2017年3月には、人気ドラマ『東京タラレバ娘』が終了し、アラサー女性の心臓がグサグサえぐられることはなくなった・・・と思いきや、タラレバ娘よりも強烈なさらなる刺客がやってきた!2017年4月5日(水)に東京・新宿シアターサンモールで幕をあける『野良女』。恥じらいを捨て、ホンネをぶつけ合い、満身創痍で闘うアラサー女5人の物語。その稽古場を取材した。
出演は、原作に感銘を受けた5人のアラサー美人女優・・・佐津川愛美、芹那、沢井美優、深谷美歩、菊地美香。さらに演出には30歳の稲葉賀恵(文学座)、脚本は33歳のオノマリコと、アラサーの女性で固められた布陣だ。
第一幕、オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)の担当する音楽に合わせ、5人の女性が次々。佐津川愛美がマイク片手に2年間彼氏のいないセックスレスのもやもやを訴える。彼女らは行きつけの大衆居酒屋に集まり、女子会を開いている。それぞれ派遣社員、親のコネ入社、生保の営業、正社員と、立場もキャラクターも異なるが、収入や生活レベルはほぼ似た者同士。出てくる話は「25歳を過ぎれば普通に結婚できるものだと思っていたのに、何故、自分はできないのか」ということ。徐々に浮き彫りになる、上司との不仲、不倫、二股、DV・・・闘い続け、もがき続け、とにかく一生懸命であり続ける5人。その宿命はいずこ?必要以上に闘い続ける女性たちは、衝撃かつ感涙必須の結末へと向かっていく。
毎晩居酒屋に集まって、泡盛片手に管を巻く彼女たちのガールズトークは、可憐さも恥じらいもない下ネタのオンパレード。ここまで露骨な話をするのかアラサー女性は?とは思うが、彼らの抱える悩みや切望はリアルだ。
会見でキャストたちは、いくつかの“刺さる台詞”を挙げた。
「30歳の女なんて生きてるだけでえらいんだよ」
「(若い子は)ぜんぶ持ちやがって。私も昔はそうだった」
「かわいこぶってんじゃねーよ、ばーか」
稽古で彼女たちはその台詞を声高に叫び、ストレートに投げつける。その姿は痛々しくもあり、しかし、まっすぐに闘っている女の意地を見せつける。
原作者の宮木あや子が稽古場に来た際、作品のキャッチフレーズを考えたそうだ。
「強そうに見える女ほど弱いとか、弱そうに見える女ほど強いとか、そういうのマジどうでもいいんですけど。」
他人の評価を気にしながら、そんなのどうでもいいとぶった切って生きていきたい、そんなエールのようにも聞こえる。ちなみに宮木あや子は40歳。石原さとみ主演のTVドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ)の原作者でもあり、アラサー女性たちの先を行く先輩だ。
5人のアラサー女優と、演出・脚本をはじめとした多くの女性スタッフが入り乱れる現場。演技が中断されると、演出の稲葉がひとつひとつ指示を出していく。「もっと動きをおおげさに」「その台詞はゆっくりと聞かせて」。なぜそうした方がいいのか。その演出意図の説明は明確だ。キャストは真剣に耳を傾け、自分の中に落とし込んでいく。
女性たちの声が飛び交う稽古場に、数人だけ男性がいる。その一人が、男性キャストの池田倫太朗(文学座)。物語に登場する男性5役をすべて一人で演じる。しかし、ふつうに男性を演じるのではない。
冒頭、佐津川演じる鑓水(やりみず)が思いを寄せる(2年ぶりにヤリたいと狙いをつける)男性・鈴木を演じる際は、マネキンとして登場する。ほかの男性を演じる際は、また異なった表現方法を用いるそうだ。さまざまな方法で「男」を見せることで、女の物語に出てくる男という存在を表現し、観客を唸らせる狙いだ。
登場人物たちは、お酒片手に赤裸々に悩みや欲望をさらけ出していく。キャスト5人も同じく、芝居だけでなくプライベートについて「ケンカしたら(暴露されるかもしれず)大変!」と言うほど、お互いに喋り合っているそうだ。その空気感が、舞台上にも反映されると期待できる。菊地は「闘っている私たち女優やキャラクターに、女性だけでなく男性も弱さやもろさを感じていただける作品」と言う。それを受けて深谷も「とにかく熱い芝居にしたい。綺麗事じゃなくて、醜い姿やもがいている姿を見せたい」と意気込んだ。
アラサー女子の魅力について沢井は、「経験値がある。辛いことも嬉しいことも経験し、無くしたものも得たものも多い。それらの狭間にいる年齢」だと説明した。佐津川は「10代はがんばり過ぎていたけれど、今回の作品では、皆がそれぞれの良いところを見つけてくれて、絶対否定しないでいてくれる。楽しくてびっくりしています」と、同世代で作品作りに臨む喜びを語った。
幸せになるまで死ねません!と奮闘するアラサー女性たちの姿を描く本作。前半はポップだが、進むにつれ奥深くまでえぐっていく。しかし、「最後には元気をもらえる作品になるんじゃないかな」と佐津川は締めくくり、晴れやかな笑顔を見せていた。
『野良女』は、4月5日(水)から4月9日(日)まで東京・新宿シアターサンモールにて、上演される。なお、アフタートークの開催も決定した。ゲストの詳細は、以下のとおり。
4月5日(水)19:00公演 ゲスト:渋江譲二
4月6日(木)19:00公演 ゲスト:伊藤陽佑
4月7日(金)19:00公演 ゲスト:あたそ
(取材・文・撮影/河野桃子)