12月12日(金)の埼玉・志木市民会館でのプレビュー公演を皮切りに、新潟・小出郷文化会館、栃木県総合文化センター、赤坂レッドシアターにて第一回お茶の間サミット『世襲戦隊カゾクマン』が上演される。
愛と平和を守るため、今日もヒーローたちは悪と戦っていた。彼らの名は「世襲戦隊カゾクマン」。その名の通り、代々世襲制でヒーローとして働く家族だ。しかし、それぞれは今のヒーロー生活に悩みを抱えていた。そして、ある日カゾクマンについての家族会議が開かれ、今後の体制について話し合われることに。しかし常々世襲制度に疑問を感じ「普通の生活がしたい」と密かに願っていた子供たちの心はバラバラで…。
バラバラの家族、そしてカゾクマン。そんな時、地球防衛軍・司令官からの連絡が入る。
地球征服を目論む悪の女王が、日本へと迫っていた!!
本作は劇団ONEOR8全公演の脚本・演出を手掛ける田村孝裕が書き下ろした新作で、プロデューサーはプリエールの有本佳子。お茶の間で繰り広げられる家族の話、なかでも繊細な心情を描くことを得意とする田村だが、その世界観の中に“ゴレンジャー”が家族として存在していたら…ヒーローは本当は先代からの世襲制度に従って、仕方なくヒーローとして働いているのだとしたら…本作は、そんな構想から生まれた作品である。
そんな異色の戦隊ヒーロー作品に出演する山口良一、熊谷真実、芋洗坂係長、曽世海司の4人に、この作品の見所を聞いた。
――まずは、本作で演じられる役と出演されるきっかけや経緯を教えて下さい。
山口:父レッド役の山口です。きっかけは、プロデューサーの有本さんにナンパされた感じです(笑)。曽世君と一緒に落語の会で、有本さんとはお目にかかっていて、出ませんかと誘いを受けていました。プリエール製作の舞台は今までも観ていたので、変なことはないだろうと思って受けました(笑)
熊谷:母ピンク役の熊谷です。私も有本さんからの熱烈なオファーを頂き、脚本・演出の田村さんのファンであったということもありまして、ぜひにと引き受けさせて頂きました。
芋洗坂:婿グリーン役の芋洗坂係長です。私はですね、HIDEBOHさんと共演したミュージカル『タップ・ジゴロ』で有本さんとお会いしまして、有本さんが私の方をチラチラ見て笑っていたので、私に気があるのかなと勘違いしていたところ、このオファーがありまして引き受けました(笑)
曽世:兄ブルーを演じます曽世です。このお話は数年前に、たまたま札幌の居酒屋で有本さんと飲む機会があったのですが、そこで有本さんがヒーローものを面白い芝居にしたいという話があって、ヒーローが年を取ったらヒーローを続けていけるのかとかで、盛り上がったんですよ。しばらくして、有本さんと再会した時に「あの企画が進んでいる」と説明を受けたんですが、最初はどんな話か憶えてなくて(笑) それで、有本さんから「最初に話したきっかけもあるので、曽世君を出してあげる(笑)」ってお誘いを受けて、ぜひ、よろしくお願いしますと。
――ということは、みなさんオーディションではなく、有本さんからの直接のオファーがあったのですね。
山口:そうなんですよ。それぞれが有本さんに一本釣りされたんです(笑)
熊谷:私は、有本さんが飲み屋で見かけた私がイキイキしているということで、ピンク役にはこの人だって(笑)
曽世:どこでもイキイキされてるんですね。
山口:真実ちゃんがイキイキしてない場面は見たことないけどね(笑)
熊谷:家では本当にイキイキしてないんですよ。
山口、芋洗坂、曽世:絶対ウソです!!
熊谷:ごめんなさい。ウソでした(笑)
――本作はプリエール製作、脚本・演出が劇団ONEOR8の田村さんですが、みなさんはプリエールや田村さんの作品に今まで出演されたことはあるのでしょうか?
山口:私は田村君が演出された作品だと、田中麗奈さんが主演の『思い出トランプ』や、ラサール石井さんと小倉久寛さんと共演した『なかよし」』『悩み多き者よ』というお芝居でご一緒させてもらったことがありますね。ONEOR8のお芝居に出演はしていないのですが、観たことはありますよ。
――今回の『世襲戦隊カゾクマン』という作品は、今までの田村さんとの作風とはかなり違うように思うのですが、印象はどうでしょうか?
山口:舞台セットはいつもの田村君の作風なんだけど。題材としては、いつもの田村君とは確かに違うね。細かい所は田村君風なんだけど、随分と田村君じゃない所もあるかな。
熊谷:私は田村さんらしいなぁという印象だった。
曽世:田村さんご本人は今までこういう芝居を作ってこなかったと何度もおっしゃられてました。その点ではチャレンジングな作品ということなんでしょうね。だけど、稽古が進むにつれて田村演出というか田村ワールドに引き込まれてる印象はあります。
山口:確かに演出の仕方は、いつもの田村さんだね。
熊谷:田村さんの昨日のダメ出しは辛かったねえ。家でヤケ食いしちゃいました(笑)。
曽世:セットのちゃぶ台を囲んで、がっつり言われましたね。
山口:良かった、その場に居なくて(笑)
熊谷:これからの私の役者人生に大きく影響するダメ出しでした。
山口:ええ、そんなに!?
芋洗坂:本当におっしゃる通りでございますという感じでしたよね。
芋洗坂係長といえば先日ビッグネームのオーディションに挑戦!その模様を一部ご紹介!
――それはどのような指摘だったのでしょうか?
熊谷:稽古が始まった時は台本に結末がまだ書かれてなかったんですよ。そうなると、演じる側も最後はどうなるか知らない新鮮な気持ちで演じられますよね。そして、台本が完成して結末を知ってしまった時に、「着地点が分かる芝居をしないで下さい」って言われたんですよ。それまでは、私達も演じる対象と同じ心情で、先の分からない気持ちで演じることが出来て、私達も田村さんも新鮮な気持ちでいたんですね。そこで、結末を知ってしまってからの演技について田村さんから「着地点に向かっての芝居になっている。それはステレオタイプのお芝居です。役者さんの力や人気で魅せることはできるけど、僕がやりたいのは、そういうお芝居じゃない」とダメ出しを受けてしまいました。
山口:なるほどねえ。でも役者って結末を知っちゃうと、そうなっちゃうよね。
曽世:それは瞬間、瞬間を大切にして、何回ステージに立とうが初めて聞いたセリフとして慣れずに毎回新鮮な演技をして欲しいということなんでしょうね。
山口:基本中の基本だ。
曽世:田村さんの台本はセリフが喋りやすくてテンポが良いので、ついついテンポが勝手にあがっちゃう。
熊谷:そうなんですよ。それで、今日はテンポがあって良い芝居が出来たと思ってたら、ガツンと言われちゃったんですよね。
山口:田村ワールドって心の動きの微妙な表現に特徴があって、本作は笑いの部分でいうと新しい試みがあるけど、本質的には同じなんだね。
熊谷:それで、「僕のお芝居は、みなさんにかかっている。みなさんが背負ってきた人生がちゃんと見えるお芝居をしてください」と田村さんから言われてしまって、気を引き締めようと。
山口:大した人生を送ってきてないからなあ(笑)ただ、ちょうど良い時期でのダメ出しだったんじゃないの?
曽世:そうですね。もしかしたら、田村さんはいつ指摘しようかなと思っていたんじゃないかなあと。
――そんな田村さんの作品として、今回は非常に珍しい題材ですね。それに、戦隊ヒーローものですけど、ヒーローという非日常の日常を主題とした一風変わったストーリーとなっています。一方で、チラシには巨大ロボットが出ていたりしてますけど、演出として戦隊ヒーローの要素もあるんでしょうか?
山口:それは観てのお楽しみということで。一応、ヒーローものということで何かが出るかもしれませんねえ。
曽世:公演のチラシを見た方が、田村さんの作品とチラシのイメージを頭の中でどう結び付けるのか、逆に興味がありますね。チラシに描かれている戦隊ヒーローがそのまま出てくるのか、ただのイメージでしかないのかと思うのか。舞台を観終わった後にこのチラシをまた見てもらいたいです。
――それでも、作品の根幹は家族ものなんですね。その家族ものと戦隊ヒーローものにおけるギャップが非常に面白いと思います。
山口:そうです。やっぱり家族の話なんです。そこに、自営業の方が抱えるような悩みも含まれているんですよ。
熊谷:色々な人に観てもらえる作品ですね。戦隊ヒーローものとして今回は小さい子にも楽しめる作品になっています。
山口:ヒーローものであり、家族ものであるんですけど、それぞれの人が抱えた悩みや人間のつながりが丁寧に描かれていると思いますよ。
――なるほど、幅広い世代が楽しめる作品になっているようですね。
曽世:色々な職種の方や、どんな人も誰かしら家族を持っていますが、親や子の立場や絆が今回の作品で描かれているカゾクマンの家族構成で全て描かれていて、多角的に観ていただけるお芝居になっています。
――それと、チラシを見ていて、ずっと気になっていたのですが本作のタイトルに「第一回お茶の間サミット」とありますが、これは何でしょうか? さらにキャッチコピーとして「第一話 レッドの腰痛が治らない」とエピソードタイトルまであるんですね。
山口:良い所に気づいてくれました。これはシリーズものとして第二回公演を行いたいというプロデューサーの強い意志ですね。第二回どころか第三回、もっと先まで続けていきたいという。エピソードタイトルも台本は出来てない時から、そのキャッチコピーは出来てたんですよ(笑)
曽世:これはもうプロデューサーと田村さんのシリーズ化を絶対するぞという決意表明だと受け取ってます(笑)
曽世海司さんは劇団スタジオライフの一員。演技もさることながらプロ顔負けのマイクパフォーマンスに定評が!動画でその模様をぜひお楽しみください。
――そうすると、みなさんもレギュラーとして出演し続けるということですね。
曽世:もしレギュラーになれるのであれば、もちろん演じ続けたいですよね。
熊谷:ピンク引退か?という危機も危ぶまれてたりしますから、どうなることか。。
芋洗坂:“世襲戦隊”というだけあって、続編では世襲されて出演者が変わってるかもしれませんよ(笑)
曽世:夢は僕ら5人でデパートの屋上に営業に行って、最終的には後楽園でヒーローショウです(笑)
――それは今回のお芝居ではアクションもあるということでしょうか?
全員:それは戦隊ものですから、全くないとは言い切れないですねえ…
曽世:何これ? なんで全員で濁すような回答になってるの? わざとらしい(笑)
山口:そこは戦隊ものですから。それに悪者も出てきますからね。そこはどんな演出になっているかは観てのお楽しみで。
――そうなると、本作はシリーズものを狙うにあたって重要な作品ということで、色々とプレッシャーなどがあったりしそうですね。
曽世:それはもうありますよ。プロデューサーから第一回目が本当に大事だからねって、スゴいプレッシャーをかけられてるんで。
山口:シリーズものってさ、5人全員が揃わなくて誰か1人が新しい人に替わったりするから、気をつけないといけないね(笑)
――今までのお話を踏まえて本作の見所をお願いします。
熊谷:正直、私はお客さんになって観たいぐらいです。台本を頂いた時点で、本当にお客さんになりたいって思うぐらい、それぐらい面白いです!
曽世:みんながそうなんですけど、自分の出番じゃない時に前に回って他の人の芝居を観たくなるぐらいですよね。
熊谷:それで笑いすぎて、自分の出番を忘れちゃう(笑)
曽世:面白いシーンはてんこ盛りなので、そこはとにかく楽しんで頂きたいです。一方で、田村作品であるということをも期待して観に来て頂きたいですね。田村ワールドとして言われている“切な面白い”という点はしっかりとしていますから。
山口:最低でも2回は観た方がいいですよ。1回目はメインのストーリーを楽しんで、もう1回観ると細かい伏線がいっぱいあるんだよね。
熊谷:そうそう。間違い探しじゃないけど、細かいポイントがたくさんあるから、何度足を運んで頂いても飽きることはないと思いますよ。私達が毎日何度も稽古しているのに、いつも笑っちゃうんですから。本番では笑っちゃいけないと思うと大変です(笑)
芋洗坂:真面目にやればやるほど、ハマっちゃうんですよね(笑)ふざけてるわけではなく、真剣なんですけど。
山口:だから、面白いってのはあるんだろうね。
熊谷:シリアス・ドラマと言っていいぐらい、大きな問題を抱えた作品なんですけど。
山口:シリアスなのって結構コメディになるからね。他人から理解されないようなことで真剣に悩んだり、悲しんだりしているのは喜劇だよね。シリアスな良い喜劇ですよ。
曽世:芝居が始まってから終わるまで、おかしくてバカバカしいという、その紙一重がずっと続くんですよ。それから細かい伏線がちりばめられているので、それを知らずに観るのと、知ってから観るのとではまた違いますね。
――それでは最後に、観に来て下さるお客様へメッセージをお願いいたします。
曽世:『世襲戦隊カゾクマン』。家族のお話なんですけど、可笑しくて切なくてという田村ワールドは健在ですし、なぜかヒーローものというアンバランスさをぜひ楽しんでください!
芋洗坂:年末の忙しい時期ですが、笑えたり、ふと切なくなったり、温かい気持ちになれる作品です。観終わった後には、お正月には家族と過ごしたいなと思って頂ければと思います。お待ちしています!
熊谷:これを観ずに年が越せるか! これを演じずに年が越せるか! と、気合が入っている時期ですが、本当にお客さんになって観たいお芝居です。ぜひ、いらしてください。お待ちしております!
山口:カゾクマンのチーム、敵対する悪のチームも僕たち以上に変な人たちなので、ぜひ悪のチームもご贔屓に頂ければと思います(笑) ぜひ、ご覧ください!
第一回お茶の間サミット『世襲戦隊カゾクマン』。インタビューの雰囲気からも家族を演じる4人のチームワークの良さが伝わってきており、本作の舞台としての魅力についても自信を持っていることがうかがえた。新たな田村ワールドの中で、このキャストにより本作がどのような作品となるのか開幕が非常に楽しみだ。
第一回お茶の間サミット『世襲戦隊カゾクマン』
12月12日(金)埼玉・志木市民会館(プレビュー公演)
12月14日(日)新潟・小出郷文化会館
12月16日(火)栃木県総合文化センター
12月19~28日(金~日)東京・赤坂レッドシアター
※12月23日(火・祝)の18:00の回のみ『カゾクマン』に代わり、落語公演『寄席日和~赤坂の会~』(出演:山口良一、曽世海司、柳家喬太郎)が上演される。