世界のオペラの功績を表彰する「International Opera Awards 2020」新作部門ノミネート作品『紫苑物語』が、新国立劇場が行っている「巣ごもりシアター」として配信されることが決定した。
『紫苑物語』(1956 年発表)は昭和を代表する作家・石川淳が平安王朝期に舞台をとって書いた小説で、歌の家に生まれた国司の宗頼が歌を捨て弓の道を見出し、己の鏡ともいうべき仏師・平太と出会い、その仏を射ると岩山もろとも崩落するという物語。
いにしえの日本を舞台としながらも、世界へ発信するオペラの題材にうってつけの今日性と普遍性を持った本作。新作オペラという困難な企画ながら、公演会場には世界初演に立ち会おうと連日満場の観客が集まり、緊張感みなぎるドラマに熱狂した客席からスタンディングオベーションが続いた。
日本を代表する現代音楽の作曲家・西村朗、西村と長く共同作業をしている詩人の佐々木幹郎(台本)、三島由紀夫の最後の弟子として昭和期の文化の真っただ中を生き、渡欧後はピーター・ブルックらと世界で活躍、東西の芸術に通じた俳優、演出家として活躍する笈田ヨシとの激しい共同作業によりオペラ『紫苑物語』が誕生。
クリエイターチームには、キリアンやフォーサイスのデザインを経て欧州各地の舞台美術で活躍するトム・シェンク、『ライオンキング』でトニー賞を受賞し、世界の一流劇場の話題作を多数手掛けているリチャード・ハドソン、写真家出身で世界的アートイベントのライティングで活躍する照明家ルッツ・デッペが集った。
作曲した西村自ら「猛烈なアリア」「ヴィルトゥオージティ(達人的技巧)を限界まで見せる」と述べた『紫苑物語』は、コロラトゥーラ(速く装飾的な旋律)はもちろん、複雑な跳躍、巻き舌や子音を強調した発語等、最高難度の声楽テクニックが必要とされる難作品。
そんな本作に、ドイツ・キール歌劇場専属歌手として活躍する高田智宏、美声と感情表現に定評あるソプラノ臼木あい、日本を代表するメゾソプラノとして躍進中の清水華澄、日本のトップ・テノールの村上敏明ら日本を代表する歌手たちが集結した。
◆オペラ 『紫苑物語』新国立劇場創作委嘱作品・世界初演(2019年2月24日上演)
【配信日程】5月22日(金)15:00~5月29日(金)14:00
【視聴アドレス】https://www.nntt.jac.go.jp/opera/sugomori-asters/
【ゲネプロダイジェスト映像】https://youtu.be/GEr0fYTJqW0
【原作】石川 淳
【台本】佐々木幹郎
【作曲】西村朗
【指揮】大野和士
【演出】笈田ヨシ
【出演】髙田智宏、大沼 徹、清水華澄、臼木あい、村上敏明、河野克典、小山陽二郎ほか
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京都交響楽団
(撮影/寺司正彦)