2020年10月7日(水)より東京・浅草九劇にて会話劇『YARNS』が上演される。初日前にはゲネプロと囲み会見が行われ、脚本・演出の鈴木勝秀と主演の佐藤アツヒロが登壇した。
鈴木は2014年に『ハナガタミ』(花筐)という 能楽を現代的に蘇らせる試みをして以来、「能楽と現代劇の融合」を模索し続け、“スズカツ能楽集”としてシリーズ化。『YARNS』は“スズカツ能楽集”のスタートとなる作品となっている。
「ヤーンズ」とは、英語で「紡ぎ糸」という意味で、さらに「作り話」「大げさなホラ話」といった意味も。 果たして患者の語る物語は「真実」なのか「作り話」なのか・・・。カウンセリングや告解を覗き見ているような不思議な雰囲気を創り上げ、人々の繊細な心情を描き出している。
出演は佐藤のほか、夢の中に出てくる男を鈴木裕樹、精神科医ランバシの息子のトオルを前田隆太朗と大山将司(W キャスト)、精神科医ランバシを中村まことと加納幸和(Wキャスト)が演じる。
コメント紹介
◆脚本・演出 鈴木勝秀
新型コロナの影響がなかったら、このようなかたちでの上演はなかった作品です。コロナ禍でなにかできないかと、前向きに考え創りました。舞台セットを見ていただくとわかりますが、普通のお芝居とは違い、ここまでセット全面を囲っている舞台はないと思います。時間をかけて実験を重ね創りあげました。セットの構造上、役者たちの声は舞台上の役者には肉声でほぼ聞こえず、マイクを通してセット上部のスピーカーから聞こえているんです。そして役者から客席側や、アクリル板の向こう側はほぼ見えず、役者同士も向かい合わない演出になっています。
今作は“聴いている人の姿勢”が大事な舞台なのですが、主演が「アツヒロでよかった」です。僕がやってほしいと思っていることを、感性で理解し無意識にやってくれている。アツヒロの“聴く人”の芝居がとても良いです。ぜひ劇場でご覧ください。
◆佐藤アツヒロ
劇場に入って初めてセットを見たときに、感染対策の舞台セットのすごさにびっくりしました。演出のスズカツ(鈴木勝秀)さんとは今回で6回目になります。この制限された中で、どうスズカツさんが演出するのか見ていただきたいです。稽古期間中、役者同士での会食はありませんが、稽古場で作品について語り合いながら、コミュニケーションもとってきました。コロナ禍のこの現状の中でも、演劇の可能性を広げた作品になったと思います。この、「YARNS」の世界にいれることの幸せを感じています。
色々な舞台がある中で、「YARNS」では芸術作品を作っているような気分です。絵のような、芸術作品のような、そんな舞台になっています。皆さんの心に残ってほしい作品です。スタッフ、演者で、出来る限りのことを一つ一つやってきました。感染対策をしっかりと行いながら、千穐楽を迎えたいです。がんばります!
あらすじ
高校の同級生との再婚を考えているスガヌマは、ある日から見知らぬ女の夢を見るようになる。この夢に苦しむスガヌマは、精神科医・ランバシの勧めにより、夢日記と箱庭療法を始めた。ランバシの実子であるトオル は激しいマザーコンプレックスで、時々カウンセリング・ルームに現れてはランバシを困らせる。
夢日記と箱庭療法によって、奇妙なスガヌマの夢の細部が次第に浮かび上がってくる。箱庭に表現された 砂浜の 風景は、スガヌマの幼少時に描かれた絵と同じものだった。これは前世の記憶かもしれないと疑うランバシと、にわかには信じられないスガヌマ・・・。そしてふたりは、さらにスガヌマの深層へと下りていく――。
『YARNS』は以下の日程で上演される。
【東京公演】10月7日(水)~11月8日(日) 浅草九劇
【大坂公演】11月21日(土)~11月23日(月・祝) 梅田芸術劇場
【公式サイト】http://g-atlas.jp/yarns/
(撮影/岩田えり)