「今まで観たことないぞ、このリア王は!」ショーン・ホームズ×段田安則『リア王』レポート

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「今まで観たことないぞ、このリア王は!」ショーン・ホームズ×段田安則『リア王』レポート

2024年3月8日(金)に東京・東京芸術劇場 プレイハウスにてPARCO PRODUCE 2024『リア王』が開幕した。初日当日にプレスコールと初日前会見が行われ、段田安則、小池徹平、上白石萌歌、江口のりこ、田畑智子、玉置玲央、入野自由、前原滉、盛隆二、平田敦子、高橋克実、浅野和之が登壇した。

目次

ショーン・ホームズ×段田安則による類例のない『リア王』

2022年に段田主演『セールスマンの死』で、高度経済成長期の資本主義の歪みを重ね合わせた斬新な演出により、日本の演劇ファンを唸らせたショーン・ホームズ。その『セールスマンの死』で、第30回読売演劇大賞 最優秀男優賞、令和4年度(第73回)芸術選奨文部科学大臣賞に輝いた日本演劇界の至宝・段田。ショーンと段田が、再びタッグを組んでの次なる挑戦は、シェイクスピア4大悲劇のひとつ『リア王』だ。

舞台のみならずテレビ・映画の世界でも変幻自在に活躍、押しも押されもせぬ日本を代表する俳優である段田が、自身のキャリアにとってエポックメイキングとなった『セールスマンの死』に続いて、生来の気性の荒さと老いから、娘たちの腹の底を見抜けず、悲嘆と狂乱の内に哀れな最期を遂げるリア王に挑む。

そのほかの出演に、グロスター伯の嫡子で異母弟エドマンドの悪だくみによって追手をかけられる身となったエドガー役に小池。リアに勘当されるが誠実なフランス王の妃となるリアの三女・コーディリア役に上白石。

甘言を弄しリアを裏切る長女・ゴネリル役に江口。夫と共にリアを追いやる次女・リーガン役に田畑。グロスター伯の私生児で異母兄エドガーを追放に追い込むエドマンド役に玉置。リーガンの夫・コーンウォール公役に入野。ゴネリルの執事・オズワルド役に前原。ゴネリルの夫・オールバニー公役に盛。リアに寄り添う道化役に平田。リアの忠臣・ケント伯役に高橋。エドガーとエドマンドの父・グロスター伯役に浅野。さらに、コーディリアに求婚するフランス王役に秋元龍太朗。貴族・使用人・兵士役に中上サツキ、王下貴司、岩崎 MARK 雄大、渡邊絵理が名を連ねる。

PARCO PRODUCE 2024『リア王』は2024年3月8日(金)から3月31日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、4月から5月にかけて新潟・愛知・大阪・福岡・長野を巡演する。

プレスコール・レポート:シンプルなまでにそぎ落とされたステージで交錯する思惑

フォトコールは、リアが娘たちに自分への愛の程度を答えさせ、最も深い愛を答えた者に最も大きな領地を授けようとするところから始まる。上の娘ゴネリルとリーガンが愛を語る中、末の娘コーディリアは何も語らず、リアをひどく怒らせる。

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続いて、エドマンドの企みに巻き込まれていくエドガーによるシーンへ。そして場面が変わり、道化が登場して、リアと変装したケントを前に皮肉を飛ばし、プレスコールが終了した。

まず目に飛び込むのが、全体が真っ白なステージだ。シンプルなまでにそぎ落とされたステージが、権謀渦巻く王国の張り詰めた空気感をさらに高めていく。そして、真っ白なキャンバスにそれぞれの思惑が描かれるかのようなステージで、娘たちを思いながらも横柄なリアを、舞台上で衆目の目を集めるほどの存在感で演じる段田を筆頭に、舞台や映像と幅広く活躍する演者たちの思惑が交錯し合い、迫真の演技合戦によって、ひりつく緊張感と迫力が観客席までに響き渡る。

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そして、真っ白な空間に、プロジェクター、コピー機、ウォーターサーバーという、王国がまるで現代のオフィスのようで、時空を超越したかのような現代劇とも思える大道具の数々。だが、セリフもストーリーラインも『リア王』そのもの。そこに広がるのは、シェイクスピアを熟知してるイギリス人のショーンが作り上げる、類例のない『リア王』となっている。

プレスコールは序盤のみの公開であったが、ここから、リアの悲劇への転落がどのように描かれていくのかという期待の高まるプレスコールとなっていた。さらに、高橋が会見で語っているようにこのセットが大きく変わるという。どのような変化が待ち受けているのか期待しかない。

初日前会見レポート:「成功するか、失敗するか、ぜひ目撃していただきたい」

初日前会見では、開幕を迎えた段田が「ついにこのシェイクスピアの名作『リア王』がまさに今から始まります。意気込みはあるんですが、あるんですけど大丈夫でしょうか。成功したらすごくとても……いや、成功するんですが、失敗するんじゃないかと思って今ドキドキの状態でございます。成功するか、失敗するか、ぜひ目撃していただきたいと思います」と段田らしい飄々とした挨拶で、笑いを誘った。

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『セールスマンの死』以来となるショーン演出について、段田は「僕の感性がわりと合うような気がして、いい演出家です。今回の『リア王』は高い山でございまして、その頂上に登るのは大変で、そのルートをちゃんと示してはくれるんですが、そこに登っていく人たちも大変なんでございます。ルートを示すショーンさんも大変だと思いますが、それを見事に示してくれたと思います」と絶賛。続けて、「ただ、私のほうが今、山から滑落しそうになっている状態で(笑)、なんとかこれを登りきろう、なんとか頂上に登ってやるぞというような気持ちです。ショーンさんの演出は素晴らしいです。ただ、もしダメだった場合は全部ショーンの責任にします(笑)」と冗談交じりにコメントして、登壇者たちを笑わせた。

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ショーンに対して、小池も「確かに斬新な演出もあるんですが、ショーンさんは1人1人に本当に優しく懐の大きい器で、すごく寄り添ってくださって、そして丁寧に1人1人にちゃんと向き合って話してくださって、ちゃんと皆さんで共有してという、そういった一面もすごくあるんです」と素顔を語り、「だからこそ、みんなで信頼して、1つのゴールに向かって登っていくような団結力というものが生まれるんだろうなという風に思っています」とカンパニーへの良い影響があると答えた。

上白石は、ショーン演出作品に初出演となるが、日本で公演されたショーン演出作品を全て観てきたという。その上白石は、「ショーンさんの舞台を拝見するたびに、すごく古典的な戯曲にショーンさんならではの現代的な風を吹かせてらっしゃるイメージがあったので、今回もどんなショーンさんの風を私たちは浴びられるんだろうと思ってワクワクしておりました」と期待を明かし、ショーン演出の魅力について、「今回もすごいです。戯曲どおりの言葉ではあるんですけど、真っ白い空間や椅子とかも斬新で、壁に物を書いたり消したりしていて、すごく現代的なようで、なんか時空がどこにいるのかわからないようなそぎ落とされた空間がものすごく素敵です」と語った。

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江口は、ショーンとの稽古を「ショーンさんの稽古場は本当に日々楽しくて、充実した日々を過ごしていました。ショーンさんはすごい面白い人なので、チャーミングだなって思ってます」と振り返り、はにかんだ。

2020年の『FORTUNE』に続きショーン演出作品に2回目への出演となる田畑は「『FORTUNE』の時も美術のポール(・ウィルス)さんとショーンさんだったんですけれども、とにかく世界観がすごく壮大で、すごく緻密に計算された角度だったり、位置だったりがあったりするんですけど、それにすごくハマるとすごく楽しかったなっていう記憶がありました」と思い返しながら、「本当に客席で観たくなる舞台だなっていうのがすごく印象にありました。今回もすごくそう思います」とアピールした。

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『セールスマンの死』を観劇したという浅野は、本作への出演に、「僕もこの人(ショーン)とだったら何かを作っていきたいなって思う方だったので、それに参加できたことはすごく嬉しいです」と喜びを露わにし、本作に対して「とにかく、ちょっと観たことのないような、日本ではきっと作られないような新しい『リア王』ができたと思ってます。新しい扉が開いたのではないかと」と自信を見せた。

プレスコールのシーン関して、高橋は「もう真っ白な舞台なんですけれども、この後に変わるんです。何に変わるかは観に来てください(笑)。今まで観たことがないような、なかなかの展開でございます」と期待を煽りつつ、自身も娘を持つ男親として「今朝も些細なことで娘にちょっと怒られてしまいました。いつもは「初日、頑張ってパパ!」と背中を叩いてもらえるのに、今日はなかったんです。それだけでも今日ちょっと芝居に影響が出てますけれども(笑)。それぐらい400年前だろうが今だろうが娘を持つ男親の気持ちというのは変わらないんじゃないかと思います」とリア王に感情移入してしまっていることを明かして、苦笑いを浮かべた

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さらに初日前の意気込みとして、平田は「私の役は主に段田さんと克実さんに大体くっついているので、胸を借りて頑張ります!」と力強く宣言。

ショーン日本演出作品の全てに出演している前原は「今までで1番大変なんじゃないかなと思ってます。早く楽屋に帰って変更点を確認したいっていうぐらいです(笑)。それぐらいもう変更の毎日なので、もっと豊かになると思いますので、ぜひ観に来ていただけたらと思います」と呼びかけた。

入野は「この壮大な戯曲を、この素敵なキャストとスタッフと共に作り上げることができてとても嬉しく思っています。この演劇でしか体験できないものが、ここに詰まっていると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけると嬉しいです」と期待を寄せた。

盛も「『リア王』という大作に、大勢の人間全員で挑んで、いいものが出来上がってると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです」と入野に同調して期待を寄せた。

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大河ドラマ『光る君へ』にて、親子役で段田と共演している玉置は、段田の印象にいついて、「段田さんはいつも段田さんです(笑)」と開口一番に答えると、会場から笑いが起こった。そして改めて、「どの役に取り組んでいらっしゃる姿も,どの現場でご一緒する姿も、きちんと芯を持ってらっしゃっていて、でも同時に戯曲の中で、それから演じる役に関して、まるで散歩とか泳ぐとかそういうある種エンジョイしてるかのようです。作品や役に取り組む段田さんの姿を、僕はどの現場でも、そういう姿で見てきたなと思っていて、その姿が印象深いです」と称賛した。

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最後に、段田は「『リア王』は、私も以前に別の役で出演したこともありますし、今まで日本で上演された数々の名優たちによる名舞台があったと思うんですが、それとは違う初めての『リア王』を別の面から捉えたと言いますか、『今まで観たことないぞ、このリア王は!』という舞台にはなってると思います。みんなでそこへ向かって毎日稽古をしてまいりましたので、ぜひみんなの姿、そして仕上がった新しい『リア王』』をぜひご覧いただきたいと思います」と会見を締めた。

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

PARCO PRODUCE 2024『リア王』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2024年3月8日(金)~3月31日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【新潟公演】2024年4月6日(土)~4月7日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【愛知公演】2024年4月13日(土)~4月14日(日) 刈谷市総合文化センターアイリス大ホール
【大阪公演】2024年4月18日(木)~4月21日(日) Sky シアターMBS
【福岡公演】2024年4月25日(木)~4月26日(金) キャナルシティ劇場
【長野公演】2024年5月2日(木) まつもと市民芸術館主ホール

キャスト・スタッフ

【出演】
段田安則 小池徹平 上白石萌歌 江口のりこ 田畑智子 玉置玲央 入野自由 前原滉 盛隆二 平田敦子 / 秋元龍太朗 中上サツキ 王下貴司 岩崎 MARK 雄大 渡邊絵理 / 高橋克実 浅野和之

【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】松岡和子
【演出】ショーン・ホームズ

チケット

公式サイト

【公式サイト】https://stage.parco.jp/program/kinglear







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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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