大竹しのぶが杉村春子の当たり役に初挑戦『女の一生』製作記者会見

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森本薫が文学座に書き下ろし、杉村春子が生涯に954回にわたって主人公を演じ続けたことでも知られる、名作『女の一生』の製作記者発表会見が9月30日(水)に行われ、大竹しのぶと高橋克実、風間杜夫、出演・演出の段田安則が出席した。

本作は、明治38年から昭和20年までを全5幕7場で綴り、主人公の布引けいが、拾われた家の長男の妻となって家業を守40年間を描く。激動の時代をたくましく生きる主人公・布引けいに、大竹が初めて挑む。

『女の一生』製作記者会見

演出を担当し、伸太郎役も務める段田は、本作が生まれた戦時中には空襲警報で舞台が中断しながらも公演を続けていたという歴史を振り返りつつ「戦後生まれの僕にとって、舞台に上がり、客席がお客さんでいっぱいになっていることが当たり前になっていましたが、今回、コロナの状況を考えた時に、舞台に立てるというのは当たり前ではないんだなと思っています。ですから、今回、命がけでやりたいと思います」と本作への強い思いを明かす。

今回の演出については「これだけの素晴らしいキャストさんがそろっています。私も含めてですが(笑)。なので、演出は何もしなくても勝手にやってくれるだろうと思って、そこに期待を込めてがんばりたいと思っています」と冗談めかして語った。

一方、大竹は「私たちは不自由な時代に突入したわけですが、それでも芝居をやりたいと思いました。稽古場では万全の対策をとって、できるだけの条件の中で、けいが生き生きと生きられるような芝居を作っていきたいと思います」と思いを寄せた。

『女の一生』製作記者会見

けいが密かに想いを寄せる堤家の次男・栄二を演じる高橋は、今回、19歳から59歳までを演じる。高橋は「今回、たくさんカツラをかぶらせていただきます」と一言。大竹から「克美さんが出ているってわからないで帰る人もいるかも」と突っ込まれると、高橋自身も「チラシを見た知り合いにも『どこにいるの?』って言われるんです。いいカツラをかぶらせていただきますので、終わった後には買い取りの打診もあるかも(笑)」と冗談を交えてコメントを寄せた。

『女の一生』製作記者会見

章介役の風間は、2009年に初演された新派公演『女の一生』にも出演し、次男・栄二を2度にわたって演じた経験がある。風間は「前回は一番年下でしたが、今回は一番年上の役になります」と説明すると「ただ、高橋克美の栄二はどうなんでしょうか。それが今回の成功の鍵を握ると思います」と高橋をからかって、会場を盛り上げた。

世界中を席巻している新型コロナウイルスの影響で、数々の舞台公演が中止や延期になった今年。本作に出演するキャストたちもそれぞれ、多大な影響を受けた。大竹は、2020年4月に開幕予定だった、主演舞台『桜の園』が開幕直前に中止に。

『女の一生』製作記者会見

大竹は当時を振り返り「あの時の喪失感や、こんなにもおもしろい芝居が見てもらえることなく、すべてが散っていってしまう悲しみは一生忘れられないものでした」と吐露。自粛期間中は「私はまだ息子が一緒に暮らしているので、日常をこなしているだけで終わってしまいました」と話し「でも、いつか(また舞台に立ちたい)と思って生きてはいました。令和という時代が、これからどこに向かっていくのかとても不安ですが、演劇は絶対に滅びないと信じてがんばってきた半年間でした」とその際の思いも明かした。

また、杉村春子の当たり役としても知られる、布引けいを演じることへの思いを聞かれると「『欲望という名の電車』でも杉村さんが演じた役をやらせていただきましたが、どちらも私は実際には観ていなくて、どんなお芝居をしていたのか全くわからないので、あまり意識しないで、私なりのけいを演じなくちゃいけないなと思っています。『あの杉村春子がやった布引けいね』と、言われるのはわかっているので、多少のプレッシャーはありますが、大丈夫です」と笑顔を見せた。

なお、今回の公演は、政府がイベント人数制限基準を緩和した後の公演となるが、松竹株式会社 代表取締役副社長の安孫子正は、客席数は50パーセント内とすることを明言。新橋演舞場は総席数は1428席だが、最大679席の販売とし、これまで同様、花道の脇や最前列は空席にする。また、マスクや検温など、これまで同様のコロナ対策を行うと説明した。

『女の一生』製作記者会見

舞台『女の一生』は11月2日(月)から11月26日(木)まで、東京・新橋演舞場にて上演。

【公式サイト】https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_20201031/

(取材・文・撮影/嶋田真己)

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