2024年5月30日に東京・サンシャイン劇場にてブロードウェイミュージカル『クラスアクト』が開幕。初日当日に公開ゲネプロと囲み取材が行われ、筧利夫、紫吹淳、高橋由美子、吉田要士、ブラザートムが登壇した。
本作は、1970年代のニューヨークエンターテイメントの原点を描き出し、『コーラスライン』の作詞家であるエド・クレバンの成功と挫折、そして取り巻く登場人物たちの感動の実話をベースとしたミュージカル作品。2001年に初めてブロードウェイで上演され、トニー賞6部門にもノミネートされた。
主人公エド役を筧、エドのよき理解者ソフィ役には紫吹。このほか、エドの最後の恋人ルーシー役に高橋、『コーラスライン』の作曲家マーヴィン役に吉田、ミュージカル教室のリーマン先生役にブラザートムなどが出演する。
ブロードウェイミュージカル『クラスアクト』は5月30日(木)から6月2日(日)まで東京・サンシャイン劇場での上演を皮切りに、全国を巡演する。
囲み取材レポート:6年ぶりのミュージカル出演に「意識が毎日とんでいる」
囲み取材では、まず筧が「千秋楽、そして全国公演が終わるまで、もうこの扮装を外さないようにしようと思っています。寝る時も、風呂にも入らず、ずっとこの格好で過ごそうかと思っています」と笑顔で挨拶すると、筧の言葉を受けて、女医の衣装で登壇した紫吹も「私も右に倣えで、千秋楽まで白衣ですかね(笑)」と会場の笑いを誘った。
6年ぶりとなるミュージカル出演について、筧は「この大ミュージカルスターを従えて、ストレート舞台俳優がほとんどの歌を歌わせていただいているという前代未聞のミュージカルでございます」とコメントすると、「毎日、途中で意識がとんでいるんです。もう何を喋っているのかもわからないし、何を歌っているのかもわからない(笑)。セリフと歌が交互に来るということで、ミュージカル畑じゃない僕が音符どおりに言葉を出すというのは、すごく特殊なことなんです。つかこうへいさんという大御所の先生に鍛え上げられた僕の根本と、こういうアメリカのミュージカルが交わるとこんなことになるんですね。それで、意識が毎日とんでいるんです」と冗談交じりに笑顔を見せた。
以前に本作でオファーされていたが、一度は断っていたという筧は「こんなとんでもない役はやっちゃいけないと思ってお断りしたんですよ。そうしたら2年後にまたオファーが来たんです。それで、タロット占いの人に占ってもらって、やることにしたんです。これは本当ですよ」とまさかの裏話を語ると、登壇者たちも驚いた表情を見せた。
役を演じる上で意識していることを尋ねられた紫吹は、「変なこと言うと、『クラスアクト』=ハイレグとかになっちゃうので、それはちょっと避けたいなと思っているんですけれども(笑)」と、2幕の『コーラスライン』を女性陣が全員で踊るシーンでのセクシーな衣装について言及しつつ、「エドの人生になくてはならない人ということで、10代から50代ちょっと前まで演じ分けているんですけど、エドとどう関わっていくかということを大切にやりたいなと思っています。『クラスアクト』の持つ実話の力、そしてまた音楽の素晴らしい力、そしてハイレグちょっとみたいな感じで(笑)、頑張りたいなと思います」と再びセクシーな衣装の話題も絡めて意気込みを披露。
さら紫吹は、がんを研究する女医という役柄に関して「個人的には宝塚時代のトップの時にお医者さんで、ほぼほぼショートカットで眼鏡かけている役があって。その時とダブらないようにスカート履いているんですけれども、女医らしく筧さんに寄り添いたいと思います」と再び意気込んだ。
高橋は注目してほしいポイントとして、「個人的には鳥の精になる役があって、この作品の中で何も考えずにただ楽しく演じることができているんです。本役よりそっちというのはいけないんですけどね(笑)。両方素晴らしいですけど、やっぱり本役の方は組み立てて、色々緻密な計算の中でやっていかなきゃいけないですし、のほほんと好き放題やるってことができないので、鳥の精はもうすこぶる好きなようにやらせていただいているので、楽しくやらせていただきました」と笑顔でアピールした。
実在の人物を演じることについて、吉田は「マーヴィン・ハムリッシュが作った曲があまりにも有名な曲ばかりで、その印象を崩さないようにしつつ、でもやっぱり自分のオリジナリティーというか、そういったものも出しながらやっていきたいなとは思っています」と意気込み、「『クラスアクト』はエドが作曲した曲で、『コーラスライン』はマーヴィン・ハムリッシュが作曲をした曲ということで、世界的にも有名な曲ばっかりですし、この綺麗なメロディーを2人で紡いでいくことができたらなと思っております」と期待を寄せた。
「文化庁 劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業」にも関わり、18歳以下の子供が無料で鑑賞できる席も用意されている本作。ブラザートムは「子供たちがたくさん来たりする公演もあるんですけど、どの人がどの役かというのが伝わりにくいかもしれないじゃないですか。そのためにYouTubeで“クラスアクト”と検索してもらうと、分かりやすい動画があるので、予習していただくとすごくわかりやすくなるようになっています」と呼びかけた。
改めて、本作の魅力について、筧は「やっぱり総力戦のところですかね。僕がたくさん歌っていると言いますけど、結局みんなと一緒にやっているんです。かなり高齢者ミュージカルなんですけど(笑)」と自虐ネタで笑いを取ると、「おそらく観ている人は実際の僕らの年齢は20ぐらい下と思うかもしれません。そのぐらい夢を与えるはずだと思ってですね、千秋楽は全員の年齢を公表しようかなと思っています」とのオチに登壇者たちも爆笑した。
最後に、筧は「『クラスアクト』、開幕でございます。おそらくこのミュージカルはかなりの賞を取ることになり、今後2度、3度、4度、5度と再演していくことになると思います。その最初の、この初演を観られるかどうかというのは、今後のあなたたちが話題にしてくれることにかかっています。皆さんと、兄弟や親戚の皆さんと、私たちは『あれを見たんだよ』という、それを味わいにぜひ来てください。よろしくお願いしますよ!」と力強く会見を締めた。
公開ゲネプロレポート:エド・クレバンの生涯を、筧が数々のミュージカルナンバーを交えてエネルギッシュに熱演
1988年2月のブロードウェイ、シューバート劇場で、『コーラスライン』の作詞をしたエドのお別れ会が開かれるが、出席者は変わり者だったエドを偲ぶどころか、悪口を言い始める始末。そこに死んだはずのエドが皆には見えない幽霊のように現れ、キャッチーでウィットに富んだミュージカルナンバー「死んでいても生きる」を披露し、物語が始まっていく。
本作は、エドの生涯と取り巻く登場人物たちの感動の実話がベースとなった物語ではあるが、重たいだけの物語ではなく、ジョークやコミカルさも随所にちりばめられ、実際にエド自身によって作曲・作詞された数々の魅力的なミュージカルナンバーが彩る楽しいミュージカルとなっており、華やかな70年代ブロードウェイの裏側にも迫りつつ、『コーラスライン』の製作秘話的な『コーラスライン』のスピンオフとも言える見どころの多い作品となっている。
野心に燃える芸術家で才能にあふれるが、作曲にも固執するあまり、『コーラスライン』では作詞家として携わるなどの苦悩を抱え、そして仕事の人間関係や恋愛に関してどこまでも不器用なまでのエドの生涯を、筧が数々のミュージカルナンバーを交えてエネルギッシュに熱演。
若い頃からエドの一番の理解者であり、最初の恋人で女医というソフィを、紫吹は、エドと別れてからも、いつまでも彼のそばに寄り添いながら、優しさと気高さを持った女性として凜と演じている。さらに、ミュージカル教室の同級生でブロードウェイの女優であり、エドの最後の恋人であるルーシーを、高橋がチャーミングさと、最後までエドを見守り続ける暖かな眼差しで印象づけてくれる。
演技力と歌唱力を兼ね備えた個性あふれる実力派のキャストが勢ぞろいし、『コーラスライン』製作の裏側と共に、謎に満ちたエドワード・クレバンの生涯が、彼自身の楽曲によって綴られる自伝的ミュージカルがついに日本で上演される。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
あらすじ
1988年2月のブロードウェイ、シューバート劇場で『コーラスライン』の作詞をしたエド・クレバンのお別れ会が行われている。
しかし集まった友人達は次第に、変わり者だった彼の悪口を言い始める。
エドの最初の恋人であり、一番の理解者である医者のソフィが彼の真実の姿を語り出し、物語は始まる。
エドが大学生の頃、精神病院に入院していた時、音楽をつくることによって心が安らいだ。
この体験とソフィの存在が心の支えになり、彼は作曲家への道を志すようになった。
レコード会社のプロデューサーとして働きながら、ミュージカルのクリエイターとしての夢をかなえる為に日々努力を重ね、ついに世界的大ヒットとなる「コーラスライン」の作詞家として大成功を収めた。
しかし彼の本心は作詞よりも作曲を手掛けたかったので、今一つ釈然としない日々を送っていた。
ある日、彼はソフィから自分が不治の病に侵されていることを宣告された。
そして作曲家としての夢を掴む前にこの世を去ることに・・・。
エドのお別れ会で友人達は、彼からそれぞれに贈られたお別れのメッセージを受け取り、エドの死後にはじめて彼の真心、真実の姿を知るのであった。
ブロードウェイミュージカル『クラスアクト』公演情報
<上演スケジュール>
【東京公演】
2024年5月30日(木)~6月2日(日)
サンシャイン劇場
【宮崎公演】
2024年6月6日(木)
宮崎市民文化ホール
【熊本公演】
2024年6月8日(土)
熊本城ホール メインホール
【鹿児島公演】
2024年6月9日(日)
鹿屋市文化会館
【愛知公演】
2024年6月13日(木)
愛知県芸術劇場 大ホール
【岡山公演】
2024年6月16日(日)
倉敷市芸文館ホール
【青森公演】
2024年6月20日(木)
リンクステーションホール青森
【静岡公演】
2024年6月22日(土)
沼津市民文化センター 大ホール
【香川公演】
2024年6月29日(土)
ハイスタッフホール(観音寺市民会館)
【愛媛公演】
2024年6月30日(日)
愛知県芸術劇場
【沖縄公演】
2024年7月6日(土)~7月7日(日)
那覇文化芸術劇場
【福井公演】
2024年7月13日(土)
フェニックス・プラザ
【北海道公演】
2024年7月13日(土)
カナモトホール(札幌市民ホール)
【兵庫公演】
2024年7月26日(金)
神戸国際会館こくさいホール
【大阪公演】
2024年7月27日(土)
南海浪切ホール
【長崎公演】
2024年8月3日(土)
長崎ブリックホール
<スタッフ・キャスト>
【作曲・作詞】エド・クレバン
【脚本】リンダ・クライン、ロニー・プライス
【オリジナル・ブロードウェイ版演出】ロニー・プライス
【日本語台本(訳詞含)・演出】西田直木
【振付】川崎悦子
【音楽監督】宮﨑誠
【キャスト】
エド:筧利夫
ソフィ:紫吹淳
ルーシー:高橋由美子
マーヴィン:吉田要士
リーマン先生:ブラザートム
フェリシア:松岡美桔
モナ:星野真衣
ボビー:宮野怜雄奈
チャーリー:平山トオル
マイケル:吉田潔
ダンサー:市川由希
公式サイト
【公式サイト】 https://aclassact.jp/