井上ひさし没後10年目のメモリアルイヤーとなる2019年秋に、井上氏の最後の戯曲である『組曲虐殺』の上演が決定した。本作は、プロレタリア文学の旗手・小林多喜二の生涯を、彼を取り巻く愛すべき登場人物たちとの日々を中心に描いた戯曲。一人の内気な青年が、 なぜ29歳4ヶ月で死に至らなくてはならなかったのか。現代社会を、明るさと笑いと涙に包みつつ、鋭く照射する音楽劇だ。
演出を手掛けるのは栗山民也。出演者は、小林多喜二役に2009年の初演、2012年の再演でも同役を演じた井上芳雄、多喜二の恋人・瀧子役には上白石萌音が決定した。そして、高畑淳子、山本龍二、神野三鈴ら初演から本作を支えてきた俳優陣と世界的ピアニストの小曽根真に、演劇ユニット「*pnish*」の土屋佑壱が加わり、激動の時代に翻弄された優しくも切ない人間模様を描き出す。
こまつ座&ホリプロ公演『組曲虐殺』は2019年10月に東京・天王洲銀河劇場にて上演される。その後、11月に福岡・大阪ほか、地方公演数ヶ所を予定。
【あらすじ】
時は昭和5年の5月下旬から、昭和8年2月下旬までの2年9ヶ月。
幼い頃から、貧しい人々が苦しむ姿を見てきた小林多喜二(井上)は、言葉の力で社会を変えようと発起し、プロレタリア文学の旗手となる。だが、そんな多喜二は特高警察に目をつけられ、 蟹工船」をはじめ彼の作品はひどい検閲を受けるだけでなく、治安維持法違反で逮捕されるなど、追い詰められていく。そんな多喜二を心配し、姉の佐藤チマ(高畑)や恋人の田口瀧子(上白石)はことあるごとに、時には変装をしてまで、彼を訪ねていく。瀧子は、活動に没頭する多喜二との関係が進展しないことがもどかしく、また彼の同志で身の回りの世話をしている伊藤ふじ子(神野)の存在に複雑な思いを抱いている。言論統制が激化する中、潜伏先を変えながら執筆を続ける多喜二に対し、刑事の古橋鉄雄(山本)や山本正(土屋)は、彼の人柄に共感しながらも職務をまっとうしようと手を尽くす。命を脅かされる状況の中でも、多喜二の信念は決して揺るがず、彼を取り巻く人たちは、明るく力強く生きていた。
そしてついにその日は訪れる・・・。
多喜二「僕たち人間はだれでも皆、生まれながらにパンに対する権利を持っている。けれども僕たちが現にパンを持っていないのは、誰かがパンをくすねていくからだ。それでは、そのくすねている連中の手口を、言葉の力ではっきりさせよう・・・(中略)僕の思想に、人殺し道具の出る幕はありません」
【こまつ座HP】http://www.komatsuza.co.jp/index.html
【ホリプロHP】http://hpot.jp/stage/kumikyoku
【公式Twitter】@KUMIKYOKU2019