2025年11月23日、東京芸術劇場 シアターイーストにて舞台『飛び立つ前に』が開幕した。初日公演に先駆けて行われたプレスコール及び取材会には、演出のラディスラス・ショラー、出演の若村麻由美、奥貫薫、前田敦子、岡本圭人、剣幸が登壇。なお、主演の橋爪功は「初日公演へ向けてエネルギーを溜めておいて欲しい」という演出家の意向により欠席となったが、登壇者たちは初日に向けた熱い意気込みを語った。
フロリアン・ゼレールが描く“愛と記憶”のミステリー

本作は、『Le Père 父』『Le Fils 息子』『La Mère 母』という「家族三部作」で世界的に知られるフランスの劇作家フロリアン・ゼレールの傑作。日本では今回が待望の初演となる。演出は、ゼレール作品の演出で高い評価を得ているラディスラス・ショラーが手掛け、主演には橋爪功、共演に若村麻由美、奥貫薫、前田敦子、岡本圭人、剣幸という実力派キャストが集結した。

物語の中心となるのは、著名な作家アンドレ(橋爪功)とその妻マドレーヌ(若村麻由美)。パリ郊外の家で穏やかな日々を送っているように見える二人だが、50年という歳月を振り返るうちに、ふたりの関係に対する疑念が静かに心に影を落とし始める。


娘たちの訪問を控えたある日、差出人のない一束の花が届き、過去の記憶をまとった一人の女(剣幸)が現れることで、静けさの裏に潜んでいた秘密が浮かび上がってくる――。
“老い・愛・別れ”といった普遍的なテーマを扱いながらも、ミステリアスで繊細な心理描写が特徴の本作。観客は、現実と幻想、現在と過去が交錯するゼレール独特の世界観に引き込まれていくことだろう。
舞台『飛び立つ前に』は12月21日(日)まで東京芸術劇場 シアターイーストにて上演。その後、兵庫、島根、宮崎、秋田、富山にてツアー公演が行われる。
登壇者コメント紹介
取材会での演出家およびキャストのコメントを紹介する。
ラディスラス・ショラー(演出)
フロリアン・ゼレールの戯曲『飛び立つ前に』は日本初演になりますが、まさに「演劇的体験」ができるお芝居と呼べる作品です。使われているセリフは日常的でシンプルですが、非常に複雑な心理的要素が絡み合っており、必ず皆さんに感動していただけると思います。
私は9年前にフランス版を演出しましたが、この期間に父をアルツハイマー病で失う経験をしました。この戯曲は死者と生者の絆を語る物語でもあります。父を失った経験と、私自身が50歳になったことで、9年前よりも深くこの戯曲を理解できていると感じています。
今回、若村麻由美さんが初めて老夫人を演じられることで新しい一面を発見していただけるでしょうし、新しく参加してくださった皆さんも含め、本当に一つのファミリーとして仕事ができました。家族の物語を、私たち「家族」として結集した皆で作っています。必ずお客様に楽しんでいただき、感動していただける作品になっていると信じています。
若村麻由美(マドレーヌ役)
舞台では初めてのおばあちゃん役なのでとても大変でした。フロリアン・ゼレールという天才劇作家の作品を世界で一番理解しているラッド(ラディスラス・ショラー)が演出する作品に出演するのは4作目となり、とても幸せです。自分で読んだだけでは分からなかったことが、ラッドの手腕によってどんどん立ち上がっていく過程が素晴らしかったです。
今回は橋爪さん、フロリアン、ラッド、私というメンバーでは『Le Père 父』以来の第2弾とも言える作品。橋爪さんとラッドの信頼関係が稽古場から伝わってきて、皆さんにお見せしたいくらい面白い創作現場でした。私は初めてのおばあちゃん役ですが、素敵な娘たちを持てて、これまでの4作の中で一番家庭の幸せを感じています。ラストシーンがとても美しいので、楽しみにご覧いただけたらと思います。
この作品は、大切な人を失ったことのある人に観ていただきたいです。この世にいない人たちも今私たちと一緒にいるという温かな光を感じていただけるような作品です。
奥貫薫(アンヌ役)
昨年『La Mère 母』『Le Fils 息子』を観て本当に心を動かされました。そのカンパニーの皆さんとご一緒できるなんて、私にとって夢のようなご褒美です。演劇少女だった私にとって、今回の出演は願ってもいない宝物のようなお仕事となりました。
とても複雑な戯曲なので一人で読むのは難しかったのですが、皆で読み解いていく時間がとても豊かで、迷子になりそうな時も手を取り合って進んできました。私にはこの芝居のアンドレとマドレーヌと同世代の両親がいて身につまされる思いがあります。どの世代の方にも、家族が抱える難しさや結びつきの素晴らしさを感じていただける作品だと思います。
前田敦子(エリーゼ役)
今回ラッドさんの作品に初めて参加させていただきましたが、悩んでいることを何一つ見逃さず、すべてに向き合って言葉にしてくれる丁寧な演出で、すごく貴重な時間を過ごせました。
この作品は、何かに疲れている方にも観てほしいです。愛に疲れちゃう瞬間って生きていると絶対にあると思いますが、これを観ると心に火が灯され、「人生捨てたもんじゃないな」と思えるような、素晴らしいラストになっています。橋爪さんの持つパワーと生々しさが爆発すると思うので、本番もそのパワーに飲み込まれながら、静かに、しっかりと演じていきたいです。
岡本圭人(男役)
素晴らしい大先輩の方々と一緒に舞台ができるのがとても楽しみです。『飛び立つ前に』は難しいお芝居ですが、最終的には必ず心が動かされ、観て良かったと思える作品です。台本を読んでいても、これは現実なのかそうでないのか頭がぐちゃぐちゃになりますが、観ていると自分の家族との思い出が蘇ってくる瞬間がたくさんあります。
ラッドの演出で自分の人生が変わりました。今回は、自分がラッドに人生を変えてもらったように、この素晴らしいチームでお客様の人生を変える、そんな力を持った作品になっていると思います。ぜひ劇場でお待ちしております。
剣幸(女役)
今まで出演してきた公演では一番の長老であることが多かったのですが、今回橋爪さんのパワーを見て、見習いながらやらせていただいています。今回の役は、普通の家族の中に嵐や爆弾を持ち込むような役。ひと場面だけですが、ものすごいエネルギーを持って皆をかき乱そうと思っています。
観てくださる方々それぞれが、自分と重ねて感じられる部分、刺さる部分が必ずあると思います。家族や友人など、大事な人のことを思いながら観ていただけたら嬉しいです。
舞台『飛び立つ前に』あらすじ
著名な作家アンドレとその妻マドレーヌは、パリ郊外の家で穏やかな日々を送っている。
だが、50年という歳月を振り返るうちに、ふたりの関係は「完璧な愛」ではなかったのではないかと
いう疑念が、静かに心に影を落としはじめる。
娘たちの訪問を控え、何気ない日常の支度を進めていたある朝、届いたのは差出人のない一束の花。
そして、過去の記憶をまとったひとりの女が、扉を叩く──。
静けさの裏に潜む、名もなきざわめき。
ふたりの人生に封じられていた秘密が、時の奥底からゆっくりと浮かび上がる。
(撮影:細野晋司)
『飛び立つ前に』公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | 舞台『飛び立つ前に』 |
| 公演期間・会場 | 【東京公演】2025年11月23日(日・祝)~12月21日(日) 東京芸術劇場 シアターイースト 【兵庫公演】2025年12月26日(金)~12月28日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール 【島根公演】2026年1月10日(土)~1月11日(日) 島根県芸術文化センター「グラントワ」 大ホール 【宮崎公演】2026年1月17日(土)~1月18日(日) メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)演劇ホール 【秋田公演】2026年1月24日(土)~1月25日(日) あきた芸術劇場ミルハス 中ホール 【富山公演】2026年1月31日(土)~2月1日(日) オーバード・ホール 中ホール |
| スタッフ | 作:フロリアン・ゼレール 翻訳:齋藤敦子 演出:ラディスラス・ショラー |
| キャスト | 橋爪功 若村麻由美 奥貫薫 前田敦子 岡本圭人 剣幸 |
| チケット情報 | 【東京公演】一般:12,000円 25歳以下:8,500円 65歳以上:9,500円 高校生以下:1,000円 (全席指定・税込) ※他地域の料金詳細は公式サイトをご確認ください。 |
| 公式サイト | https://www.avant-de-senvoler.jp |
| 公式SNS |


\月額550円でアニメ、映画、ドラマ見放題!まずは14日間無料体験/
\新規登録なら31日間無料!/
掲載日時点での情報です。 最新情報は各公式サイトをご確認ください。

















