2020年11月2日(月)東京・新橋演舞場にて『女の一生』が開幕する。初日前には囲み会見が行われ、出演者である大竹しのぶ、高橋克実、段田安則、宮澤エマ、林翔太、銀粉蝶、風間杜夫が登壇した。
本作は昭和20年4月、終戦直前に森本薫が文学座に書き下ろし、杉村春子が初演した不朽の名作。物語は、明治38年(1905)から昭和20年(1945)までを全五幕七場で綴り、天涯孤独の少女であった布引けいが、拾われた家の長男の妻となって家業を守る40年間を描いている。
杉村の当たり役とされ、その生涯に947回にわたって演じられた”布引けい”。大竹は「杉村春子さんが演じ続けたいと思われたという意味が本当にわかります。それぐらい素晴らしいホンで、自分のセリフだけではなく、みんなのセリフに本当にいい言葉があるので、それを伝えたいと思います。やるしか無いな、という感じです。プレッシャーよりも、良いお芝居を伝えられるという喜びが大きいです」と、本役を演じることへの思いを語った。
また作品について「夫婦であり続けること、人生を続ける意味がなるほどなと思うので、本当に良い芝居だと思います。それぞれがみんな人生を抱えていて、それが素敵です。泣かされているセリフばかりです」とアピール。
高橋は、見どころを「3パターンはあるカツラ!」とコメントとし笑いを取りつつ「演出の段田 さんはダメ出しという言葉がお嫌いで『褒め出しをするんだ』とおっしゃっていましたが、今日まで1ヶ月の間でダメ出しの無い日がありませんでした(笑)。ダメ出しの量は群を抜いて一位だと思いますので、その自負はあります。明日初日で、それをすべてクリアするために、全集中で乗り切りたいと思います」と稽古期間を振り返った。
演出も担当する段田は「緊張や責任感の重さで身が潰れるような、しゃべる気力も無いような状態です」と、この作品に全身全霊をかけて挑んだことを明かし「文学座の劇団の宝物というような作品ができることにワクワクしています」とコメント。
そんな段田を風間は「段田さんは難しい役を兼ねているんですが、ご自分のお芝居も完璧に見せてくださいましたし、その合間に演出するのですから、大変な仕事だろうなと。ひたすら感心しております。本当に見事に役者と演出家をやり通しました」と称賛した。
銀粉蝶は「このお話をいただくまで『女の一生』は読んだことがありませんでしたが、読んでみてすぐにおもしろいとはなかなか分からなかったんです。でも戦時中に上演されたことや、改訂が重ねられたことが分かってくるうちに、実際の台本よりも分厚い、台本の裏に何百冊もの台本が積み重なったように感じました。そのプレッシャーに負けないようにがんばりたいと思います」と意気込みを語った。
「毎日が勉強の日々でした」と振り返ったのは宮澤。「こうやって舞台に立ってお客様の前でお芝居ができるのが本当に嬉しく、初日を前にした緊張とドキドキがいっぱいです」と初日直前の心境を明かした。
林も「こんなに豪華な皆さまと一緒に出させていただけるというのが夢のようで、僕にとって財産になるなと思います」とコメント。続けて「ジャニーズ魂をこの舞台にぶつけられるように精一杯がんばります」と意気込んだ。
【公演情報】
2020年11月2日(月)~11月26日(木) 新橋演舞場
【出演】大竹しのぶ、高橋克実、段田安則、宮澤エマ、多岐川華子、服部容子、森本健介、林翔太、銀粉蝶、風間杜夫
【作】森本薫
【補綴】戌井市郎
【演出】段田安則
【あらすじ】
明治38年(1905年)日露戦争の後―日本がようやく近代的な資本主義国の姿を整え、同時にその動向が世界の国々と絶ちがたく結び合い、影響し始めた時代。戦災孤児の境涯にあった布引けい(大竹しのぶ)が、不思議な縁から拾われて堤家の人となったのは、そんな頃である。
清国との貿易で一家を成した堤家は、その当主はすでに亡く、後を継ぐべき息子たちはまだ若く、妻のしず(銀粉蝶)が義弟・章介(風間杜夫)に助けられながら、困難な時代の一日一日を処していた。甲斐甲斐しい働きぶりを見せるけいは、しずに大変重宝がられた。同時にけいと同様に闊達な気性の次男・栄二(高橋克実)とも気性が合い、お互いにほのかな恋心を抱くようになった。
そのけいの思慕とは裏腹に、しずは跡取りであるべき長男・伸太郎(段田安則)の気弱な性格を気がかりに思い、気丈なけいを嫁に迎えて、堤家を支えてもらう事を望んだ。しずの恩義に抗しきれなかったけいは、伸太郎の妻となった。
けいは正真正銘堤家の人となり、しずに代わって家の柱となっていく。担い切れぬほどの重みに耐えながら、けいはその「女の一生」を生きるのである。
時は流れて昭和20年・・・。二つの大戦を経る激動の時代を生きて、今、焼け跡の廃墟に佇むけいの前に、栄二が再び戻ってきた。過ぎ去った月日の、激しさと華やかさを秘めて、二人はしみじみと語り合うのであった・・・。