オフ・ブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』が東京・オルタナティブシアターで上演中。本作は2001年にシカゴで初演を迎えて以来、世界中で上演され続けている作品。今回は小林香が演出を手掛け、木村達成×村川絵梨、水田航生×昆夏美、平間壮一×花乃まりあのペアで上演している。
作詞・作曲・脚本を手掛けたジェイソン・ロバート・ブラウンの実体験に着想を得て作られたという本作は、2014年に映画化もされた“切ない大人のミュージカル”。日本で上演されるのは約11年ぶりとなる。今回は、小林が新演出で新しい風を吹き込む。本レポートでは、平間壮一×花乃まりあの初日を観劇した模様をお届けする。
登場するのは主人公の男女たった二人だけ。物語は、駆け出しの女優として奮闘するキャシーと新進気鋭の作家であるジェイミーが、恋に落ち、別れるまでの5年間を描く。キャシーの視点では結婚生活の終わりから出会いにさかのぼり、ジェイミーの視点では出会いから別れへと向かう。二人の物語が、異なる時系列で語られる斬新な描き方がされている。
唯一二人の時間軸が交わるのは、永遠の愛を誓い合った結婚式の瞬間のみ。互いを見つめ合いながら歌うナンバー「The Next Ten minutes」は、まさに愛の絶頂とも言えるシーンだろう。二人の幸せそうな表情に思わず笑みがこぼれる一方で、この愛にはいずれ別れが来るという切なさに胸が締め付けられる。二人にとっての5年間の愛が美しくもあり、儚くもあることを強く感じさせてくれた。
劇中では二人の5年間がほぼ歌で紡がれていく。小林の細やかな演出に加え、14曲のナンバーがピアノと弦楽器の美しい音楽によって彩られていた。二人の気持ちがダイレクトに表現された歌詞とメロディに圧倒され、あっという間に過ぎる90分。
コロコロ変わる表情と透き通る歌声が魅力的だった花乃は夢を追いかけ、自分の足で立とうとするも、上手くいかない自分にもどかしさを感じるキャシーを真っ直ぐに演じていた。特にステッキを持ちながら軽やかなステップで歌い踊うナンバー「A Summer in Ohio」では彼女の喜びが全身から溢れていて、目が離せない。
一方、ジェイミーを演じる平間は舞台の端から端を自在に動き回りながら、抑揚のある見事な歌声を披露。「The Shmuel Song」というナンバーからは、キャシーを誰よりも愛し、応援し、信じている彼の優しさが窺え、最終的に別れを決断したことも一種の優しさだと感じられる。キャシーと出会った時の陽気さと大喧嘩をした時の激しさのギャップにも心が動かされた。
夢を追いながら、今を一生懸命に生きる2人の姿に胸が熱くなりながら、誰もがきっと「何かがが違っていたら、すれ違うことはなかったはずなのに・・・」と思うはず。そんな二人の甘くも切ない5年間。
事前に行われた会見では、演出の小林がそれぞれのテイストについて「木村・村川ペアは非常にナイーブ、水田・昆ペアはパッション、平間・花乃ペアはジェントル」と表現していた。戯曲に綴られた言葉たちは、俳優の肉体を得てより雄弁に物語る。
オフ・ブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』は、7月18日(日)まで東京・オルタナティブシアターにて上演後、7月22日(木)から7月25日(日)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて公演を行う。
(執筆/エンタステージ「演劇ライター講座」第1回受講者、編集/エンタステージ編集部 1号)
オフ・ブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』公演情報
2021年6月28日(月)~7月18日(日) 東京・オルタナティブシアター
2021年7月22日(木)~7月25日(日) 大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
スタッフ・キャスト
【作詞・作曲・脚本】ジェイソン・ロバート・ブラウン
【演出】小林香
【訳詞】高橋亜子
【振付】桜木涼介
【音楽監督】大嵜慶子
【出演】木村達成×村川絵梨、平間壮一×花乃まりあ、水田航生×昆夏美
【公式サイト】http://www.last5years.net
【公式Twitter】@Last5Years_jp