2015年12月8日(火)に、東京・紀伊國屋ホールにて『熱海殺人事件』が開幕した。本作は、1970年から1980年初頭にかけて演劇界に大ブームを巻き起こした、つかこうへいの代表作。1974年に岸田國士戯曲賞を受賞し、今なお繰り返し上演され続けている名作である。今回の初日前に囲み会見が行われ、出演者の風間杜夫、平田満、愛原実花、中尾明慶が登壇し初日前の心境を語った。
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部長刑事・木村伝兵衛役を演じる風間と、富山から来た新任刑事・熊田役を演じる平田は、つかの演出のもと、1980年から1982年まで本作に出演したゴールデンコンビ。今回が、33年ぶりの同役での共演となる。風間は「冒頭から台詞を交わしただけで、33年前に戻れましたね。身体にしみついているんでしょうね」と実に感慨深げ。平田は、当時の役柄そのまま新米刑事を演じることについて「33年前、すでに新任と言ったら笑いがきたので…」と笑った。
婦人警官・片桐ハナ子役で、今回初めて実の父の作品で演じることになった愛原は、「幼い頃から(この作品を)見ていました。当時はちょっと理解できないことや難しいことがあったんですが、今回台本を読み込んで、稽古を通して理解できるようになったところがたくさんありました」と明かし、「初めて父の作品をやるということで、命がけでがんばらなくてはという想いでお稽古を重ねてきました。その成果を、舞台の上でお見せできたらいいなと思っています」と強い気持ちを見せた。
そして、犯人・大山金太郎役のため頭を丸めた中尾は、「僕自身はまだ何も完成していないので、どこかで役を自分のものとして掴めるよう、全力をぶつけていきたいです」と真剣な表情を浮かべた。そんな力の入る中尾に、風間が「どんどん大山になってきた。お客さんの前でやることで、芝居が変わるんですよね」と声をかける一幕も。
風間は、つか亡き後の4、5年前から“熱海をやりたい”と言い続けていたそうで、「嬉しい話で、演出がいのうえ(ひでのり)さん、平田くんも参加してくれて、活きのいい明慶くんがいて、しかもつかさんのお嬢さんと一緒にやれるなんて。こんな奇跡的なことはないと、ワクワクして参加しました」と語る。平田も「いのうえさんが、現代風やいのうえさん流を加えつつ、つかさんの演出を尊重して昔そのままで。最初、ちょっと震えましたね」と噛みしめていた。平田が「これ、ひとりだったら浮いていると思うんです」と言うと、「平田くんがいてくれてよかった」と風間が答え、顔を見合わせて笑った。
この『熱海殺人事件』は、つかが毎年4月に“地方から東京に出てきた学生にとって、この芝居が都会生活の一歩になってくれれば”という想いで紀伊國屋ホールで上演し続け、連日立ち見でいっぱいになっていたという。今回の公演も、前売りは地方公演も含めすべて完売。ただ、当日券が若干数用意されているとのことなので、風間&平田が体現する伝説を、つかの愛娘である愛原、若手実力派俳優の中尾が新たに刻む歴史を、ぜひ目撃してほしい。
『熱海殺人事件』は、2015年12月8日(火)から12月26日(土)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演。その後、8ヶ所で地方公演が行われる。日程は下記の通り。
2016年
1月6日(水)・1月7日(木) 愛知・とよはし芸術劇場
1月9日(土)・1月10日(日) 兵庫・兵庫芸術劇場
1月16日(土)・1月17日(日) 福岡・北九州芸術劇場
1月20日(水) 宮城・電力ホール
1月23日(土) 北海道・音更文化ホール
1月29日(金)・1月30日(土) 北海道・道新ホール
2月2日(火) 岩手・森岡劇場
2月5日(金)・2月6日(土) 新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場