荒牧慶彦×岡本貴也、1万2000文字を50分で駆け抜けた「ひとりしばい」レポート

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講談社とOffice ENDLESSが共同プロジェクトとして「ひとりしばい」が、2020年6月27日(土)・6月28日(日)・7月4日(土)に配信された。第1弾には、荒牧慶彦が登場。本番前に行われた公開ゲネプロ(オンライン)より、その一部をレポートする。

最大限「NO!!3密」を意識した上で、「キャスト・スタッフらに活動の場を作りたい!」「舞台に立つキャストの姿をお客様に観てもらいたい!」という想いから始まった本プロジェクト。稽古はオンラインミーティングアプリ「Zoom」などを活用、観劇は配信課金システム「ファン⇄キャス」、会場は池袋の新LIVEエンターテインメント複合施設ビル「Mixalive TOKYO」(ミクサライブ東京)の「Hall Mixa」を使用して行われる。

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(以下、冒頭のあらすじに触れています)

荒牧が挑むのは、岡本貴也が作・演出を手掛けた『断-Dan-』。冒頭、政府・マスメディアに向けた“山田太郎”なる人物からあるメールが読み上げられる。その内容は、ウイルスに蝕まれた日本を憂い、要求が飲まれなければ行動を起こすという声明文だった。

ニシドウスバル(荒枚)は、道中に落とし物の財布を拾う。ある場所に急いで行かなければならなかった彼は、相手の連絡先を財布の中身から割り出し、コンタクトを取ることに・・・。

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劇場で行う、一人芝居。荒牧が臨んだ「ひとりしばい」は、驚きに溢れていた。“劇場”をそう使うとは!その発想はなかった。そして、カメラを通して行う配信だからこそできる演出の数々。なんと、カメラは12台稼働しており、さながら映画。しかし、刻々と同じ時を刻む時計の針と、荒牧の額に徐々に滲む汗が“ライブ”であることを雄弁に物語る。

岡本は、劇場が閉鎖され“リモート演劇”という新しい形が生まれる今、「演劇」と「テレビ」「映画」との違いとは、と考えることが多かったという。それ故に、境界線を曖昧にしてしまおうという発想で作られたのが、この『断』だった。

時勢を取り込み、巧みに張り巡らせた伏線を集約しカタルシスへと導く岡本の構成力はさすが。ニューノーマルを求められる今だからこそ生まれる “表現”は、まだまだ未知数であることを感じさせた。

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そもそも、本企画は俳優から脚本・演出家を“逆指名”するスタイルが取られているそうだ。一人芝居初挑戦の荒牧がぜひ一緒にと依頼したのが、以前、音楽朗読劇『ヘブンズ・レコード~青空篇~』で一緒に芝居を作った岡本だった。「想像の5倍くらいの台詞量(なんと1万2,000文字)があってびっくりしました(笑)」と言い、終演後ぐったりの荒牧だったが、50分を駆け抜けたその表情は達成感に溢れていた。

やはり、俳優が舞台に立つのは、届けたい観客がそこにいるから。物語終盤の、荒牧の叫びはぐっとくる。人と人が分断されてしまっている今だから生まれたこの企画。芝居がしたいと渇望する俳優と思考し模索する演出家、それを支えるスタッフ陣たちの試行錯誤は、演劇の新たな可能性を切り開いていくのかもしれない。

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『ひとりしばい』第2弾6月28日(日)は小澤廉×演出・川本成、第3弾7月4日(土)は北村諒×演出・西田大輔という組み合わせの作品が配信される。各回17:00から。チケットは、各公演3,000円。なお、チケット購入者に限り、終演後から1週間の見逃し配信あり。

【公式サイト】http://officeendless.com/sp/hitorishibai
【公式Twitter】@hitoshiba2020

(C) 舞台「ひとりしばい」製作委員会

(取材・文/エンタステージ編集部 1号、写真/オフィシャル提供)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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