板尾創路と松田凌のW主演舞台『聖なる怪物』レポート――目に見えない“何か”を問う

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板尾創路と松田凌のW主演舞台『聖なる怪物』レポート――目に見えない“何か”を問う

2023年3月10日(金)に東京・新国立劇場 小劇場にて舞台『聖なる怪物』が開幕した。本作は、新進気鋭の映画監督・甲斐さやかによるオリジナル脚本・初舞台演出作品で、「信仰心」と「神の存在」を問いかけ人間模様を描く。W主演には板尾創路松田凌。初日前には公開ゲネプロと出演者全員による会見が行われた。

教誨のため刑務所を訪れる山川神父役を板尾、自らを“神”と呼ぶ死刑囚の町月役を松田。敬虔な信者で娘が行方不明になったことを山川神父に相談する母親・真知子役に石田ひかり、行方不明になる娘・舞花役を莉子、認知症の旦那を山川神父に相談する主婦・加賀谷役を朝加真由美が演じる。

(以下、物語のあらすじに触れています)

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物語は、山川神父(板尾)の元に信者の加賀谷(朝加)が相談に来るとことから始まる。加賀谷の夫は認知症となり、たびたび近所でトラブルを起こしていた。加賀谷は咄嗟に夫をかばい、嘘をついたため大罪になるか相談をする。しかし山川は「夫を想う咄嗟の機転なので大丈夫」と優しく微笑むのだった。

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ある日の夜更け、敬虔な信者である真知子(石田)が焦ったように山川の元を訪れる。娘の舞花(莉子)が行方不明になったというのだ。取り乱しながらも祈りを捧げる真知子に、山川は必ず見つかると声をかける。安心した真知子は、微睡んだ時に見た白い装束を着た人たちの話をし、白い装束の人たちと舞花から「教会に行け」という声が聞こえたという。

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山川は、週に2、3回、教誨のため刑務所を訪れていた。死刑囚に宗教的アプローチから被害者への反省を促し、執行までの精神の安定を図るためだ。新たに教誨を始めることになったのは死刑囚の町月(松田)。山川はいつも通り反省を促すように話を進めるのだが、町月は「悔い改めるわけがない。僕は“神”なのだから」と答える。マイペースで奇妙な発言をする町月に山川は戸惑う。

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再び真知子が懺悔室を訪れるが、未だに舞花は見つかっていなかった。しかし、真知子は舞花がオンラインゲームを通じて「神」という人物と知り合いになっていたということを突き止めていた。舞花はその「神」にのめり込んでいたのだった。

その後、真知子はある裁判記録を持ってやってくる。それは自らを神と名乗り通行人を刺した犯罪で、被告は「もう肉体はいらない。死刑にしてほしい」と述べていた。その被告こそ、山川が教誨を行っている町月だった。真知子は町月が舞花の失踪に何か関わっているのではないかと考える。だが山川は既に刑務所にいた町月が舞花の失踪に関わることは難しいのではと信じることが出来ない。

板尾創路と松田凌のW主演舞台『聖なる怪物』レポート――目に見えない“何か”を問う

山川は、町月は自意識過剰で妄想癖がある引きこもりだと考えていた。教誨でも町月は山川を翻弄。そして町月の予言通りの出来事が起きていく。偶然なのか、奇跡なのか、町月に本当に“神”なのか、山川は葛藤する。不思議なことが続く中で、町月の死刑執行の日は刻一刻と近づいてくるが・・・。

作品全体が静かに緊張感を作り出し、底知れぬ恐ろしさを描いていく。サスペンスにも、時にホラーのようにも感じた。目に見えないものの存在とは、“神”なのか、“人の心”なのか、はたまた“そこにあるなにか”なのか、そのようなことを考えさせられる作品だ。

板尾創路と松田凌のW主演舞台『聖なる怪物』レポート――目に見えない“何か”を問う

本作が舞台演出初の甲斐だったが、舞台全体の視覚としての“絵”がとても美しかった。蝋燭や暗めの照明など、光と闇のコントラストが映える。

山川神父を演じる板尾は穏やかで、全てを包み込むよう静かに舞台上に存在していた。死刑囚・町月を演じる松田は、その静けさを打ち壊すような、予測できない爆発力を持つ。しかしストーリーが進むごとに板尾の山川の中に熱が生まれ、松田の町月の中には穏やかな凪が生まれるようにW主演の二人の化学反応が見事だった。

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また石田が子を想う母親の姿から時々危うさを見せる姿まで、凛とした空気をまとったまま演じあげる。本作が舞台初出演となる莉子は不思議な魅力を見せ、作品をよりミステリアスな世界へ誘う。そして俳優のキャリア長いが、舞台は本作が初出演となる朝加真由美がリアルでどこかチャーミングな主婦を演じる。演出脚本の甲斐も含め、“本作が舞台初挑戦者”が3名いるのも注目だ。

板尾創路と松田凌のW主演舞台『聖なる怪物』レポート――目に見えない“何か”を問う

初日前の囲み取材で板尾は「本番を重ね作品はもっと良くなる」と手ごたえを話した。板尾は主演や、舞台にずっと出続けたりする作品を断ることもあるそうだが、甲斐の書いた本作の脚本には“舞台に立ちたい”と感じさせる魅力があったと語った。

松田も甲斐の脚本を最初に読んだ時に惹かれたことを話した。自分が面白いと感じた心を突き止めるため稽古や甲斐との対話を深めたそうだ。そして目に見えない“愛”から“狂気”を近くに感じさせる甲斐の作品を唯一無二だと表した。

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板尾創路と松田凌のW主演舞台『聖なる怪物』レポート――目に見えない“何か”を問う

舞台『聖なる怪物』の作り出す緊張感、先の読めない展開は、ぜひ会場に足を運んで体感してもらいたい。本作はアフタートークの他に、映画では馴染みある観客の質問をその場で甲斐が回答する「ティーチイン」が開催されるとのこと。

板尾創路と松田凌のW主演舞台『聖なる怪物』レポート――目に見えない“何か”を問う

舞台『聖なる怪物』は、3月19日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて上演。上演時間は約100分(途中休憩なし)を予定。

(取材・文・撮影/一本柳歌織)

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舞台『聖なる怪物』公演情報

上演スケジュール・チケット

2023年3月10日(金)~3月19日(日) 新国立劇場 小劇場

スタッフ・キャスト

【作・演出】甲斐さやか

【出演】
板尾創路 松田凌/莉子 朝加真由美/石田ひかり

公式サイト

【公式サイト】https://thesacredmen.com
【公式Twitter】@thesacredmen




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