劇団四季『コーラスライン』観劇レポート!~これは私たちの物語~

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2015年9月19日(土)に自由劇場(東京・浜松町)で開幕した劇団四季のミュージカル『コーラスライン』。1979年の初演以来、35年以上に渡って上演され、今回で公演回数2000回を達成した四季の人気レパートリー作品だ。

2年振りに自由劇場に帰って来た本作の模様をレポートしよう。

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ニューヨーク・ブロードウェイのとある劇場。ここにダンサーたちが集められ、新作ミュージカルの出演者オーディションが行われている。最終選考に残ったのは17人。舞台上に引かれた一本の白いラインに並んだダンサーたちに演出家・ザックは語りかける。「履歴書に書いていないことを話してもらおう、君たちがどんな人間なのか」。

最初は戸惑いながらも自らのエピソードを語り出すダンサーたち。明るく話を進める者もいれば、自らの心の傷を告白する者もいる。審査が進む中、あるダンサーに起きたアクシデントを目の当たりにしたザックはさらに厳しい問いを発する。「もし、今日を最後に踊れなくなったらどうする?」・・・ダンサーたちの答えとは?そして出演者を決める最終決定が彼らに下される時が来た。

まず「I Hope I Get It」のナンバーが流れ、ダンサーたちが踊り出すシーンで胸が高まる。「この仕事がどうか、取れますように!」と必死で祈りながらオーディションに参加する彼らの眼差しは真剣だ。そしてラインに並んだ17人の最終候補者たち。そこには20歳の青年もいれば30代のベテランもいる。

演出家・ザックを演じる荒川務は厳しさの中に優しさとある種の弱さが見え隠れする演技で魅せる。元は自分もコーラスダンサーの出身であり、そこから今の位置に這い上がって来た足跡がしっかり見える役作りだ。以前、ザックと恋人関係にあったキャシー役の井上佳奈は、プライドを持ってオーディションに臨んでいるのが良く分かる造形。「もう一度踊るチャンスが欲しい」と鏡の前で一人踊る井上キャシーの全身からは大きなエネルギーがみなぎる。二人がクリエイター同士、そして元恋人という関係性をスイッチしながら互いの心情をぶつけ合う場面は特に胸に響いた。

劇団四季『コーラスライン』

『コーラスライン』は数あるミュージカルの中でも非常に演劇的要素が強い作品だ。ダンスはもちろん、歌の技術も要求されるし、何より“その瞬間を生きているダンサー”として役のすべてを舞台上で見せなければいけない。一人一人のキャラクターが立っていなければ、観客はダンサーたちに感情移入をする事が出来ない・・・演じる側にとっては本当に苛酷なミュージカルなのだ。

過去にザックと交流があったことをうかがわせるベテランダンサーのシーラ(恒川愛)からは、一見ふてぶてしく映る態度の裏にある不安や一種の諦観、弱さが垣間見えたし、自分が“変わり者”であることを受け容れて生きているボビー(竹内一樹)やグレッグ(塚田拓也)と、他者との違いについてセンシティブに悩むポール(斎藤洋一郎)とのある種の対比、まだダンサーとして本当の壁にぶつかっていないようにも見えるマイク(高橋伊久磨)やマーク(大村真佑)、方法は違うがコンプレックスをポジティブにはね返してショービズの世界で成功しようとするヴァル(三平果歩)やディアナ(町真理子)・・・舞台上には本当に魅力的なダンサーたちが「生きて」いた。

この作品が繰り返し上演されても、その度に私たちの胸を打つのは、舞台上に居る俳優たちが「自分たちの物語」として非常にリアルに演じているのと、客席でダンサーたちの生き様を観る観客が、その都度誰かの姿に自分を重ね、自らの過去と未来について今一度考える機会を得るからかもしれない。

(文中のキャストは筆者観劇時のもの)

◆劇団四季ミュージカル『コーラスライン』
11月23日(月・祝)まで自由劇場(東京・浜松町)にて上演

撮影:下坂敦俊
文:上村由紀子

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