『新春浅草歌舞伎』製作発表記者会見が、2022年11月29日(火)に東京都内で行われ、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉が公演への思いを語った。
3年ぶりに浅草公会堂での開催が発表された本作は、“若手歌舞伎俳優の登竜門”として40年以上の歴史を誇り、地元の声援の元、お正月の風物詩として広く愛され続けている公演。若手が大役に挑み、互いに切磋琢磨しながら経験を重ねていく成長・飛躍の場としてはもちろん、歌舞伎の伝承という意味合いにおいても重要な役割を担っている。
今回は、第1部は『双蝶々曲輪日記 引窓』と『夫婦道成寺』、第2部は『傾城反魂香』と『連獅子』を披露。感染対策として、部またぎでの出演はないものの、新春の浅草でしか観ることができない、華やかでエネルギーに溢れる舞台が展開する。
松也は「こうして再び浅草での公演のご報告ができることを嬉しく思っています。3年ぶりということで、出演者、スタッフの皆さんともに意気込むところがたくさんあると思いますが、いつも通り皆さまに楽しんでいただけるよう一生懸命精進して、千穐楽まで無事に務め、翌年につながるものにしていきたいと思います」と挨拶。
この公演では、現在、松也がリーダー的な存在となって出演者たちを引っ張っているが、松也は「僕たちが任せていただいた時期は、まだそれぞれの出演者がいつもの興行でそれほど大役をいただく年齢でもなかったですから、浅草歌舞伎で大役をやることでスキルが上がり、磨かせくれる場所でした。自分たちにとってはとても特別な公演であると思います」と思いを語る。
さらに「最初にみんなで話し合ったのは、『僕らに繋いできていただいた先輩方のためにも、僕らの代でなくなってしまうことがないように。また後輩たちにそのバトンを渡せるようにやっていこうという』ことで、それが大きな目標でした」と明かした。
それだけに、コロナ禍で公演が中止になった際には、「このまま無くなってしまうのではないかという不安」もよぎったそうで「やっていきたいという思いを形にできないかと、松竹の皆さんにもご相談させていただき、これまでの2年間は、歌舞伎座の除幕で『浅草』という文字を入れて行わせていただき、我々は浅草でやるんだという思いを繋いできました。ようやく来年できるのが非常に嬉しいです」と力を込めた。
一方、歌昇は「このメンバー全員にとってそうだと思いますが、この公演はすごく大事な公演だと思っています。私はこの浅草は7回目ですが、これまで播磨屋のおじさまの教えをいただいて、播磨屋のものを多く手がけてきました。播磨屋のおじさまから教えていただいたものを、今後、我々播磨屋のメンバーで引き継いでいくことが使命だと思っていますので、人一倍、一生懸命務めたいと思っています」と意気込み、巳之助は「『新春浅草歌舞伎』としてこうしてまた集まれることを心から嬉しく思っております。僕自身の喜びと同じようにお客様にも『おかえり』と喜んでいただける公演にしていきたいと思っております」とコメント。
そして、新悟は「また3年ぶりにお正月の公会堂の公演に参加できるということで、気持ちを新たに精一杯務めたいと思います」、種之助は「初めて浅草に出させていただいたときは20代前半の頃だったので、若さというものを大事に勢いを持って出させていただきましたが、今後は、まだまだ若手ではあるものの、今まで勉強させていただいたものを確かなものを形にできたらいいなと思っております」。
隼人は「20代最後を浅草で迎えられるのが嬉しいですし、浅草を盛り上げてきたメンバーが集まってできることを嬉しく思っています」、橋之助は「小学校の時から憧れていた浅草歌舞伎なので、僕自身も出せていただけることが嬉しいですし、兄たちのように立派な役者として羽ばたいていけるように、お兄さん方と力を合わせながら務めてまいりたいと思います」、莟玉は「2020年は参加が叶いませんでしたので、4年ぶりに『新春浅草歌舞伎』に、莟玉という名前で参加できるのが嬉しく思います。(部ごと出演者入れ替えのため)4人ずつというのは寂しいですが、精一杯で臨みたいと思います」とそれぞれの思いを寄せた。
『新春浅草歌舞伎』は、2023年1月2日(月)から1月24日(日)まで東京・浅草公会堂にて上演される。
(取材・文・撮影/嶋田真己)