに意見を言うようになりました(笑)。これまでそういう経験がなかったので、一歩前進できたようで嬉しいです!『舞妓はレディ』の時、周防(正行)監督にいつも言われていた言葉があって。『自分で考えなさい』と。『台本を読んで、自分がこうだと思ったことを極限まで考えて、それで出た答えを信じなさい』という言葉なんですけど、それって今回にもすごく通じることだと思うんです。その言葉を信じて今もやっていますし、これからも大事なことになると思います。そして今回の作品で、自分で考えて意見を言う、ということを教えていただいて…“自分のこと”を考えていく機会が増えてるんですね。それってヤンナ・ベルタにも通じるのかな、と思ったり。

――まもなく本番ですが、初日への期待は?

本番が全然想像つかないんですよ!…どうなるんでしょうね?(笑)お客様との距離感も大切にしながら、みなさんもドイツに引き込みたいと思います。

――最後になりますが、上白石さん自身が今後目指したい俳優像とは?

後味がある、余韻が残るようなお芝居ができる俳優になりたいなと思います。何日たっても忘れられないシーンや台詞がある…『なんでだかわからないけど、覚えてるんだよね』というお芝居ができる俳優になりたいです。漠然としてますけど(笑)これも少しずつこれから明確になるんだろうな、と思います。

上白石萌音

◆上白石萌音 プロフィール
2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞を受賞し、デビュー。
ドラマ『江~ 姫たちの戦国』、映画『おおかみこどもの雨と雪』『だいじょうぶ3組』、ミュージカル『王様と私』などに出演。
2014年9月に公開された映画『舞妓はレディ』では、800名の応募者からオーディションを勝ち抜き、 主役に大抜擢。
その実力に注目が集まる。本作品が初主演舞台となる。

◆『みえない雲』あらすじ
1989年の日本。小学6年生の「私」はある日、学校の図書館で見つけた『みえない雲』と題された本に強く惹きつけられる。
1ページ目に書いてあった言葉は、「何も知らなかったとはもう言えない」。
チェルノブイリ原発事故という「現実」から生み出された、架空の原発事故を描いたドイツの小説だった。
小説の主人公、ヤンナ・ベルタは、西ドイツの町シュリッツで、原子力発電所の事故に遭遇する。
警察や住民の錯綜する情報の中、ヤンナ・ベルタも「毒のある雲が来る!」と大騒ぎする弟ウリを連れて伯母の家へ向かう。
しかし、その途中、ウリは車にはねられ死んでしまう――。
やがて、雨が降り始めた――。
現在。大人になった「私」の前に、当時読んでいた架空の小説が、福島原発事故という「現実」となって横たわっていた。
自問自答をしながら「私」は小説の舞台、ドイツを目指す。
家族を失い、住む場所を失い、さまようヤンナ・ベルタ。
その小説を手に、ドイツで現実と向き合う「私」。
何も知らなかったとはもう言えない。
その言葉の持つ意味を探す旅が始まる。

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『みえない雲』

出演:上白石萌音、陽月華、塩顕治、中田顕史郎、大原研二(DULL-COLORED POP)、浅倉洋介、橘花梨、石田迪子、つついきえ、佐藤真子、間瀬英正/大森美紀子(演劇集団キャラメルボックス)

原作:グードルン・パウゼヴァング
訳:高田ゆみ子(小学館文庫)
上演台本・演出:瀬戸山美咲
メインテーマ作曲:伊澤一葉
東京・シアタートラムにて、12月10日(水)~16日(火)まで上演

『みえない雲』公式ホームページ

Photo:有岡宏

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この記事を書いた人

演劇雑誌編集部を経て、現在は演劇・芸能・サブカルチャーなど幅広い分野で活動中。演劇マンガの監修を手がけたことも。

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