2021年6月5日(土)に空想科学劇『Kappa』~芥川龍之介『河童』より~が東京・品川プリンスホテル ステラボールにて開幕した。初日当日に開幕直前取材と公開ゲネプロが行われ、織山尚大(少年忍者/ジャニーズJr.)、青木滉平(少年忍者/ジャニーズJr.)、木ノ本嶺浩、川口龍、市川しんぺー、コング桑田、鈴木勝秀(上演台本・演出)が登壇した。
原作は、芥川龍之介の奇抜な発想・批評力で時代を超えた普遍性を生み出し、日本近代文学の不朽の名作のひとつとされている『河童』。河童という架空の生き物に託し、当時の社会を痛烈に批判・風刺した小説で、河童の国ではあらゆることが人間社会とは正反対で、人間社会の「常識」が通用しない。それによって人間社会を逆照射し、「常識」「当たり前」に潜む「落とし穴」に焦点を当て表現している。本作は、その大正時代に発表された『河童』を、近未来風かつポップな形でアレンジした作品となっている。
開幕直前取材では、まず今作で初の舞台主演を務め、河童の国へ迷い込む第二十三号を演じる織山が「とにかく良いものも悪いものも出し切って、死ぬ気でやるという勢いでいきます!」と力強く意気込みを披露。続けて「でもやっぱり緊張します。何回やっても緊張することなんですけど、緊張しないというのが怖いので、逆にこの緊張を活かしていきます」と初日を迎えた心境を語った。
本作が初のジャニーズ公演以外の舞台出演で、河童であり漁師のバッグを演じる青木は、「このような舞台に初めて出させていただくので、不安が大きいです。ですが、事務所に入所してからずっと一緒の織山と2人で力を合わせ、また共演者や鈴木さんたち皆さんのアドバイスを頂いて千秋楽まで頑張ります」と意気込みを語った。
河童に追われ、数週間第二十三号の部屋に隠れる学生・ラップを演じる木ノ本は「今作のすべての内容を体現できるのかというのを稽古で積み重ねて作り上げてきて、とても素晴らしいものとしてできあがったと思っております。楽しい夢を見ている感じです」と胸の内を明かした。
詩人で、超人倶楽部の会員・トックを演じる川口は、「頑張りまーす!!」との一言のみの挨拶で登壇者を笑わせた。
資本主義者で傲慢だが人懐っこい性格の硝子会社社長・ゲエルを演じる市川は「僕もこのような舞台に出るのは初めてのような気がしていて、経験値でできない舞台です。でも、鈴木さんにお任せしつつ、昨日も楽屋で面白いと鈴木さんがおっしゃっていたので楽しみにしています」と期待を寄せた。
唯一、メスに追いかけられたことがない哲学者・マッグを演じるコングは「どうも!ジャニーズ・シニアのコング桑田です!」と挨拶して会場を笑いで包むと、「台本を頂いた時に、どうしたらいいのか分からないと思ったんですけど、稽古をしていて、この2人のためにも素敵なものができあがっていたんだなといろんなことが分かりました。そして今からも何か発見があるんだろうなと思わせる素敵な空想科学劇です。ビックリするぐらい面白いです、ビックリしています!」と本作の魅力を語った。
上演台本・演出の鈴木は「かなり完璧な準備ができたので、僕も十分に自信を持ってお届けすることができる作品ができました。開幕直前取材でも、みんないい表情で舞台に立っていると思うので、ぜひとも多くの人に観ていただけたらと思います」と自信をのぞかせた。原作との関係について、「原作はテキストとして使ったので、中身は相当違います。そして芥川の言葉を使って、芥川の頭の中ということをのぞき見るような風に作りました。原作をまるごとやっているわけではなく、芥川の頭の中にあった河童というものを描き出そうというところに注力しました」と解説。
物語は、精神病患者と認定されている第二十三号が物語ったものとして進められる。過去に、第二十三号は登山に行く。その途中で彼は河童に出会い、河童を追いかけているうちに河童の国に迷い込み、追いかけてきた河童バッグのほかに様々な河童と交流をしていくことで、河童社会の「常識」から、人間社会が逆照射され、「常識」「当たり前」に潜む「落とし穴」が浮かび上がってくるのだった・・・。
役どころについて、織山は「人間の世界と河童の世界の狭間を生きているんです。その中で、河童の常識に反発したり、受け入れるシーンがあったり、笑いがあったりという物語なので、初めての舞台ですけど、すごく楽しかったです」と解説しながら笑顔を見せた。また、河童という役どころについて、青木は「僕が演じるバッグは、周りの方には明かせないような悩みを抱えながら生きていて、そういったところも注目してください」と呼びかけた。
さらに劇中で、織山はダンス、青木はトランペットを披露する。2人が得意とするパフォーマンスについて、織山は「以前からダンスはやっていたんですけど、生での無音ダンスというのは初披露です。どういう反応が返ってくるか分からないですけど、僕的には新しい挑戦なので、ぜひ驚かせたいです」とアピール。青木は「シーンの中で、初めてアドリブでのトランペット演奏になります。今までは曲に合わせて吹いたりとか、曲の中の音を拾って自分で吹いたりとかはしていたんですが、今回は自分で考えて芝居の中でアドリブで吹くということに挑戦します。決まったフレーズではなくて、公演を重ねる段階でどんどん成長させていきたいです」と意気込んだ。
そんな2人について、コングが「稽古で2人の成長を見るのがたまらなく素敵でした。ほんまにお父さん目線でしたね(笑)」と微笑んだ。市川も2人について「伸びしろがすごいです。あとは稽古中のちょっとした瞬間に可愛い瞬間があるので、「可愛い!」と声を出さないようにがんばります(笑)」と絶賛した。
初の舞台主演を務める織山と、初のジャニーズ公演以外となる青木の初々しくも、熱く激しく演じきる姿だけでなく、織山のダンスと青木のトランペットというパフォーマンスを通して、キャラクターの心情をえぐるように映し出すような演出も注目となっている。
そんな2人と実力派俳優陣が相まり、インダストリアル・ロックの音楽と共にモノクロームで彩られる舞台セットの中で、芥川龍之介の晩年の名著『河童』が新たに『Kappa』として骨太な舞台作品として現代に蘇る。
想科学劇『Kappa』~芥川龍之介『河童』より~は、6月5日(土)から6月13日(日)まで東京・品川プリンスホテル ステラボール、6月25日(金)から6月27日(日)まで京都・ロームシアター京都サウスホールにて上演。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
空想科学劇『Kappa』~芥川龍之介『河童』より~ 公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2021年6月5日(土)~6月13日(日) 品川プリンスホテル ステラボール
【京都公演】2021年6月25日(金)~6月27日(日) ロームシアター京都サウスホール
スタッフ・キャスト
【原作】芥川龍之介
【上演台本・演出】鈴木勝秀
【出演】
第二十三号役(主人公):織山尚大(少年忍者/ジャニーズJr.)
バッグ役:青木滉平(少年忍者/ジャニーズJr.)
ラップ役:木ノ本嶺浩
トック役:川口龍
ゲエル役:市川しんぺー
マッグ役:コング桑田
【公式サイト】https://kappa-stage.com/
【公式Twitter】@Kappa_Stage