2017年に日本初演され、第25回読売演劇大賞 優秀演出家賞、第10回小田島雄志・翻訳戯曲賞などを受賞した『チック』が2019年に再演されることが明らかになった。
本作はドイツ国内でミリオンセラーを誇るドイツ児童文学賞受賞小説「Tschick」を舞台化した作品。14歳の冴えない少年マイクとロシア移民の転校生チックの二人の少年が、夏休みに無断で借りた車で旅をするというロード・ムービーさながらの物語である。
2011年にドイツで初演、翌シーズンではドイツ国内で最も上演された舞台作品となり、現在でもなお上演の度にチケット完売が続いている。また2016年には同原作の映画版がドイツにて封切られ、2017年9月には日本でも公開されている。
チックとマイクを演じるのは、初演時にピュアでありながら“出口のない”思春期まっただ中の少年を演じた柄本時生と篠山輝信。また、チックとマイクを取り巻く風変わりな登場人物たちには土井ケイト、大鷹明良が引き続き出演、そしてマイクの母親役に、新たに那須佐代子を迎えることが決定。また初演同様、翻訳・演出はドイツ出身の演出家である小山ゆうなが担当する。
【あらすじ】
マイク(篠山輝信)は14歳、ベルリンのギムナジウムに通う8年生。アルコール依存症の母(那須佐代子)と、その母と喧嘩ばかりで家庭を顧みない父(大鷹明良)、そして気になる女の子だけでなく誰からも見向きもされない、あだ名もつけられない退屈な学校生活・・・“出口なし”の日常に嫌気がさしている。
ある日そんな生活に大きな風穴をあける、転校生チック(柄本時生)がやってくる。彼はロシアからの移民らしく、風変りで得体のしれない雰囲気をかもしだしている。夏休みが始まり、いつにも増して最悪な気分のマイクの元に、チックは突然車を乗りつけてきた。
― どっか連れて行こうか? 乗れよ ―
チックいわく“借りた”というオンボロなラーダ・ニーヴァ(ロシアの SUV)に乗り込み、チックのおじいさんが住んでいるというワラキア(ルーマニアの地方、またはドイツ語で「僻地」という意味)を目指し、二人だけの旅が始まる。
見知らぬ大家族の家で味わう見たことも聞いたこともないけど“めちゃめちゃ美味い”料理、ゴミ山で出会う格好は汚いけど利発な少女イザ(土井ケイト)、いきなり銃撃してきたあとに昔話をするフリッケじいさん・・・旅先で出会う、一癖も二癖もある人たち。チックとマイクは、旅の中で、これまで見えていた世界とは違う新しい景色と出会っていく。
『チック』は2019年に上演される。
(舞台写真撮影/細野晋司)