2017年12月17日(日)に、東京・EXシアター六本木にてPARCO Produce『ラヴ・レターズ LOVE LETTERS』~青井陽治追悼公演~が上演された。1990年から青井陽治と共に歩んできた本作。今回は、今回は9月に逝去した翻訳家、演出家・青井陽治の追悼公演として、藤田俊太郎が新たに演出を手掛け、尾上右近と松井玲奈の出演で上演された。公演当日に行われた囲み会見には、尾上、松井、藤田が登壇。
26年間で469回の演出を行った青井の後を継いだ藤田は「新しいものが加わっていくと思いますが、尊敬を込めて、青井先生の言葉や、どういう演出をなさっていたのかを正しく俳優に伝えて、一緒に作っていきたいです」と心境を明かした。
初共演となる尾上と松井。お互いの印象を、尾上は「本当に清潔感がある方。僕は歌舞伎以外の仕事の経験が少ないですが、そんな僕を受け止めてくれる器のある方でもあります」とたたえると、松井は「(清潔感があるのは衣装が)白いからじゃないですか(笑)?」と謙遜し、会場の笑いを誘った。
そんな松井は、尾上について「お会いしたらすごくオーラが大きいというか、どこまでも手が伸びてきてグッと包み込まれるような感覚ですね」と答えた。その印象について記者から、尾上が『スーパー歌舞伎II ワンピース』で代役を務めていることに合わせたコメントかと質問されると、尾上も「それは僕も思いました(笑)」と笑い、松井は「そういう意味ではないです(笑)」と笑顔を見せた。
青井が望んだこのキャスティングについて、藤田は「俳優として今、若さの中にありながら、いい意味で良い時期にあるのでそれが出ればいいと思います。舞台自体はアメリカの2人の男女が50年間綴った手紙を読み合うだけのシンプルな物語。舞台セットを凝ったり、色々なことをやろうと思えばできるはずだけど、そういう必要がまったくないんです。今のお二人の清々しさと、みずみずしさが全部出ていると思います」と二人を演出した印象を明かした。
リーディングドラマというシンプルな舞台について、尾上は「読んでいると感情が入りづらく、感情を優先すると読んでいる意味が無くなってしまい、その中間を取ることが難しかったです」と稽古を振り返り、松井も「朗読劇の初挑戦だったので、どこまで感情を入れていいのか、どう読んでいいのかすごく悩みました」と同調した。
初日にして千秋楽という本作ならではの公演日程。尾上は「今までやってきたこと、これからのこと、色々と考えながら自分に出来る全てのことを自然体で、あるがままにこの作品の力を借りながら演じられたらと思います」と意気込みを語った。松井は「1回きりだからこそ、感覚を研ぎ澄まし、お客さんと一緒にこの物語がどの方向に向かって結末を迎えるのかを楽しんでいけるのではと思います。二人の空気感や会場の空気を存分に楽しんで臨みたいです」と意気込んでいた。
さらにリハーサルも1回、本番も1回という本作について、藤田は「もともと、原作者A.R.ガーニーさんの『お互いがあたかもそこで初めて感じることが多いように』という指示なんです。演出的には言葉の背景やそこに意味が込められるかというのをアドバイスしました」と意図を明かす。
リハーサルが1回だけということについて、尾上は「二人で作り上げる空気というのは当日にしか感じられないことなので、それを最高点まで持って行くためのルールなんだと良いように受け止めて、不安ですが、楽しみでもあります」と答え、松井は「この作品は読む人で正解の意味合いが変わってくると思うので、だからこそある意味ぶっつけ本番に近いスタイルが有効かと思います」と語っていた。
PARCO Produce『ラヴ・レターズ LOVE LETTERS』~青井陽治追悼公演~は東京・EX THEATER ROPPONGI(EXシアター六本木)にて12月17日(日)に上演。※公演終了
(取材・文・舞台写真以外撮影/櫻井宏充)