2023年12月7日(木)に東京・シアター風姿花伝にて、稲葉賀恵×牧島輝の企画舞台『季節はずれの雪』が開幕した。初日前に行われたゲネプロより、舞台写真と演出・稲葉賀恵、牧島輝をはじめとするキャスト3名のコメントが到着した。
本作は、スティーブン・メトカルフが、ベトナム戦争から帰還した兵士たちの心の傷を描いた作品。兄と妹、そして“兄の戦友”で妹と愛し合うようになる男の、戦争によって人生を狂わされた人々の悲しみと家族の苦しみを3人芝居で描いている。
出演は、牧島輝、天野はな、大石将弘(劇団ままごと/ナイロン 100℃)の3名。
稲葉と牧島は、『サロメ奇譚』で作品作りを共にしたことから「また一緒に作品を作りたい」と、1年半前に共に戯曲選びをするところから創作を始めた。
稲葉は、描かれていることはたやすく「分かる」などと言えない事柄だが、“なぜそんなことが起こるのか”、自分ごとのように舞台上の役者を通して痛みや喜びを感じる瞬間を生むために、試行錯誤してきたと語る。牧島も「戦争という大きなテーマがこの作品の背景にあるのは確かですが、大きなうねりの中で小さく生きる3人のたった1日の話を劇場で覗き見て欲しいなと思います」とコメントを寄せた。
舞台『季節はずれの雪』は、12月7日(木)から12月17日(日)まで東京・シアター風姿花伝にて上演。
(撮影/杉能信介)
コメント紹介
演出:稲葉賀恵
この物語の中ではたやすく「分かる」などと言えない事柄が起こるけれど、なぜそんなことが起こるのか、考え続け、思いを馳せることが大切だと信じて創り続けていると、時に自分ごとのように舞台上の役者を通して痛みを感じたり、喜びを感じたりすることがあります。
その瞬間瞬間をどれだけ起こすか、そんな野望を抱きながらこの1ヵ月、3人の信頼する俳優陣と、強靭なスタッフ陣と全員で知恵を出し合い創ってまいりました。
今のお客様にどうか届きますよう、これから10日間、大切に公演してまいります。
1人でも多くの方々に観ていただけたらと願っています。
メグス役:牧島輝
今回メグス役を演じさせていただきます牧島輝です。
約一年半前に演出稲葉さんと企画を立ち上げ、この作品を選び、ようやく初日を迎えることができます。ありがとうございます。
劇場にセットが出来上がって音楽も照明も入り、舞台の上に立った時に自分たちで選んだ『季節はずれの雪』という作品を上演できるんだということを実感してとても嬉しくなりました。
戦争という大きなテーマがこの作品の背景にあるのは確かですが、大きなうねりの中で小さく生きる3人のたった1日の話を劇場で覗き見て欲しいなと思います。
12月17日の千穐楽まで『季節はずれの雪』の応援よろしくお願いします。
マーサ役:天野はな
誰一人欠けることなく初日を迎えられることを本当に嬉しく思っています。
この詩的な言葉で語られる戯曲を「綺麗な話」として終わらせず、「人間の話」として伝えるにはどうすればいいか、稲葉さん、牧島さん、大石さん、そして尊敬するスタッフの皆様と共に戦った稽古期間でした。
「とにかく目の前の人と関わって。事を起こしていって下さい。」稽古中に稲葉さんから何度も貰った言葉です。この言葉のおかげで、沢山の愛しい瞬間を見つけることが出来ました。
きっと千秋楽まで、一度も同じ道を辿らない舞台をお届けできると思います。
座組全員でお互いに信頼しながら、私達なりに作り上げた「季節はずれの雪」です。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
デイヴィッド役:大石将弘
健全で贅沢な稽古場でした。ひとつの戯曲を囲んで、出演者と演出の稲葉さん、翻訳の一川さんはじめ稽古場にいてくださったスタッフの皆様と、少しずつ積み重ねていく時間がありました。歴史と現実のあまりの酷さと想像の届かなさにくじけそうになる度、稽古場で皆と話して試してみることで、ひとりではつかめなかったイメージに辿り着ける瞬間が何度もありました。その瞬間を積み重ねて大切につくりました。
改めて、演劇は、知り、想像することを誰かと一緒に営むことだと思います。記録と戯曲と他者との対話から、実際に起こったことを知り、あるかもしれない現在と、ありえるかもしれない未来を想像する。
稽古場で稲葉さんにしきりに「もっと相手に関わろうとして」と言われました。内省するのではなく相手に。この演劇が、観てくださったひとりひとりに何らか関わることができるように、最後まで務めたいと思います。お待ちしています。
『季節はずれの雪』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2023 年12月7日(木)~12月17日(日) シアター風姿花伝
スタッフ・キャスト
【作】スティーブン・メトカルフ
【翻訳】一川華
【演出】稲葉賀恵
【出演】
牧島 輝、天野はな、大石将弘
あらすじ
ある日の早朝。
ベトナム戦争の帰還兵であるメグスは、解禁日に釣りに行こうと、ベトナム時代の仲間であるデイヴィッドの家を突如訪問する。
帰還後、戦争の話題を避け、酒浸りの日々を送っていたデイヴィッドは、メグスとの再会を通じ、ベトナムでの体験、仲間の戦死、かつての自身の選択と対峙せざるを得なくなる。
一方、メグスはデイヴィッドと同居する妹のマーサと出会い、少しずつ心を通わせていく・・・。