2024年6月29日(土)に埼玉・彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて開幕したPARCO PRODUCE 2024 『オーランド』。7月5日(金)に開幕する東京公演の初日前日に、東京・PARCO劇場にてプレスコールが行われたので、その模様とコメントをお届けする。
20世紀モダニズム文学の重鎮で最も有名な女流作家のひとりであるヴァージニア・ウルフの代表作『オーランド』。主人公オーランドが、時代も国境もジェンダーも飛び越えて、数奇な運命に立ち向かい、真実の「私」を探求する物語は、1992年には映画化もされ、世界中で愛される人気作となっている。
その人気作を、演出家・栗山民也の原案、詩人・岩切正一郎の翻案で鮮明に舞台作品へと落とし込み、現代に甦らせる。主演は、美貌の青年貴族から女性へと変貌し激動の時代を生き抜く・オーランド役に、多方面で活躍し、5度にわたる日本アカデミー賞主演女優賞や読売演劇大賞大賞・最優秀主演女優賞など、数多くの受賞歴を持つ宮沢りえ。2012年朗読『宮沢賢治が伝えること』以来、栗山と本格的に初タッグを組む。
さらに、オーランドが各時代で巡り合う共演者には、ウエンツ瑛士、河内大和、谷田歩、山崎一と個性豊かな実力派キャスト達が集結し、年代や性別の異なる複数の人物を演じ分ける。
PARCO PRODUCE 2024 『オーランド』は、2024年7月5日(金)から7月28日(日)まで東京・PARCO劇場にて上演後、愛知、兵庫、福岡を巡演する。
プレスコール・レポート:美貌の青年貴族ぶりが鮮烈な宮沢りえのオーランド
白を基調としたステージ上には4つの椅子のみが置かれ、奥にスクリーンも兼ねた白壁、下手に樫の木の葉と、シンプルな演劇空間が広がる。そこで公開されたプレスコールは一幕冒頭で、まだオーランドが女性へと変貌する前のシーンだ。
まず、宮沢が演じるオーランドが屋敷を出て丘の上に立つ樫の木の根元で想いを巡らすところから始まる。舞台中央からシルエットで登場するオーランドのシーンから、足を上げてのポージングで鮮烈な印象を振りまき、男性的な細かい所作や言葉使いなどの宮沢の演技が、青年貴族としての若さと美貌を浮き彫りにする。
続いて、河内が演じるエリザベス女王が登場。オーランドはエリザベス女王からの寵愛を受けるのだが、圧倒的なまでの存在感をまとう河内のエリザベス女王は、強烈なインパクトを与えてくれるだろう。
シーンは変わって、詩の手ほどきを受けようと招いた詩人のニック(山崎)に、自信作を酷評されるオーランド。そこからウエンツ演じるルーマニア皇女が登場し、オーランドは激しいアプローチを受ける。ウエンツのルーマニア皇女は、河内のエリザベス女王に負けず劣らずの個性の強さで、猛烈にオーランドに迫っていく。
そして、ルーマニア皇女から逃れるために、オーランドは大使としてトルコのコンスタンチノープルへとやってくる。この地で、やがて女性へと変貌し、数奇な運命をたどることも知らずに・・・というところでプレスコールは終了。
青年貴族から女性へ変貌し、16世紀~20世紀を超えて生き続け、30代から年をとらないオーランド。この幻想的なオーランドの物語には、ヴァージニア・ウルフによる、英国においてあらゆる女性の権利が制限されていた社会への風刺的な視点が込められているという。本作では、男性中心の時代から女性が一人の人間として自立してゆく様子を描いている。
今回のプレスコールでは、オーランドの女性への変貌までは公開されなかったが、宮沢が演じるオーランドの青年貴族としての容姿端麗さぶりと、ウエンツ、河内、谷田、山崎らが年代や性別の異なる複数の役を演じ分けなどの見どころが随所に見受けられるものとなっていた。
時代を超え、国境を越え、そして性別をも超え、オーランドは数々の運命の人々に出会い、真実の自分を追い求め、現代に問いかける『オーランド』の物語が新たに現代へと甦る。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
舞台『オーランド』キャスト&スタッフコメント
◆翻案:岩切正一郎
いよいよ幕が開いた『オーランド』。観客がみつめる舞台の上で、生きることと演じることとが深いところで一つになり、さまざまな感情を観る者に呼び起こす、これぞ演劇!としか言いようのない強烈なリアリティーが立ち上がっていました。
舞台は生き物。毎回の上演で、お客様との豊かな相互作用のなか、毎回違った舞台が生まれるのだなあ、と思うとわくわくします。
そこには、演劇的なリアリティーを作り出す声、演技、振り付け、装置、衣裳、照明、音響、音楽、演出などなど、たくさんのエレメントを堪能できる、一期一会の出会いもあります。
『オーランド』の醍醐味を多くの方に味わっていただけると嬉しいです。
◆演出:栗山民也
PARCOの初日を前にして、この360年の歴史が転がるように進むドラマに、未だいくつもの問いが頭に浮かんでいます。だけどそのこと自体がとても愉快で新鮮で、実はその問いこそがこの劇の大事な根っこなのかもしれないと思えるのです。初めて見たもの聞いたものに対し、その正体がわからなければまず問うことから始めるはず。この全てが溢れかえった情報過多の毎日、なんの疑いも持たず安穏としているわたしたちの前で、オーランドはその場に何度も立ち止まり、自らに問うのです。そしてその大事さを強く噛み締めるのです。
稽古が始まって5週間、いつもよりも、よりたくさんの奇妙で楽しい旅をしてきました。エリザベス朝から現在までを好奇の眼で見つめ続けたオーランドの全身で受けとめた体験を、どうぞ劇場で。
◆宮沢りえ
オーランド、台本を頂いた時、今までに無い感覚があって、どんな舞台になるのか不安でいっぱいでした。その時、演出の栗山さんが『始めから想像がつく事より面白いでしょ?』といたずらっ子の様におっしゃったお言葉を信じ、もがきながら稽古を重ねてきました。
彩の国で初日を迎え、本当に温かい拍手を頂いた時、作品を創ることの喜びと興奮を浴びた感覚でした。その事をエネルギーに1ステージ1ステージ大切に、観客の皆さんと『オーランド』を体験していけたらと思います。
◆ウエンツ瑛士
まず無事に埼玉で幕を開けられた事、ホッとすると同時にとても感謝しています。
振り返れば1ヶ月前この迷路のような台本と格闘していたと思うと、人生で最も濃い1ヶ月だったんじゃないかと思います。栗山さんの指し示す道に自分のできる事を最大限詰め込んで、時に先輩方に甘えながら真っ直ぐ歩いてきました。今はやっと1つの扉が開いただけ、ここからもっともっと「存在」を強めていきたいです。
この作品の魅力は余白がある事だと思います。セリフは「詩」の様に沢山の意味を含んで、いまかいまかと発せられるのを待っています。その合間合間に、どれだけの情景や言葉を皆さまの脳内に浮かばせられるかが勝負でありこの作品の醍醐味です。それは決して説明ではなく、表現ではなく、「存在」だと信じています。
素敵なキャスト、スタッフに囲まれて幸せに毎日を過ごしています。
この作品が皆様の生活の潤いになりますように。
◆河内大和
この作品がどうお客様に届くのか本当に未知の世界で、初日の緊張感はものすごかったです。でも、劇中の時間の経過とともにお客様の集中力がぐんぐん増していくのを肌で感じ、かなり苦しんだ稽古だったので緊張し過ぎて口の中がパッサパサで大変でしたが、お客様総立ちのカーテンコールに本当に感動しました。男でもあり女でもあるオーランドという”人間”の本質に光を当て影を作るコロス、愛すべき役たちも今は大好きです。オーランドと一緒に気持ちを共有しながら400年を生きる体験、最後には言葉にならない不思議な感覚になると思います。是非、劇場に体感しにいらして下さい。
◆谷田歩
自分にとっては非常に難しい作品で、稽古の最初から迷いっぱなしでしたが、栗山さんの演出の力を貰い、
キャストの皆さんの力を借りて何とか形にする事が出来ました。まだまだ完成形ではありませんが。劇場に
入ってからも何度も失敗し、それを何とか次の日に修正するという事の繰り返しで、人生で初めてくらいの物凄い緊張感のある初日でした。
でも、このオーランドと言う難しい戯曲のパズルを最後に埋めてくれたのが劇場に入って観に来てくれたお客さんでした。自分では気付かなかったシーンもお客さんの集中や反応で何か違う新鮮なモノを掴めたし、この作品はやればやるほど成長していく戯曲なんだと言う事を、実感として理解出来た様な初日でした。これからPARCOと地方公演が始まります。最後まで瞬間を精一杯生きてこの戯曲の肉の一部になって行ける様に日々発見していきたいと今は思っています。
◆山崎一
彩の国での2ステージが終わりました。
初日の、異様な緊張感の中はじまった芝居は只々無我夢中の2時間半でした(こんな初日は久し振りです) 。芝居が終わって立ち上がりお辞儀をした時、お客さまのスタンディングオベーションに思わず目頭が熱くなりました(やはりこんな初日も久し振りでした)。
おそらくこの作品は宮沢りえさんの代表作のひとつになるでしょう。それほど素晴らしい作品だと思います。その作品に参加出来たことを誇りに思っています。
皆様、どうぞ『オーランド』観に来てください!
劇場でお待ちしています。
『オーランド』あらすじ(原作)
16世紀イングランドに生まれた青年貴族のオーランドは、その美貌からエリザベス女王の寵愛を受ける。
女王の死後、オーランドはロシアの皇女サーシャと恋に落ちるが、サーシャに裏切られ心を痛め、未完成のままだった詩集「樫の木/The Oak Tree」の制作活動に没頭する。作詞活
動の中でニコラス・グリーン(ニック)を始め当時の有名な詩人達や、オーランドの美貌のとりこになったルーマニア皇女とも交流するようになる。
その後詩人として挫折を経たオーランドは、チャールズ2世の指名でトルコに渡り、トルコ大使として政務に務めるが、暴動の最中に7日間の昏睡状態に陥り、眠りから覚めたオーランドは自らの身体が女性に変身していることに気付く。
女性に生まれ変わったオーランドは、ひそかにジプシーとの生活を送るようになるが、貴族として贅沢な暮らしを送ってきたオーランドにとって、ジプシーの生活様式は相容れず、再びイギリスに戻ることとなる。
航海中、女性用の洋服を着用しなければならないことや自身と恋に落ちた船長とのやり取りを通じてオーランドは自らが女性に変身したことを自覚し、女性であることの歓びを覚える。
そして、18世紀・19世紀のイギリス社交界に舞い戻ったオーランドは、数世紀越しの詩集「樫の木」 を発表し、賞を取る。
オーランドは、文学的に成功し、女性としての地位も築くが・・・。
PARCO PRODUCE 2024 『オーランド』公演情報
<上演スケジュール>
【埼玉公演】2024年6月29日(土)~6月30日(日) 彩の国さいたま芸術劇場大ホール
【東京公演】2024年7月5日(金)~7月28日(日) PARCO劇場
【愛知公演】2024年8月2日(金)~8月4日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
【兵庫公演】2024年8月8日(木)~8月11日(日) 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
【福岡公演】2024年8月16日(金)~8月18日(日) キャナルシティ劇場
<スタッフ・キャスト>
【出演】
宮沢りえ、ウエンツ瑛士、河内大和、谷田歩、山崎一
【原作】ヴァージニア・ウルフ
【翻案】岩切正一郎
【演出】栗山民也