2017年1月4日(水)より東京・シアタークリエで上演される『お気に召すまま』。ブロードウェイの鬼才マイケル・メイヤーが演出を手がけるほか、元宝塚星組トップスター・柚希礼音が主演を務めることで話題となっている本作の合同取材会が11月下旬に都内の稽古場で行われ、柚希とメイヤーの二人が揃って登壇した。
お互いの魅力について聞かれると、メイヤーは柚希に対し「とても才能豊かであり、面白く、そしてとても勇気がある女性です。私が要求していることは、言葉も、文化的にも難しいものですし、彼女にとって新領域のことだと思います。そこへ積極的にチャレンジしてくれる姿勢には頭が下がる思いです」と賞賛の言葉を送った。一方、柚希は「アイディアと計算力が混ざり合った方。動きや衣装の一つひとつについて、“なぜそのようにするのか”ということを厳しく言ってくださるので、とてもありがたいです。出会えて幸せだなと思います」と笑顔で応えた。
本作では、宝塚時代に男役トップスターを務めた柚希が、主人公ロザリンドとして“男装をした女の子”という役柄を演じる。このことについて「初めてお会いした時、男役だけを演じてこられたと聞いて、すごいと思いました。通常、ロザリンドを演じる女優にとって男の子を演じるのは大変なことなのですが、チエさん(柚希の愛称)に関してはその心配がありませんでした。なので、その部分に費やす時間をセリフや言葉遊びに充てることができたのは作品にとってとてもプラスになっていると思います」と語った。
これに続き「劇中でドレスを着ているシーンを見るのを楽しみにしています」というメイヤーのコメントを受けて、柚希は「初めて女の子としてお芝居をするので“どのように歩くか”といったところも、ワンピースの衣装にも戸惑いましたが、マイケルさんの演出がすごく可愛いくて、刺激を受けながら真似したりしています。ただ、長年培った男役をお見せするのではなく、ロザリンドには身分を隠しながら男であることを見せるという意図があるので、そこをしっかりやりたい」と、役作りへの意識を明かした。
また、日本のキャストとスタッフについて聞かれたメイヤーは、「本当に素晴らしいカンパニーが集まってくれたと思います。俳優陣に関しては、生身の人間が生身の人間の物語を演じるという部分はどこの国でも変わらないのだと実感しました。スタッフの方たちも素晴らしい。非常にプロ意識が高く、私がお願いしたことをすぐに実現してくれます」と感謝を示した。そして、そんな日本人キャストたちについて「自分が育ってきたところのお芝居の仕方と全然違うお芝居をされる方がいっぱいいるので、すごく刺激的で、毎日勉強になります」と語った柚希。さらに「そんな素晴らしい方々に囲まれていますが、ロザリンドは知恵に溢れたキャラクターなので、みなさんよりさらにいけるように頑張りたいと思います」と意気込んだ。
今回の上演の中では、通訳の部分が一番苦労していると明かしたメイヤー。「キャストには日本語に訳されたシェイクスピアの台本があり、私は英語で書かれたシェイクスピアの台本を持っています。そして、それを読むときには、それぞれが自分の言葉でセリフを理解します。そうして自分の中で理解して発した言葉を通訳してもらうのですが、それは元の文章とは違う形のものなので、お互いにズレが生じます。そのズレを少しずつ確認していき、ようやく一つの言葉に落ちつかせる。その作業を、シェイクスピアの膨大な言葉一つひとつに対して行わなければなりません」と、聞いているだけで気が遠くなるような過程を経ながら、繊細に作品を作り上げている様子を語ってくれた。
最後には、「本当に楽しみながら、活き活きとロザリンドとして生きたいなと思います。シェイクスピアと聞くとハードルが高く感じられるかもしれませんが、難しい部分も表現によってこんなにわかりやすくなるんだということを私自身も感じているので、楽しみにいらしてください」と柚希から、そして「この『お気に召すまま』という作品は最高のラブコメディだと思っています。日本のお客様には、今自分が稽古場で感じている喜びを少しでも感じていただけたら、というのが私の願いです。1月4日には、“サマー・オブ・ラブ”に匹敵するような巨大なパーティをシアタークリエで行えればいいなと思います」とメイヤーから、それぞれにファンへ向けたメッセージが贈られ、取材会は締めくくられた。
『お気に召すまま』は、2017年1月4日(水)から2月4日(土)まで東京・シアタークリエで上演される。その後、大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ、香川・レクザムホール、福岡・キャナルシティ劇場の3会場でも上演予定。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)