2021年7月19日までヒューリックホール東京で、ナポリの男たちch特別回『舞台・ナポリの男たち』が上演されていた。ジャック・オ・蘭たん、hacchi、すぎる、shu3ら4人によるゲーム実況グループ「ナポリの男たち」が、これまでにニコニコ生放送で投稿してきた作品を舞台化した本作。ナポリの男たちのメンバーが声の出演をしている他、青地洋、大野泰広、小槙まこ、田崎礼奈、ひのあらた、福島海太、本間健太、山下晃季、梨衣名、渡辺コウジらベテランから若手まで実力派の俳優が出演し、“名作”の数々を見事に舞台上に作り上げた。
ナポリの男たちがニコニコ生放送で配信してきた、「雄すぎ」「どす恋!」「スナックしゆみ」「ナポンヌのムスカリ」という人気作を、SUGARBOYの川尻恵太の総合演出、白鳥雄介の脚本・演出により舞台化した今回。OP、そして舞台の合間にはナポリの男たちのパペットが登場し、3次元になった作品の感想を思い思いに語ったり、稽古時の裏話を明かすなど、まるで生配信を聞いているかのような演出も織り交ぜられ、“ナポリの男たち”ファンにはたまらない仕上がりとなっている。
“ナポステ”の世界観は、幕が開く前の会場アナウンスから感じることが出来る。4人のゆるっとした独特のテンポで注意事項やお願いを案内、耳馴染みのある4人の声に、すでに着席していた観客も安心し笑みを浮かべてしまうだろう。そしてずっと流れていたBGMが大きくなると共に暗転し期待に胸を膨らませていると、明るくなった舞台の上にはキャストではなく、ナポリの男たちの“分身”であるパペット4体が登場。
舞台化の喜びやスクリーンに流れるキャスト陣の自己紹介VTR(日替わり)をわいわいと楽しそうに見てツッコミを入れていく、まさに“いつも通り”な雰囲気での幕開けに。他にもキャスト陣がカラフルな衣装に身をまとい、ナポリの男たちを紹介するナンバーが素敵な歌声とポップなダンスで披露され、“初見さん”にも優しいオープニングとなった。
華やかなオープニングが落ち着くとまずは、高槻村という田舎町を舞台に、友達がいない少年・蘭太郎(福島)と小動物・小すぎ(山下)の出会いから別れまでを描いた “日本ナポリばなし” 「雄すぎ」の物語が始まる。小すぎの衝撃的なビジュアルやM字開脚、甲高い「ナンデヤネン!」という鳴き声、修三おじさん(ひの)のきっつい博多弁、黄色いねじねじ、どのように舞台上で表現されるのか誰もが気になっていたものが目の前にドドンと差し出され、繊細な演出と肉付けされさらに深みが増した物語に心をかき乱され、初っ端からとめどない感動を与えてくれる。
次に、相撲好きな帰国子女の女子小学生・瓜咲らん(田崎)が、転校先の小学校に相撲部を作るために奮闘する「どす恋」を展開。月刊少女漫画誌「りぼん」でも漫画化された本作だが、らん、秀条まな(小槙)、天野八朗(梨衣名)ら女子小学生たちのキュートさが全編を通して発揮され、漫画同様のキラキラ感満載な世界観が見事に描写されていた。
そしてどんな風に舞台化されるのか一番気になっていた「スナックしゆみ」では、舞台オリジナルの物語が描かれ予期せぬ感動が。まず、梨衣名が扮したしゆみは、ビジュアルがパーフェクトなことに加え、shu3の熱血指導により見事に再現された艶のある話し方が「まさにここはスナックしゆみ!!」と感じさせてくれた。そして、ひのが演じる想像以上にダンディなすぎじぃとのやり取りに思わず笑みをこぼしてしまう。そんな2人が「スナックしゆみ」にまつわる思い出話をするのだが、この物語も面白くて切なくて、舞台ならでは世界観の広がりにワクワクが止まらない。
最後に、元はひとつの国だったが2つに引き裂かれた小国・ナポンヌとオートコリアの王子たちの友情と絆が描かれた“ミュージカル”「ナポンヌのムスカリ」もとめどない感動と涙と笑いが押し寄せてくる名作だった。中毒性の高い名曲「嗚呼、美しきナポンヌ」が、スグール(渡辺)、ハーチェス(本間)、シュー13世(ひの)の順に短いスパンで3回連続歌われるところも原作そのままに描かれており、初めて見た人でもすっかりメロディーと歌詞を覚えたであろう3回目には、ひのの素晴らしい歌声が会場を包み込んで心を震わせてくれた。
劇団四季出身で、『ライオンキング』ムファサ役、『美女と野獣』ガストン役などを演じてきたひのが本作に出演が決まったときから、きっとシュー王としてその歌声をいかんなく発揮してくれるだろうと勝手に期待していた筆者だが、その期待以上の仕上がりだった。歌い終わりのロングトーンは、まさに“圧巻”。さらにコミカルな演出も加わり、自然と拍手をしてしまっていた。また、「王の憂い」では、歌声に加え原作そのままの“2次元な動き”も見せ、にやにやが止まらない一幕となった。
そして、原作ではなかったフランス国王(大野)とシュー王のやり取りや、ハーチェスの妹の存在という舞台オリジナル要素と、スグール&ハーチェスの美しき友情が沢山の感動を与えてくれた。フランス国王によって、互いを殺し合うことになる運命になった2人の別れの場面は、思わず「ハーチェース!!!!」と叫びたくなるほど、心揺さぶられてしまう。公開ゲネプロでは見ることができなかったが、グッズとして出ている「ムスカリペンライト」が会場中で灯され、“ムスカリの花畑”が再現された中でそのラストシーンを見届ければ、没入感も感動も一入だろう。
最初から最後まで、ナポリの男たちによるゆるっとしたトークや名作4本がさまざまな緩急を生み出し、約2時間10分の公演が一瞬に感じるほどの楽しい時間を過ごすことができるナポリの男たちch特別回『舞台・ナポリの男たち』。7月19日に舞台上演が終わったが、千秋楽公演が7月26日(月)までイープラス「Streaming+」でアーカイブ配信されている。また、舞台化を記念して原作となった回がニコニコ生放送にて無料公開中のため、原作の魅力も知ることが出来る。新感覚の舞台体験をしたい方へぜひおすすめしたい一作だ。
(取材・文=エンタステージ編集部3号)
ナポリの男たち終演後コメント
おかげさまで「舞台・ナポリの男たち」全公演が無事に終了致しました。
関わって頂いた皆様、観劇してくださった皆様、本当にありがとうございました。
正直、この企画を動かし始めた時点では不安な気持ちでいっぱいでした。
勿論、面白くなるはずだという気持ちはあったのですが、それは「すべてがうまくいったパターン」であって、逆にとんでもなく大スベリしてしまう可能性も十分あると思っていました。なにせ、初めてのことだらけで全てが予測不能だったので。
そんな戦々恐々と進めていた舞台化企画ですが、はじめて稽古場に招かれて通し稽古を見せて頂いたとき、ちゃんと「すべてがうまくいったパターン」になったなぁ、と胸をなでおろすことができました。
ナポリのチャンネル放送を舞台化する、というほぼ無茶ぶりに近い企画を、これ以上ない形で仕上げることができたんじゃないかと思っています。
オタクのおじさん4人がインターネットの隅でジメジメ作り上げたものを、こんなにも華やかで壮大なものに味付けして頂いて、スタッフや役者の方々には頭が上がりません。
そして、そんなジメジメコンテンツが舞台化すると聞いて、困惑の気持ちでチケットを購入してくださった皆様もありがとうございました。
我々以上に皆様は舞台化に際して不安な気持ちを抱えておられたと思いますが、我々と同じく、観劇後は「よかった」と胸をなでおろすことができたのではないでしょうか。皆様のあの日の戸惑いを払拭する内容になっていたことを願っています。
舞台は終わりましたが、今後もナポリの男たちは面白そうなこと・やりたいことに色々チャレンジしていきたいと思っています。
いつか大失敗して炎上するその日まで、引き続きよろしくお願いします。
「ナポリの男たちch特別回『舞台・ナポリの男たち』」配信情報
配信スケジュール
2021年7月19日(月)公演終了後~7月26日(月)23:59
※7月26日(月)21:00までチケット購入可能。
【購入ページ】https://eplus.jp/napolimens-stage/
キャスト
【声の出演】
ナポリの男たち(録音音声)
【メインキャスト※五十音順】
青地洋、大野泰広、小槙まこ、田崎礼奈、ひのあらた、福島海太、本間健太、山下晃季、梨衣名、渡辺コウジ
【アンサンブル】
菅原健志、寒川祥吾、田中達也 、来夢
スタッフ
【原案/企画/監修】ナポリの男たち
【総合演出】川尻恵太
【脚本・演出】白鳥雄介
【音楽】遠藤ナオキ
【音楽協力】ナポリの男たち
【作曲】田中未希
【作曲協力】ナポリの男たち
ほか
【公式サイト】https://napolimen-stage.com/
【グッズ受注通販サイト】 https://special.movic.jp/shop/special/napolimen-stage/index.html
注文受付期間:2021年7月8日(木)12:00~ 8月1日(日)23:59