2019年3月から4月にかけ東京と大阪で、岩松了の新作公演『空ばかり見ていた』が、森田剛主演で上演されることが決定した。岩松と森田の顔合わせはこれが初。岩松は、かねてより森田にラブコールを送り続けていたと言い、「いつか一緒に作品を」という約束が実り、初タッグが実現した。
“日本のチェーホフ”と呼ばれ、人間の内部で無意識に動く感情を、説明的な台詞を排し、物語の核を隠しながらもリアルに表現する岩松が、今回描くのは、反政府軍として政治活動をしている兵士、その恋人、彼女の兄であり尊敬する軍の首領、そのまわりの人々。ある事件をきっかけに、強固に見えた繋がりが意に反して兵士を追い込むこととなってゆく。
森田が演じるのは、反政府軍の兵士。これは、森田自身に充て書きされた役だという。物語の設定や登場人物の関係性などから「これまでの作品の中で一番難しい戯曲になる気がしている」という岩松の世界観を、森田はどのように体現するのか。
共演には、勝地涼、平岩紙、筒井真理子、宮下今日子、新名基浩、大友律、高橋里恩、三村和敬、豊原功補が集結する。
発表にあたり、岩松と森田からコメントが届いている。
◆岩松了(作・演出)
政治的なつながりや思想的な絆を経由した恋愛話を通じ、「恋愛」がそれだけでは成立しないおもしろさを描きたいと思います。また、そこで生み出される緊張関係をよりくっきりさせるため、内戦というシビアな状況を選びました。森田くんとは以前から「いつかやろうね」と約束していたんです。僕は余計に動かない俳優、暗い印象の俳優が好きです。森田くんにもどこか影を感じる。その暗さが、今度の芝居をつくる上での、探りどころにもなるのかなと思っています。
◆森田剛(主演)
岩松さんとは、以前からご一緒させていただきたいと思っていたのですが、今回このタイミングで実現することとなり大変嬉しく思っています。稽古は、何回も同じシーンを繰り返し行うような厳しい方だと伺っておりますので、今から稽古に入るのが楽しみですし、岩松さんの描かれる作品の中で求められる役柄を精一杯演じきりたいと思います。
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019『空ばかり見ていた』は、2019年3月9日(土)から3月31日(日)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて、4月5日(金)から4月10日(水)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。チケットは、1月14日(月・祝)より一般発売開始。
【あらすじ】
そこは反政府軍のアジト。首領の吉田満(村上)が、女性兵士になりたいという妹のリン(平岩)を説得している。ある日リンが暴漢に襲われ、武器調達のために隣国に派遣されていたリンの恋人・多岐川秋生(森田)は身を案じ慌ただしく帰国する。傷手を負いながらもリンは、愛する恋人と兄が自分を見守ってくれていることに幸福を感じ、回復していった。
結婚を意識しながらも、命の保証のない日々の中、一歩踏み切れない秋生と、そんな秋生の考えを察して兵士として共に戦いたいと思うリン。だが、絶対的な信頼を置いていた満に対して不信を覚える出来事が起こる。満への感情と連動するようにリンにも疎ましさを感じ始め、自分自身の気持ちに戸惑う秋生。
同じ頃、政府軍のスパイが組織に潜り込んでいたことにより、秋生たちは窮地に立たされることになり・・・。
※高橋里恩の「高」は「はしごだか」が正式表記