新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』製作発表記者会見が2023年6月5日(月)に東京都内で行われ、尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉が公演に向けた思いを語った。
刀剣に宿る付喪神が戦士の姿となった刀剣男士を率い、時間遡行軍による改変から歴史を守る人気ゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」。これまでミュージカル、ストレートプレイの舞台化が大ヒットシリーズとなっている。さらにはアニメ、映画とさまざまなジャンルで取り上げられてきた人気コンテンツが、いよいよ歌舞伎化。演出は、尾上菊之丞とともに松也が担う。
会見では、まず松也が「長年の夢でありました新作歌舞伎をまた作れるというのはありがたく思っている次第でございます」と挨拶。続いて右近も「30代、歌舞伎俳優として、責任を持って参加させていただきたいと思います。7月の歌舞伎は演舞場の『刀剣乱舞』が一番面白いと言ってもらえるようにみんなでがんばっていきたいと思います」と意気込み、鷹之資は「このメンバーに入れていただき、本当に嬉しく、これから楽しみでございます」、莟玉は「公私共にお世話になっている松也兄さんが演出もされる場に立ち会えるというのですごく楽しみにしております」とそれぞれコメントした。
様々なメディアミックスコンテンツがそれぞれに人気が高い『刀剣乱舞』だけに、歌舞伎ならではの見どころが気になるところだが、松也は「今回、『刀剣乱舞』を歌舞伎化する上でのコンセプトは『今までありそうでなかった古典歌舞伎』をイメージしています。何が歌舞伎かという概念はないですが、皆さんが想像するような王道の歌舞伎のテイストをふんだんに盛り込みたいと思っています。もちろん義太夫も入ってまいりますし、立ち回りも歌舞伎の型を用いた立ち回りを盛り込みます。それから、もう一つのこだわりは、最新技術にこだわらないということ。全く使わないということではなく、できるだけ頼らず、アナログな形で生の舞台の良さを表現できたらいいなと思います」と説明した。
一方、右近は「2.5次元で(ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズに)出演されてきて、僕も他の舞台でご一緒した高橋健介さんとか、spiさんとか、有澤樟太郎さんとか、いわゆる刀剣男士の先輩たちも今回の歌舞伎化を喜んでくれました。『歌舞伎らしさとか、歌舞伎とはなんだということを頭に置きながら自分たちもやってきたところがある』と(彼らは言っていた)。今回、歌舞伎役者たちがガッツリ歌舞伎をするというので、『それをやられたら俺たち困っちゃうよという舞台を作ってくれ』と言われて背中を押してくれている。歌舞伎の手法、様式を正々堂々と貫くことで、受け入れていただいて、しっかり噛み合った上で、盛り上がっていけるんじゃないかなという思いで向き合おうと思っています」と思いを語った。
また、松也は『刀剣乱舞』を新作歌舞伎の題材に選んだ理由を聞かれ、「まず歴史がテーマになっているというところです。歌舞伎という演劇ジャンルは、常に歴史との関わりが深い作品ばかりですから。あとは、キャラクター造形。ミュージカルや舞台を拝見していても、歌舞伎的要素を入れた衣装を着ているキャラもたくさんいるので、歌舞伎にしやすいのではないかと思いました。そして、もう一つは各メディアミックスのほとんどがオリジナルストーリーだということ。新作歌舞伎をやると決めた時点で、できるだけ古典らしさを表現したいと思っていたので、ストーリーが自由であるというのは作りやすいんじゃないかなと思いました」と回答。
今作では、三日月宗近、小狐丸、同田貫正国、髭切、膝丸、小烏丸の6振りが顕現し、十三代将軍足利義輝の時代へと向かう。この時代設定については、松也は「ストーリーは自由なので、どの刀剣男士を出さなくてはいけないというルールもなく、ゼロからだったので、それも難航しました」と言い、「色々と考えた中で、三日月宗近は『刀剣乱舞』の顔的存在で、常に中心にいるキャラクターなので、まずは三日月宗近を想定した場合にどうなるのかということで、足利義輝との繋がりを見つけました。義輝は壮絶な最期を遂げていらっしゃって、それもロマンチックでしたし、義輝と三日月宗近の二人のクライマックスを想像するところから着想を得たのが最初でした」と話した。
そして、三日月宗近以外の刀剣男士に関しては「ニトロプラスさんと相談しながら、せっかく歌舞伎にするので、歌舞伎に関わりのある刀剣を選ぶのがいいんじゃないかという話になりました。同田貫正国はトリッキーなサプライズ。どのキャラクターよりも反響があったと聞いています」と明かした。
それぞれのキャラビジュアルも大いに話題になった本作。髭切を演じる莟玉は「髭切はジャケットの袖に腕を通していないのをどう表現するかということで、今回は羽織に手を通さず、羽織紐だけにしました。それは、これで動き回れるのかと衣裳さんと話し合いになりましたが、でも、それがなるほどと思っていただける一つの要素になったのかなと思います」と分析する。
同田貫正国役の鷹之資は「試行錯誤した挙句、最終的にあの形になりましたが、最後にマフラーをした時に、『あ、これだ』というものがぐっと入るものがありました。いかに同田貫らしさを出して、それを歌舞伎にしていくのかは、すごく大変でしたが、いい形でできたんじゃないかなと思います」と語った。
小狐丸役の右近は「原作から歌舞伎の雰囲気に置き換えるのはとてもナチュラルにできるキャラクターだと思っていましたが、それぞれの職人たちがすり合わせてくれたおかげで、自然な歌舞伎風の小狐丸の扮装ができたなと思っています」とコメント。続いて、「SNSの反応を見させていただいて、一つ気になったのは、顔が面長だという評判がありまして。その中で、一人の方から『右近さんは顔が長いけど、踊りもお芝居も達者で、確かな歌舞伎の腕がある俳優さんなので、見ているうちに気にならないと思います』というコメントがあったので、これだからエゴサーチはやめられないなと思いました。面長は気にせず、来てくださいね(笑)」と冗談たっぷりに話して笑わせた。
菊之丞やスタッフとともに全キャラクターのデザインを考え、撮影にも全て立ち会ったという松也は、「結果的には自分の中で満足するものになったと思います」と胸を張る。自身が演じる三日月宗近については「一番苦労した」と言い、「衣裳はあまり苦労なくすんなりと決めることができたのですが、髪型が非常に難しかったですね。短髪で前髪が下りているというビジュアルなんですが、あの形を歌舞伎の三日月宗近で表現するのは我々がやる意味がないんじゃないかと色々と考えて・・・髪をあげてみるという作戦に大変更しました」とビジュアル完成までの経緯も明かした。
新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』は、7月2日(日)から7月27日(木)に、東京・新橋演舞場にて上演される。
(取材・文・撮影/嶋田真己)
新作歌舞伎『刀剣乱舞』公演情報
上演スケジュール
2023年7月2日(日)~7月27日(木) 東京・新橋演舞場
スタッフ・キャスト
【原案】「刀剣乱舞 ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
【脚本】松岡亮
【演出】尾上菊之丞、尾上松也
【出演】
三日月宗近:尾上松也
足利義輝/小狐丸:尾上右近
松永久直/同田貫正国:中村鷹之資
義輝妹紅梅姫/髭切:中村莟玉
膝丸:上村吉太朗
小烏丸:河合雪之丞
山口左司馬:大谷龍生
弾正奥方柵:中村歌女之丞
善法寺春清:大谷桂三
松永弾正:中村梅玉
【詳細】https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/809
(C) NITRO PLUS・EXNOA LLC/新作歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会