壮大な世界が劇場を包む、これまでにない“朗読劇”『バイオーム』レポート

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壮大な世界が劇場を包む、これまでにない“朗読劇”『バイオーム』レポート

中村勘九郎主演、上田久美子が脚本を担当する、スペクタクルリーディング『バイオーム』が、2022年6月8日(水)に東京・東京建物Brillia HALLにて開幕した。

目次

公演レポート

本作は、宝塚歌劇団で心に残る数々の名作を手掛けてきた上田による書き下ろし戯曲を、『麒麟がくる』『精霊の守り人』を手掛けた一色隆司が演出する“スペクタクルリーディング”。勘九郎のほか、花總まり古川雄大野添義弘安藤聖成河麻実れいという演劇界を牽引する俳優たちが、1人2役を演じ、五感を揺さぶる朗読劇を繰り広げる。

物語の舞台は、ある政治家一族の邸宅の庭。その家に住む男の子ルイは、いつも夜になると部屋を抜け出し、庭にある大きなクロマツの下でフクロウの声を聞くために待っていた。ルイの父は家族を顧みることなく、仕事に没頭し、心のバランスを欠いた母は怪しげなセラピーに逃避して、息子の問題行動の奥深くにある何かには気づかない。

政治家一族の家長としてルイを抑圧する祖父、いわくありげな老家政婦とその息子の庭師も加わり、人間たちの様々な思惑が渦巻くその家で、ルイは古いクロマツの樹の声を聞く。

出演者たちは、勘九郎を除き、植物と人間をそれぞれ演じる。極力動きを抑え、穏やかな声で語りかけるように話す植物たちの姿は、浮世離れした幻想的な世界を感じさせられた。対して、人間の世界は決して美しいことばかりではない。言葉の端々に、行動の端々に、欲望やずる賢さ、汚さが滲み出ている。その2つの世界はいずれも作用し合い、決して切っても切れない関係にあるが、そんな中で、2つの世界の狭間に生きるルイは、人間の希望のようにも感じられた。

舞台には大掛かりなセットはなく、“植物たち”が立つ平台があるだけ。舞台後方にはストリングカーテン(糸状のカーテン)がかかり、そこにプロジェクションマッピングを映し出すことで、壮大な世界を表している。劇場を包み込む音楽は、生演奏だ。そうした演出の数々は、これまでの朗読劇という概念からは大きくかけ離れていた。まさにそれこそが“スペクタクル”なのであろう。

また、キャストたちの熱演も素晴らしい。植物の芝居では台本を前に“朗読”する姿が見られるが、人間の芝居ではどのキャストもほとんど台本を手にすることなく、全身を使って表現をしていた。特に、花總の狂気に満ちた演技は圧巻だった。

なお、本公演ではライブ配信の実施も決定している。劇場でキャストたちの熱のこもった芝居を体感するのも良いが、個人的にはライブ配信にもぴったりな作品だと思う。幻想的なプロジェクションマッピングは、映像で見るとより美しさを増すのではないだろうか。生で見るのとはまた違った味わいがありそうだ。

この日、開幕に向けて勘九郎ら出演者たちからのコメントも到着。勘九郎は「メッセージ性の強い作品になっておりますので是非ご覧いただき、多くのものを感じ取っていただけたら」と呼びかけ、花總は「素晴らしい共演者の方々と共に千穐楽まで全秋中で駆け抜けたいと思っております」と意気込んだ。

スペクタクルリーディング「バイオーム」は、6月8日(水)から6月12日(日)まで東京・東京建物Brillia HALLにて上演。6月11日(土)17:00公演は国内・海外ともにライブ配信が決定している。

(取材・文・撮影/嶋田真己)

コメント紹介

◆中村勘九郎(ルイ・ケイ役)
最初は朗読劇として稽古を進めていたのですが、稽古を進めていくうちに作品がどんどん進化していき、ついていくのが大変でした(笑)。今でも難しく感じておりますが稽古中は皆様に助けていただきながら進められたので、短い期間で充実した稽古でした。本作は配信もございますので、映像ならではの美しさをおうちでも楽しんでいただけること間違いなしです。大変な状況下ではありますが、メッセージ性の強い作品になっておりますので是非ご覧いただき、多くのものを感じ取っていただけたらと思います。

◆花總まり(怜子・クロマツの芽役)
スペクタクルリーディングって?と頭にはてなが浮かんだ当初から気付けば2週間余りのお稽古期間はアッという間に過ぎて、初日は目の前。まだ迷いや不安との闘いの中ですが、今までに経験したことのない2つの対照的な役に全力で立ち向かっております。素晴らしい共演者の方々と共に千穐楽まで全集中で駆け抜けたいと思っておりますので、ご覧になるお客様には濃密でセンシティブな舞台時間を共に味わっていただければと思っております。

◆古川雄大(野口・一重の薔薇役)
稽古の一瞬一瞬がとても刺激的で、あっという間に過ぎていきました。それと同時に、上田さん一色さんという最高のタッグに、尊敬する先輩方と共に過ごす時間は濃厚に感じました。そして、わずかな時間で着実に出来上がっていく「スペクタクル・リーディング」を目の当たりにし、震えました。
僕も野口・イングリッシュローズとしてこの世界に立てることを幸せに思いながら、これから千穐楽まで役を全う出来るように努めます。皆様、ご期待ください。

◆野添義弘(克人・クロマツの盆栽役)
スペクタクルリーディングという言葉は、今回初めて耳にしました。スペクタクル?どうなるのか?全く予想がつかなかったのですが稽古に参加する度に、なるほど!なるほどと思えるようになりました。
まさにスペクタクルリーディングです。これがスペクタクルリーディングです。皆様同様、私も初めての体験です。
ドキドキワクワクしながら演じたいと思います。皆様もスペクタクルリーディングの世界にドップリと浸かってください。

◆安藤聖(ともえ・竜胆役)
経験したことも目撃したこともない朗読劇に仕上がっています。タイトル通り、スペクタクルなリーディング劇です。なので稽古中は、これか?これか!!と様々な課題に頭がフル回転していました。頭も身体も疲れ切っているはずなのに楽しんで稽古に参加できたのは、素晴らしい共演者の皆さま、スタッフの皆さまがいてくれてのことです。迎える本番では、ここまでのプロセスをしっかりお客さまに観ていただけるよう、そして作品を存分に楽しんでいただけるよう、思いを込めて舞台に立ちます。

◆成河(学・セコイア役)
試演としての朗読劇からは随分とはみ出して欲張ったものになっていると思います。3週間あるんだったら覚えませんか、などと焚き付けてしまった責任の一端も感じつつ、これは吉と出るか凶と出るか、ドキドキしております。ミクロな視点とマクロな視点を行き来する非常にダイナミックな戯曲です。この戯曲の持つスケールと繊細さを損なわないよう、最新の手付きと集中力で5日間、お客様と共に作品を育てて行ければと思います。よろしくお願いします。

◆麻実れい(ふき・クロマツ役)
頂いた本に初めて目を通した時、私にはとても難解な作品と感じましたが読み込んでいくうちに、ふきと植物たちを通して、生きていく強さと暖かさが私の中に広がり始めました。
この気持ちを最後まで育み、皆様にお渡しできたらと願っています。

スペクタクルリーディング『バイオーム』 公演情報

上演スケジュール・チケット

2022年6月8日(水)~6月12日(日) 東京・東京建物Brillia HALL

スタッフ・キャスト

【作】上田久美子
【演出】一色隆司

【出演】
中村勘九郎
花總まり
古川雄大
野添義弘
安藤聖
成河
麻実れい

国内・海外ライブ配信

【LIVE配信日程】6月11日(土)17:00公演
※アーカイブは6月14日(火)23:59まで視聴可能

【チケット料金】
<英語字幕なし>配信視聴券:4,500円(税込)
<英語字幕あり>配信視聴券:4,500円(税込)
<英語字幕なし>配信視聴券(公演パンフレット郵送サービス付き):6,000円(税込)※送料別途必要

※「公演パンフレット郵送サービス付き」は<国内・英語字幕なし>のみの取り扱い
※「公演パンフレット郵送サービス付き」につきまして数量限定販売(予定枚数に達し次第、受付終了)
※パンフレットのお届けは、配信チケットの販売終了日から1週間後を予定
※セット券あり

【チケット販売期間】6月14日(火)22:00まで

【チケット購入】イープラス Streaming+

<国内配信チケット>
https://eplus.jp/biome2022-st/

<海外配信チケット>
https://ib.eplus.jp/biome/
※海外配信は英語字幕付きのみの配信

※配信対象エリア19ヶ国
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、韓国、香港、マカオ、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、
ブラジル、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランド

【公式サイト】https://www.umegei.com/biome/
【公式Twitter】@BIOME_UMEGEI

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