梅棒 11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』多和田任益インタビュー「僕が梅棒を愛する理由と覚悟」


2021年2月19(金)に、梅棒 11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』が開幕した。ストーリー性の有る演劇的な世界観をジャズダンスとJ-POPで創り上げる、ダンスエンターテインメント集団「梅棒」に、本作より多和田任益が新メンバーとして加入。新体制となった初の公演。

俳優としてキャリアを重ね、2019年には客演として「梅棒」の公演にも出ていた多和田だが、「梅棒のメンバーになりたい」という強い願いを抱いた背景は・・・。“人生初”がたくさんつまった心の動きを聞いた。

電撃加入の裏側!「絶対緊張するだろうな」と思って書いたラブレター

――昨年の梅棒への電撃加入発表は、本当に驚きました。

(発表したのは)もう昨年の夏になるんですねえ。梅棒の公演を初めて観たのは、2018年に世田谷パブリックシアターで上演された『Shuttered Guy』でした。以前からお名前は知っていたんです。共演した方々からも「梅棒、おもしろいよ」と聞いていて。ずっと観てみたいと思っていたのが叶ったのがそのタイミングだったんですけど・・・もう、言葉にできないぐらい衝撃を受けたんですね。

いろんな作品を拝見する中で、「面白い!」と感じることは多いんですが、「・・・出たい!」と強く思ったんです。その時出ていた仲の良い客演キャストやマネージャーさんにどうやったら出れるのか前のめりに聞いていて、そんなことをするのは初めての経験で。それぐらい「あちら側に一緒に立ってみたい」という衝動がすごかったんです。

その後、一昨年(2019年)の『ウチパパ(『ウチの親父が最強』)』でご縁をいただくことができまして。そこでメンバーの人柄に触れて、より梅棒っていいなあと思っていました。公演が始まる前から、(伊藤)今人さんに「また出してください!」って言っていたぐらい(笑)。それぐらい楽しかったんです。

――「また出してください!」が「メンバーになる」とは、今人さんも想像していなかったのではないでしょうか。

そうかもしれない(笑)。『ウチパパ』の時、メンバーの皆さんは大変なことが多かったと思うんですけど、客演の僕らには全然それを感じさせないようにものづくりに取り組まれていたんですよね。それも含めて「知りたい」と思ったのが、加入させてほしいとお願いするきっかけでした。

――ダンスだけですべてを表現する、その裏側って確かに知りたくなりますね・・・。

みんな、タブレットとかを駆使して、振付ごとの動きとかを綿密に計画して作っていたんですよ。僕は自分が機械弱いこともあり、「すげ~・・・ハイテク!」と驚いて(笑)。「このカウントで○○は左に移動」とか、「このタイミングでフォーメーションを変える」とか、変更箇所も、そういうツールを使ってメンバー同士ですぐに共有できるようにしていたりして。

ユニゾンで踊るだけなら動きはシンプルですが、梅棒の作品はあくまでも“ダンスでお芝居”。芝居をしている後ろで別のダンスをしていたり、いろんな要素が組み合わさって一つの場面を構成しているので、脳みそ足りるのかな・・・って思いましたもん(笑)。

――多和田さんにとって、梅棒さんのものづくりはすごく興味深いものだったんですね。

もともと踊ることは好きだったんですが、梅棒を観て、初めて振付についても「いつか僕もできたらいいな」と思ったんです。実は、昨年3月にやらせていただいた『改竄・熱海殺人事件』モンテカルロ・イリュージョンでも、梅棒のすいーつさん(野田裕貴)が振付をしてくださったんですよ。すごく急な話だったのにさっと対応してくださって。改めて、梅棒のすごさ、振付のおもしろさを目の当たりにして「学んでみたい」という思いがさらに強くなりました。

学ぶ場ってどんな形でもいいと思うんですけど、梅棒と出会ったこと、今感じていることを大事にしたかった。この思いと身を預けるには、梅棒はすごすぎる存在かもしれないけれど、自粛期間にいろいろ考えて、お願いしてみようとお話をさせていただきました。

――加入したいという思いを伝えるために「ラブレター」として書かれたと伺いました。

書きました!これも人生初のことで。そもそも手紙というもの自体も超久しぶりに書いたので、自分、こんなに字が下手だったんだと驚きました(笑)。でも、書き出したら止まらなくなってしまって。加入したい旨は、今人さんと(天野)一輝さんにはお伝えしていたんですが「俺たちの一存で決められることではないから、みんなに話して」と言われていたんですね。それで、梅棒のリモート会議にお邪魔してお話することになりまして。「絶対緊張するだろうな」と思ったので、手紙を書いておくことにしました。

――皆さん、どんな反応をされていましたか?

それが、覚えていないんですよ~。必死過ぎて。読み間違えてしまったり、噛んだり、オーディションよりも下手したら緊張していたのかもしれない(笑)。OKをいただけなくてもそれはそれでしょうがない、と思っていたんです。モヤモヤした気持ちを抱えたまま時を過ごすよりいい!と思って。

そういう考え方も、以前の僕なら出来なかったんですよ。何かをやりたいと思っても、マイナス思考になってしまう方でしたし。でも、梅棒と出会って「表現」することについてたくさん教えていただいて、人柄という面でも梅棒を見て考えを改めることもあったので、「当たって砕けろ!いったれ~!!」という気持ちで読み上げました(笑)。

――ご自身のファンや、梅棒ファンの方に報告した時のことは覚えていますか?

ファンの皆さんには、事務所のYouTube生配信で「何かを発表します」とだけ伝えて、梅棒がやっている梅棒のファンクラブイベント「ひのまるフェスタ」の最終日にサプライズで参加して踊りました。最後にわざわざナンバーを用意していただいて、先輩メンバーに曲の途中で合流する形で一緒に踊ったんですけど・・・あんまり記憶がないです。心臓が飛び出そうだったことしか覚えてないかも。

オーディションの緊張とかとは全然違って、「受け入れてもらえるのかな・・・」という心配もありましたし、いろんな感情がごちゃごちゃで。ハケたあと、ギューッて心臓が痛くなって「あっ、自分、うまく呼吸ができてない」って気付きました(笑)。でも、お客さんもメンバーもすごくあたたかく迎えてくださったので泣きそうでした。緊張と感動がぐちゃぐちゃに入り混じっていて・・・あの感覚は、一生忘れられないですね。

――「また出たい」から「メンバーになりたい」と、さらに一段階気持ちが進んだのはどういったお気持ちからだったんでしょうか?

周囲にも、劇団に所属されている方も多くていろんなお話を聞くんです。親しいところで言えば、柿喰う客の中屋敷(法仁)さんとか。実は、役者として「柿喰う客に入りたいなあ!」と思ったりしたこともあったんですよ。団体に属している方たちは、みんな「大変な面もある」「家族みたいになれるところがいい」という話をしていたので、僕はどう感じるんだろう?と興味があったんです。実際、今メンバーになってみて、その良さも、難しさも、日々体感しています。

全員が納得して前に進む「らしさ」を体感

――多和田さんはどういう部分に良さを感じていますか?

入る前は、これは僕の勝手な想像だったんですけど、団体のトップ・・・梅棒なら主宰の今人さんが「これ」と言ったらそうなる、みたいなやり方をイメージしていたんです。でも、梅棒はたくさん会議をしていて。意見をお互いに聞いて、最終的にみんなが納得したものを取り入れているんだと分かりました。客演の時は知らなかったけれど、それってすごくいいなと思って。こういう作り方をしているから、梅棒の表現にはあたたかさがあるんだと分かったんです。これは、内側から見ないと分からなかったことだなと。

――逆に難しさを感じることは?

まさしく、良さの裏ですね(笑)。「それでいいのでは?」と思うことも、誰か一人が「う~ん、それはちょっと・・・」と言っているとボツになってしまいますから。正直「その案で進めればいいのに」と思うこともあるんですけど、でも、それを通してしまうと梅棒でなくなってしまうことも分かる、というか。良いからこそ、難しい部分も出てくるんだなと。

人は、それぞれ考え方もセンスも違うので。時間はかかるけれども、全員が納得して前に進んでいる方が最終的にいいものが出来る。それを体感している真っ最中です。

――梅棒さんって、外部の公演でもメンバーの方が個々に振付として参加されている場合もありますけれど、梅棒“テイスト”って共通してありますよね。

そうなんですね。だから、僕もそれを間近で学んで早く出来るようになりたいし、メンバーに加えていただいたからには一日も出来るようにならなければと思っています。

――梅棒 11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』で、早速その機会があるんですよね?

はい、やらせていただきました。でも全てを1人でやるわけではなくて、曲ごとに何人かで担当する、みたいな分け方をしているんです。僕はベースが0からだったので、しっかりついていかなきゃと思いつつ、今後も自分の思っていたことや考えていたことをちゃんと意見として出せるようになっていかなきゃと思っています。

正直、まだビクビクしているところもあるんですよ(笑)。怖いというわけではなくて、初めてのこと過ぎて、そわそわする・・・伝わります?しかも、振付に関わる曲が結構多くて、びっくりしたんですよ・・・。

――複数、手がけられたんですね?

そうなんです。初めてだから1曲だろうと思っていたんですが・・・。会議で聞いた時、驚いたんですけど、さすがに「ええ~?!」とは言えなくて(笑)。メンバーの中でも「これぐらいやるでしょ?」という方と、「こんなにやらせるの?」って驚いている方がいました。誰とペアを組むかで学べることが全然違うので、いろんな人とやってみた方がためになるだろう、という意図からそうしてくださったみたいです。

――今回の作品は、『男ならやってやれ!』の再演のような、続編のような作品なんですよね。

もともとは再演をやろうという話だったんですが、再演と言っても上演する時期の色があったり、出演しているキャストの色があるので、ベースは同じだけどパワーアップした作品、という位置付けです。

ベースは同じなんで幼馴染3人を巡って起こる物語なんですけど、再演とも続編とも取れるけど・・・というちょっと不思議な作りになっています。以前の公演をご覧になっていれば「あーっ!」と思う展開もあるし、初めての方は新鮮に観てもらえると思うし、どちらでも盛り上がっていただけるのではないかと!

――役として、今回多和田さんが演じている役は?

中心となる幼馴染の一人で、成長してオタクになる男の子を演じます。僕自身もオタクでオタワダって自称しているんですけど(笑)。そういう自分らしさも出しながら演じられているんじゃないかなと思っています。

「好き」を積み重ねた先にあった、能動的な衝動

――多和田さんって、舞台でもイベントでもすごく楽しそうに踊る姿が印象的です。少し話は戻るのですが、多和田さんがダンスを好きになったきっかけをお聞きしてもいいですか?

ダンスと出会ったのは、高校1年生の時です。今とは別の事務所にスカウトされて、そのオーディションでお芝居とダンスをやったのが最初で。その時は全くやったことがなかったから、ついていくのに必死だった記憶しかないんですけど(笑)。そのオーディションのためのレッスンを受ける機会に「難しいけど、面白いな」と素直に思えたのが、ダンスに興味を持った“きっかけ”かな・・・。

なので、しっかり始めたのは、高校で部活に入ってからなんです。ダンスの種類はHIPHOP。先輩にどこのスクールが良いのか教えてもらって、アルバイトをして貯めたお金で通っていました。通ったと言っても、週1で、HIPHOPしかやっていなくて。舞台に立つようになってから少しずつジャズとか他のレッスンに行ったり、出演作品きっかけでタップを勉強しに行ったりしていたんですけど、今思えば、高校生の時にもっといろいろやっていればよかったなあって思います。でも「ダンスが好き」という強い気持ちはずっと持ち続けていたので、ダンスのある舞台が決まると喜んでました(笑)。

――梅棒さんのダンスは“物語るダンス”なので、その「好き」という気持ちと、これまで培ってきた表現力がきっと活きますね。

ダンスパフォーマンスだったりダンス公演については、観るのは好きなんですが、自分がやってみたいという気持ちはあまり持ったことがなかったんです。でも、梅棒の「言葉がなくても伝わる」ダンスはもっとやってみたいと思った。お芝居を中心にやらせていただいてきた自分だからこそ、できる見せ方がここにあるんじゃないかと思って。梅棒に惹かれたのは、そういう部分に魅力を感じたことがすごく大きかったんだと思います。

――『ラヴ・ミー・ドゥー』では、どんな感覚を得るんでしょうね。

僕、今まではマネージャーさんや事務所の方々からアドバイスをいただくことが多かったんですが、「梅棒に加入したい」というのは初めて自分から言えた“やりたいこと”だったんです。「梅棒いいなあ」ではなく、「梅棒に入りたいです。事務所はOKしてくれますか?」というアプローチができたことが、自分の中ではすごく大きくて。

マネージャーさんは、僕がそういうことを考えているって分かっていて、「言い出すの遅いな~」みたいな感じだったと思うんですけど(笑)。でも、好きだからこそ勢いだけで言いたくなかったんです。ちゃんと覚悟を持って言わなきゃいけないし、自分のこれからのこともリアルに考えなければいけないし。その上で、自分から一歩踏み出せたことは大きな財産になりました。

――昨年11月に上演された『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 2』のクレジットには、多和田任益(梅棒)とクレジットされているのを見ました。

あれ、夢だったんですよ~!加入発表後の出演発表だったから、つけていただけますか?って聞いたらOKしてもらえて。嬉しかったなあ。

――今後は、それが多和田さんにとっても「看板」になっていくんですね。

梅棒内でたくさん学びたいという気持ちと同じくらい、役者としてもしっかりやっていきたいです。梅棒から僕の芝居に興味を持ってくれる方もいらっしゃるかもしれないし、僕が出演した作品で「梅棒」のクレジットを見て興味を持ってくださる方もいるかもしれない。

僕が加入したことが、梅棒の作るエンターテインメントをもっとたくさんの方に知っていただけるきっかけになればと思っているんです。お客さんもそうだし、ご一緒する演出家さんや、役者仲間もそう。みんなが梅棒に興味を持つきっかけを一つでも多く作ることが、僕の使命だと思っています。「看板」を背負えるように、いろんなことをがんばっていきたいです。

梅棒・多和田任益の「夢」

――「梅棒」の多和田さんとして「こうなりたい」という夢はありますか?

いつになるか分からないですけど・・・今まで関わった作品や、これからやらせていただく作品で「振付」として関われたらいいですね。もちろん出演できることも嬉しいですけど、お世話になった作品や人に振付としても呼んでいただけるような人間になれたら、恩返しというか、また違った形の貢献ができるのではと思っています。

――多和田さんの「梅棒としてのこれから」を、楽しみにしています!

ありがとうございます!
すでに日程が発表になっている12回公演も、どのメンバーがそこに出演するかは後々のお知らせにはなるんですが、僕にとって大切な仲間である小越勇輝が客演で出演してくれることだけ先日先に発表になったんです。僕自身勇輝の出演が決まった時すごく嬉しかったんですが、この発表がきっかけで「梅棒って何だろう?」「多和田が入ったって聞いてたけど観たことない」と興味を持ってもらえた方もいらっしゃると思うので、これから触れてくれる方の期待も裏切らないように、この公演からしっかりがんばりたいですね。

今、こういうご時勢で、日々を生きてるだけで大変なことがたくさんあると思うし、いろんな事情があって観劇自体を仕方なく我慢している方もいると思うんです。だから僕自身もこれまでみたいに大きな声で「観に来てくださいね!」って発信できないことが苦しい面もあるんですけど、でもこういう時だからこそ、エンタメにはすごく力があることを感じてもらえると思うし、何より梅棒を観るとめちゃめちゃハッピーになれるってことは伝え続けたいと思います。僕自身もやっていてめっちゃ元気になるし、あたたかい気持ちになれるので、この気持ちを、一緒に味わってもらいたいなって。そして、僕が「梅棒を愛する理由」と「覚悟」を提示していこうとも思っているので、1人でも多くの方々にそれを観てもらえたら嬉しいです。

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ダンスエンターテインメント集団「梅棒」第12回公演のメインゲストは小越勇輝

公演情報

梅棒 11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』

【東京公演】2021年2月19日(金)~2月28日(日) サンシャイン劇場
【愛知公演】2021年3月6日(土)~3月7日(日) ウィンクあいち
【大阪公演】2021年3月11日(木)~3月14日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

【作・総合演出】伊藤 今人(梅棒)
【振付・監修】梅棒

【出演】
伊藤今人・鶴野輝一・遠山晶司・塩野拓矢・櫻井竜彦・楢木和也・天野一輝・野田裕貴・多和田任益(以上、。梅棒)

押田岳 新垣里沙 鎮西寿々歌 池田遼(少年王者舘/おしゃれ紳士) YOU 涼宮あつき(RAB<リアルアキバボーイズ>) J(KoRocK/WEBER) 野元空 えりなっち

【公演特設サイト】http://umebou11th.dynamize.net

チケット情報

2021年2月19日~3月14日 想いは巡り、繰り返す! 2014年から2015年に上演された梅棒 3rd STAGE『男なら、やってやれ!!』の数年後の世界――。 歴史は繰り返される・・・『男なら、やってやれ!!』を観劇した人は[…]

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梅棒 11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』多和田任益インタビュー
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