シアタークリエ開場10周年を飾るシリーズの1作目として、ブロードウェイの鬼才マイケル・メイヤーの演出によりシェイクスピアの傑作喜劇『お気に召すまま』が上演されることが決定した。『Spring Awakening/春のめざめ』で2007年トニー賞最優秀演出賞を受賞した世界的演出家マイケル・メイヤー。幾度となく舞台の魔法で観客の想像を超えた作品を生み出してきた彼が、ついに日本の観客のために作品を手掛けることになる。
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今回のマイケル・メイヤー版『お気に召すまま』では、1600年のイギリスで生まれた本作の設定が1967年のアメリカに置き換えられる。“アーデンの森”は、サンフランシスコで開催され10万人のヒッピーが集まったロックフェスティバル「Summer of Love」に、宮廷は現代のNY上流社会に設定を変え、マイケルのポップな世界と『お気に召すまま』のロマンティックな世界が融合し、今までにない、新たなシェイクスピアが生まれるという。
そして今回、ミュージカルの演出をはじめ演劇や映画監督として幅広く活躍するメイヤー本人が、本作の製作のために来日し、作品について語ってくれた。
まず、『お気に召すまま』の時代設定を1967年代へ置き換えた理由について、メイヤーは「以前からSUMMER OF LOVEの時代にしようというアイデアがありました。そして、8年前に来日した際に、東宝からシェイクスピアを演出しないかと言われて、そのアイデアを思い出したんです。60年代の社会的に不安定な時代のヒッピー・ムーブメントと、対極のニクソン大統領のようなオリバーやフレデリック公爵との対比が面白いんじゃないかと。そして、宮殿から森へ移行する設定は東から西へアメリカを渡るというアイデアが面白いと感じたんです。そこから服装もキチンとしたドレスのようなヴィクトリアン風の服装から、パンツや、ジーンズ、ベルボトムなどに変わっていくようなね」と説明。
『お気に召すまま』という作品が時代を超えて共感を得ている理由についても、彼は「やはりロザリンドの存在ですね。シェイクスピアが生んだキャラクターの中でも一番のキャラクターかもしれません。非常にポジティブな性格で、自己中心的なところがなくて、とても人間味にあふれています。彼女が男装するという設定によって、男女ともに彼女に共感できる魅力があるのではと思います。彼女の存在によって、普遍的にすべての人にポジティブなメッセージが伝えられると思っています」と考えを披露した。
そして、本作の音楽を担当するのはトニー賞やピューリッツァー賞などに輝いた経歴を持つトム・キット。その点についても「『お気に召すまま』はシェイクスピアの作品の中でも歌が沢山出てくる作品です。彼自身もシェイクスピアを手掛けていますし、彼と一緒に仕事をするのがとても好きなんです。彼はアイデアというものをキチンと尊重しながら、それでいて自分自身の個性を出すのにとても長けているんですよ」と、『アメリカン・イディオット』などで共に作品を作り上げてきた盟友について語った。
本作がメイヤーにとって日本初演出となるが、そのことについては「英語と日本語の言語体系の違いによって、日本語としてどのように伝えられるかということが、一番大変だと考えています。シェイクスピアに対して、英語では言葉を摘んでいますが、日本語となると一つ一つの音になるので、流れやリズムをどう演出していくかが、これから考えていかないといけないですね。その点は実験的になりますが、楽しみな点でもあります」と語った。
今なお世界中で上演され、共感を得ているシェイクスピアの『お気に召すまま』。まだ製作は初期の段階だが、メイヤーは「非常にポジティブなメッセージをお伝えできる作品になると思っています」と語っており、彼らしいポップで唯一無二な『お気に召すまま』が生まれる予感がする。開場10周年を迎えるシアタークリエという劇場で、マイケル・メイヤーが『お気に召すまま』を日本初演出する。きっと日本の演劇界に新たな一ページが刻まれることになるだろう。
舞台『お気に召すまま』は2017年1月に日比谷・シアタークリエにて上演される。