2023年2月から3月にかけて東京、大阪、愛知で上演されるミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』。風間杜夫、濱田めぐみ、新納慎也、矢崎広、渡辺大輔、永田崇人、エリアンナ、青柳塁斗ら出演の注目作だが、約1か月後に日本初上演を控えた某日、 稽古場で本作を象徴するシーンのお披露目が行われた。
2007年に公開された映画「迷子の警察音楽隊」(カンヌ国際映画祭ある視点部門・国際批評家連盟賞、ジュネス賞、一目惚れ賞/東京国際映画祭・最優秀作品賞)を原作に、ミュージカル『ペテン師と詐欺師』の作曲家デヴィッド・ヤズベックが作曲と作詞を手掛けた本作は、歴史的に対峙してきたエジプトとイスラエル二国の国民同士が国境を越えて心を通わせるという、人間の本来あるべき姿を描いたメッセージが時勢に即して人々の心に刺さり、2018年トニー賞の作品賞を含む10部門を独占した。
物語はエジプトのアレクサンドリア警察音楽隊が演奏旅行でイスラエルの空港に到着したところから始まる。迎えのバスが来ず、目的地であるPétah Tikvah(ペタハ・ティクヴァ)へ自力で向かうこととなるが、辿り着いた先は名前のよく似たBet Hatikvah(ベイト・ハティクヴァ)という全く別の辺境の町で――というストーリーが展開される。
稽古場で最初に披露されたナンバーは、ベイト・ハティクヴァの住人たちによる「♪待ってる/Waiting」。退屈な町で暮らす彼らが、それでも”何か”を待っている様子が歌われている。そこに警察音楽隊一行が到着し、町の食堂に立ち寄り隊長を務めるトゥフィーク(風間)が演奏会場への道を尋ねる。しかし食堂の女主人ディナ(濱田)が、「この町にそんな場所はない」と返す。
エジプトとイスラエルではそれぞれアラビア語とヘブライ語を使用するため、警察音楽隊と住人たちのやり取りは共通言語である英語で行われる。本公演ではカタコトの日本語を使用して表現されており、たどたどしくも必死なやり取りに、思わず笑いがこみ上げる。
続いてディナ、食堂の常連客・イツィク(矢崎広)、食堂の店員・パピ(永田崇人)の3人でのナンバー「♪何にもない町 / Welcome to Nowhere」が披露された。それぞれのコミカルな表現も秀逸だ。
行先を間違えたことを知ったトゥフィークは激高しカーレド(新納慎也)を攻め立てるが、行き場もない彼らはディナの計らいにより、一晩泊めてもらうことになる。
幼き日々を懐かしむ、ディナのソロナンバー「♪オマー・シャリフ /Omar Sharif」は、濱田の甘く柔らかみも帯びた歌声と、曲調も相まって稽古場全体が中東の香りに包まれるようであった。この曲は既に濱田の歌唱映像も先行して公開されているが、シーンの中で歌われることで、歌が表す情感が倍増されている。
カフェに妻子を連れた、サミー(渡辺大輔)がやって来る。彼とディナはただならぬ関係にあり、先ほどまでの空気が一変し、緊張感漂う中、ヘブライ語での言い争いが行われる。言葉は分からないが、俳優陣の表現によって内容が伝わってくる。
場面転換の際に警察音楽隊の演奏が挟まれる。太田惠資(バイオリン)、梅津和時(マルチリード)、星 衛(チェロ)、常味裕司(ウード)、立岩潤三(ダルブッカ)による演奏は、中東の雰囲気がありながらもどこか聞き馴染みが良く、何よりオンステージによって演奏されることでの迫力は、他作品では味わえない魅力の一つとなっている。中央に設置された回転盆と組み合わせた演奏の演出も非常に効果的であった。
おかしみと上質な雰囲気が漂う大人のミュージカル。どこか愛さずにはいられない人々の姿、そのやり取りには笑いどころが随所にあり、森新太郎の細やかな演出が光っていて、本番が待ち遠しくなる披露となった。
ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』は、東京公演が2023年2月7日(火)から2月23日(木・祝)まで日生劇場、大阪公演が3月6日(月)から3月8日(水)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、愛知公演が3月11日(土)から3月12日(日)まで刈谷市総合文化センター大ホールにて上演予定。東京公演チケットは好評一般発売中。上演時間は100分(休憩なし)を予定しているという。
また、1月27日(金)にNHK「あさイチ」に新納慎也はプレミアムトークゲストとして出演することも分かった。昨年大ヒットした大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の話や、ブロードウェイで実際に観て出演を熱望した程のミュージカル『バンズ・ヴィジット』の魅力を最新の稽古場映像と共に語るという。
(撮影:渡部孝弘)
ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』公演情報
スケジュール
【東京公演】2023年2月7日(火)~2月23日(木・祝)日生劇場
【大阪公演】2023年3月6日(月)~3月8日(水)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【愛知公演】2023年3月11日(土)~3月12日(日)刈谷市総合文化センター大ホール
スタッフ・キャスト
【原作】エラン・コリリンによる映画脚本
【音楽・作詞】デヴィッド・ヤズベック
【台本】イタマール・モーゼス
【翻訳】常田景子
【訳詞】高橋亜子
【演出】森新太郎
【出演】
風間杜夫:トゥフィーク(指揮者)
濱田めぐみ:ディナ
新納慎也:カーレド(トランペット)
矢崎 広:イツィク
渡辺大輔:サミー
永田崇人:パピ
エリアンナ:イリス
青柳塁斗:ツェルゲル
中平良夫:シモン(クラリネット)
こがけん:電話男
岸 祐二:アヴラム
辰巳智秋:警備員
山崎 薫:ジュリア
高田実那:アナ
友部柚里:サミーの妻
太田惠資:カマール(バイオリン)
梅津和時:警察音楽隊(マルチリード)
星 衛:警察音楽隊(チェロ)
常味裕司:警察音楽隊(ウード)
立岩潤三:警察音楽隊(ダルブッカ)
竹内大樹(スウィング)
若泉亮(スウィング)
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/bandsvisit2023/
【公式Twitter】 https://twitter.com/bvjp_tweet