浦井健治、宮野真守らが古代エジプトを翔る!『王家の紋章』観劇レポート!

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(提供:東宝演劇部)

8月5日(金)に帝国劇場で初日の幕を開けたミュージカル『王家の紋章』。40年続く少女漫画を世界で初めて舞台化した意欲作だ。

エジプトで考古学を学ぶアメリカ人のキャロル(新妻聖子)は、古代エジプトの王・メンフィス(浦井健治)の墓を発見し、その棺を開けたことから、メンフィスの異母姉であり、祭祀でもあるアイシス(濱田めぐみ)の呪術によって古代エジプトへと連れ去られる。そこではメンフィスの戴冠式の準備が進んでいるのだが、アイシスは近隣国・ヒッタイトから親善目的でやってきた王女・ミタムン(愛加あゆ)がメンフィスに恋心を抱く様子が気に入らない。そんな中、ひょんなことから出会うメンフィスとキャロル。メンフィスは金色の髪、白い肌、現代の英知を備えるキャロルを王宮に連れ帰り、次第に彼女に惹かれていく。

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(提供:東宝演劇部)

ある時、アイシスの怒りに触れたミタムンは幽閉されてしまう。エジプト側は、ミタムンが帰国したとヒッタイトに伝えるのだが、その言葉に納得がいかないヒッタイトの王子・イズミル(宮野真守)は、腹心の部下・ルカ(矢田悠祐)をエジプトに潜入させ、ミタムンの行方を探らせる。その後、ミタムンの死を知ったイズミルは、キャロルを奪い、エジプトに復讐することを決意するのだが・・・。

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(提供:東宝演劇部)

本作が帝劇での初主演作となるメンフィス役の浦井健治は「王」として育った自らの価値観がキャロルの登場によって揺らぐ姿や、初めて女性を「物」や「身内」としてではなく「ひとりの人間」として愛する心情の変化を丁寧に見せてくる。古代エジプト王の衣裳の着こなしやメイクの再現度も完璧で、原作ファンの心もガッチリ掴んだのではないだろうか。殺陣で裾の長いマントを華麗に扱い、舞うように戦う姿に目を奪われた。

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(提供:東宝演劇部)

原作ファンを公言するキャロル役の新妻聖子は、突然古代エジプトにタイムスリップするという状況に悲観し過ぎず、何とかその世界で生き抜こうとするキュートでパワフルなヒロインを熱演。周囲の人たちに感謝しながら、知識や知恵でエジプトの人々を救う姿はまさに“ナイルの娘”である。

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(提供:東宝演劇部)

本作で念願の帝劇デビューを飾ったイズミル役の宮野真守。一幕の出演時間は短いが、二幕はイズミルの思いや衝動が軸となって物語が動いていく。開幕一週間前のインタビューで、宮野自身が語っていた通り、イズミルの行動の基盤が、愛する妹・ミタムンの復讐であるという点がしっかり伝わり、作品に深みを与えている。180cmを超える身長で白を基調とした衣裳を美しく着こなす姿、また情感たっぷりに歌う様子に触れ、ミュージカル界に新星が現れたと確信した。

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(提供:東宝演劇部)

そして本作で圧倒的な存在感を見せるのが、アイシス役の濱田めぐみである。幕開きから現代と古代とを繋ぐ役割で登場し、一気に観客を古代エジプトの世界へと誘いながら、一幕のストーリーを牽引していく力は流石の一言。王女、そして祭祀としてエジプトという強大な国を背負う“強さ”と、異母弟であるメンフィスに叶わぬ思いを抱く“切なさ”とを共存させた役の構築に胸打たれる。舞台上では常にメンフィスの背中を追い、彼の一挙手一投足を見つめる姿が儚く愛おしい。

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(提供:東宝演劇部)

また、宰相としてメンフィス、アイシス、さらにエジプトという国を冷静に見つめるイムホテップ役・山口祐一郎の、場の空気を瞬時に変える佇まいや劇場中を包み込む歌声、イズミル王子に忠誠を誓い、エジプトに潜入するルカ役・矢田悠祐の熱く繊細な演技、アイシスに叶わぬ恋心を抱きながら、国の軍事を取り仕切るミヌーエ将軍役の川口竜也らの活躍も心に残る。

荻田浩一氏の演出は、ストーリーの全体像をしっかり押さえながら、キャラクター個々の心情をより丁寧に描いているように感じた。

反発、真逆の価値観の歩み寄りを経て、次第に心を通わせていくメンフィスとキャロル・・・そんな彼らに対を成す形で存在し、決して成就しない想いを抱き苦悩し続けるアイシスとイズミル。観客それぞれが感情移入できるキャラクターが存在するのも、本作の魅力のひとつだろう。

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(提供:東宝演劇部)

『エリザベート』『モーツァルト!』の作曲家としても馴染み深いシルヴェスター・リーヴァイ氏が紡ぐ美しくドラマティックな旋律と、王道・少女漫画のロマンティックな世界観とが相まって、観客の心を酔わせるミュージカル『王家の紋章』。早くも来年春の再演が決定した本作のさらなる深化を期待したい。

ミュージカル『王家の紋章』は、8月27日(土)まで帝国劇場にて上演中。

(文中のキャストは筆者観劇時のもの。キャロルは宮澤佐江、イズミルは平方元基がWキャストとして出演している)

(取材・文 上村由紀子)

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