秘密にして禁断の愛が名作へと昇華する――内博貴×熊谷彩春『シェイクスピア物語』レポート

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秘密にして禁断の愛が名作へと昇華する――内博貴×熊谷彩春『シェイクスピア物語』レポート

2022年4月15日(金)より上演されている『シェイクスピア物語~真実の愛~』~SHAKESPEARE OF TRUE LOVE ~。本作は、シェイクスピアの遺した名作の中でも、多くの人に愛された誰もが知る素晴らしい名作『ロミオとジュリエット』が、何故、どうして生まれたのかを紐解きながら、その誕生の秘話と共に、シェイクスピアの青春時代と真実の愛を描く作品。初日前に行われた公開ゲネプロと会見の模様を交えながら、レポートする。

目次

レポート

出演は、主人公のウィル・シェイクスピア役に内博貴、ヒロインのジュリエッタ・ド・キュープレッド役に熊谷彩春。そして、人気劇作家にして詩人のクリストファー・マーロウ/アドミラル一座の俳優ネッド・アレン<二役>に廣瀬智紀、エリザベス女王/亡霊オリヴィア、またの名をダンカン・ランズウィック<二役>に真野響子、ロンドンの演劇界を束ねる大富豪の公爵エセックス卿を村上弘明が演じる。

物語の舞台は、芝居好きなエリザベス女王下のルネッサンス演劇が賑わいながらも、舞台で女性が演じることが法律で許されない時代であった1953年のロンドン。ローズ座で劇作家・俳優として活躍する若きシェイクスピアは、世の中を変える新しい芝居を作りたいと熱望していたが、不調で作品が書けずにいた。その中で、芝居を愛するジュリエッタという一人の女性と出会う。

シェイクスピアは、その時に初めて真実の恋を知るが、彼にはすでに妻がいて、ジュリエッタにはローズ座のオーナーであるエセックス卿という許嫁がいた。それは許されない恋、秘密の禁断の愛となった。愛とは何か…その想いが嵩じて、喜劇を書くつもりが恋愛悲劇になっていき、やがて、それは自らの体験を基にした名作『ロミオとジュリエット』へとなる。

一方、ジュリエッタは男装してまでも恋するウィルの作品に出演しようとする。だが、エセックス卿の嫉妬に狂う報復と法律の罰が、上演する舞台に迫る。二人の「最後の哀しくも真実のファンタジックな愛」はどうなってしまうのか・・・。

取材会では、まず内が「今まで稽古でやってきたことをステージの上で全力でやるだけと思っています。キャストとスタッフの皆様への感謝の気持ちを込めてステージの上で演じられたらと思います」と挨拶。続けて、「台本を頂いたのが3週間ぐらい前だったのですが、元々の台本だと上演時間が休憩を入れたら3時間40分ぐらいあったので、稽古しながらカットするという作業をすることにより、凝縮された作品になりました。限られた時間の中で本当に集中できたのが非常に良かったと思います」と稽古を振り返った。

役作りについても「そこはあまり難しく考えすぎないようにしました。自然に溶け込もうという気持ちのほうがあったので、自然にすんなりといきました」とコメント。また、稽古に途中参加した13歳年下の熊谷に対して、「稽古期間で言ったら、熊谷さんのほうが歌も多くてすごく大変。本当に若い子ってすごいなと思いました」と笑顔で称賛した。

その熊谷も「今回、やることが殺陣やダンスもあり、早替えも10回ぐらいあって、そして台詞も多いので、短い期間でできるのかと不安だったんですが、なんとか初日を迎えられそうでホッとしております」と安堵の表情を見せた。

シェイクスピア劇に縁があるのではと質問を受けた内は、より縁があるのは熊谷であると話を振る。幼少期にイギリスに住んでいたという熊谷は「シェイクスピアの生家に行ったり、小さい頃の発表会でオリジナルミュージカルでウィルの役だったんですけど、それが初めての役を演じる経験だったので、シェイクスピアには思い入れがあります」と説明。そんな熊谷に対して、内は「今、良い振りしたでしょ、絶対に(記事に)使われるよ(笑)」とコメントし、会場の笑いを誘った。

二役を演じる廣瀬は「台本を頂いた時から、演じるキャラクターはどちらも自分に似てないなと思ったんです。だけど、やっていくうちにだんだんと共通点を探し、二つの役にも共通点みたいなものがあったので、そういったところを突き詰めつつ丁寧に演じていきたいです」と意気込んだ。

同じく二役を演じる真野は「女王のほうは衣装が多くて大変ですし、ダンカンのほうは役の設定が複雑ですから、大変です。ただ、もし私が当時に生きていたら舞台に立つことができないので、そういう意味では、良い時代に生まれたなと思っています」と時代背景に思いをはせた。さらに「エリザベス女王がこんなにお芝居好きだと知りませんでした。芝居が好きな人が芝居を支え、それを観に来てくださるというのは、今の状況と変わらないんですね。演じている役も大変だし、私たちの側も両方とも大変でした。もがきとも違うんです。でもその中で逆境なのに頑張っているというのは昔も今もと変わっていないんだなと感じたのでその部分を見ていただきたいです」とアピールした。

シェイクスピア劇にあまり縁が無かったという村上は「今日も台詞はたまたま言えただけで、この中で1番心臓がバクバクしています(笑)」と冗談を交えながら、「私なんか刑事ドラマとかずっとやってきたので畑違いですけど、こういうカツラを被ってこういう世界を楽しめるというのはありがたいですね」と感謝を述べた。

劇中でデュエット曲「真実の愛」を披露する内と熊谷。女性とのデュエットは久しぶりという内は、「デュエットに関してもそうですし、こういう恋物語的な作品は『グレイト・ギャツビー』以来で5、6年ぶりぐらいなので、また新鮮な気持ちでやらせてもらっています」と胸の内を明かす。

劇中ではデュエットだけでなく、ダンスやキスシーンなども披露する内と熊谷。お互いの印象について、内は「とにかくすごく若くて覚えが早いですし、うらやましいです(笑)」と再び称賛。熊谷は「初めて現場に参加させていただいた時に、すごく気さくに話しかけてくださって、困ったときもすごくアドバイスしてくださりました。一緒に頑張ってくださる先輩で、今回ご一緒させていただいてうれしいです」と喜びを露わにした。

新型コロナウイルスという感染症が広がる現代と同じく、シェイクスピアが生きた当時のロンドンでも、感染症「ペスト菌」が流行する中で『ロミオとジュリエット』が書かれ、物語の構成に影響を与えたとされという。その点も含めて熊谷は、「この物語はペストが収束したところから始まるんですけど、今の状況と似ています。真実の愛を描いて、希望を持つという作品なので、真実の愛を描けるようにがんばますので、ぜひ見に来ていただけたらと思います」と意気込みを語った。

廣瀬も同じく「今のこのご時世とリンクしている部分が本作にあります」と触れながら、「その中でもお客様自身もそうですし、演じる二役とも舞台に携わる人間として、そこに命を燃やしているので、僕自身も命を燃やしてキャラクターたちのように演じられたらと思っていまして、そこに観に来るお客様に希望と喜びをお届けできるような作品にしたいです」と期待を胸に寄せた。

そして村上も「これをきっかけに歴史を紐解くといいますか、裏の背景を知ってもらえると、今のグローバル社会のいろんな問題が起きていることの一つを知る上でのきっかけになってくるんじゃないかなという気もします」と言葉にすると、「ショー的な部分もあるし、何か皆さまに楽しんでもらえる、悲喜劇でもあるような舞台でもありますので、皆さんにぜひ来ていただきたいです」と訴えた。

取材会の最後に、内は「無事に初日を迎えられてホッとしております。今日の朝に、コンビニに行ったら店員さんのおばさんが「内君ですよね? 『シェイクスピア物語』観に行きます」とおっしゃってくださったんです。だけど、「でも劇場は遠いよね」と言っていたんですよ(笑)。もしかしたら遠いなと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、必ず皆さんを満足させられるような作品になっておりますので、ぜひ劇場に足を運んでください」と呼びかけた。

舞台上では、内が若き才能にあふれながらも創作活動とジュリエッタとの禁断の愛に苦悩する若きシェイクスピアを熱演。熊谷は、純粋無垢で若々しく演劇に希望を見出し、そして演劇を心から愛するが故に、シェイクスピアとエセックス卿との狭間で心を痛めるジュリエッタを好演。彼女のチャーミングな男装姿も必見だ。そんな2人を真野と村上のベテランと、二役を華麗に演じる廣瀬ががっちりと支える。

内と熊谷彩春によるデュエット曲「真実の愛」は、禁断の愛をテーマに作られた『ロミオとジュリエット』の物語を彷彿とさせる歌詞に、美しい声がメロディーと絡み合う1曲。物語の展開からも心打つものとなっており、見逃せないシーンだ。

その「真実の愛」はじめ、美しく華麗で繊細なメロディにのせた歌や音楽、イギリス・ルネッサンス期を彷彿とさせる絢爛豪華な舞台衣裳、キャストによる群舞や殺陣など、見どころが満載。加えて、シェイクスピア劇のファンならばニヤリとするようなシェイクスピア作品の要素が様々なシーンや台詞に織り込まれている点も魅力となっている。

女性が舞台の上に立てない時代のさなかシェイクスピアが真実の愛にめざめ、劇中劇として演じられる『ロミオとジュリエット』がシェイクスピアとジュリエッタとオーバラップする時、秘密にして禁断の愛が名作へと昇華する。

『シェイクスピア物語~真実の愛~』~SHAKESPEARE OF TRUE LOVE~は、4月15日(金)から4月24日(日)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホール、5月20日(金)から5月22日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。上映時間は1幕80分、休憩20分、2幕80分の予定。

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

『シェイクスピア物語~真実の愛~』~SHAKESPEARE OF TRUE LOVE~ 公演情報

上演スケジュール・チケット

【横浜公演】2022年4月15日(金)~4月24日(日) KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【大阪公演】2022年5月20日(金)~5月22日(日) 森ノ宮ピロティホール

スタッフ・キャスト

【脚本・演出】佐藤幹夫/モトイキシゲキ

【出演(配役)】
ウィル・シェイクスピア(ローズ座付き作家兼役者):内博貴
ジュリエッタ・ド・キューブレッド(キューブレッド家一人娘の令嬢):熊谷彩春
クリストファー・マーロウ(人気劇作家、詩人)/ネッド・アレン(アドミラル一座の俳優):廣瀬智紀 ※2役
エドワード・パーシー(アドミラル一座の女形):門戸竜二(大衆演劇)
ヘンリー・ロートン(アドミラル一座の俳優):伊東孝明
アダム・ドリントン(キューブレッド邸使用人):小谷嘉一
衛兵隊長 ブラントン:真砂京之介
ティルニー儀典長:冨岡弘
ランス・ギネス(役者兼ヘンズローの従者):髙木薫
道化のニック:石井智也
衛兵 アルコック:沢柳健
乳母・アン(ジュリエッタの乳母):黒田こらん
ビアトリス(居酒屋娼家「Tavern of the ROSES」の女主人):琴音和葉

娼婦アビー:木村美月
娼婦クラウディア:佐藤アンドレア
娼婦エセル:久保田成美
娼婦マギー:桐本絢可
娼婦ダリル:ヒナゴ茉莉乃

マーガレット・ド・キューブレッド(キューブレッド家の伯爵夫人):こだま愛
フィリップ・ヘンズロー(ローズ座興行主でエセックス卿の子分):下村青
エリザベス女王/亡霊オリヴィア、またの名をダンカン・ランズウィック:真野響子 ※2役
エセックス卿(大富豪で貴族公爵ローズ座のオーナー):村上弘明

【公式サイト】https://www.shakespeare-love.com/
【公式Twitter】@shakespeare_st

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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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