福田雄一×StarS(井上芳雄・浦井健治・山崎育三郎)『トライベッカ』プロデューサーが語る制作秘話<vol.1>

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WOWOWで放送中の『トライベッカ』、いよいよ本日5月27日(金)第2回目が放送となる。現在、日本のミュージカル界において“プリンス”と呼ばれる大人気俳優― 井上芳雄、浦井健治、山崎育三郎の3人が結成した夢のユニット・StarSが初めてレギュラー出演する大注目のプログラムだ。また、番組の脚本・演出を福田雄一(『勇者ヨシヒコの冒険』など)が手掛けるほか、レギュラーキャストに渡辺麻友(AKB48)を迎えるなど、StarS以外にも見どころ盛りだくさん!ミュージカルファンでなくとも楽しめる“ミュージカル・コメディ番組”となっている。

エンタステージでは今回、番組の製作を手掛ける金山麻衣子プロデューサーに、番組誕生のきっかけやStarSメンバーの素顔など、番組にまつわる貴重なエピソードを聞くことができた。内容盛りだくさんでお贈りする短期連載、番組と共にお楽しみあれ!

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目次

◆始まりは2014年のトニー賞授賞式から

一番最初のきっかけは、2年前の2014年、第68回トニー賞授賞式の放送の時です。WOWOWがトニー賞を放送するという話はその2014年の4月中旬に決まり、放送は6月初めに迫っていたので、考えてみたら2ヶ月なかったんです。中継番組のキャスティングは1年前ぐらいから準備を始めるのが普通なので、「大丈夫!?」みたいなところから始まりました。
幸い、『メトロポリタン・オペラ』にもご出演いただいている宮本亜門さんと八嶋智人さんに案内役をやっていただけることになり、世界的に著名な演出家と、舞台と映像の両方で活躍されている俳優というコンビはトニー賞の放送にはピッタリでした。
その後、“プロモーションをどうするか”、自分たちで話題性のある企画を作ろうというその話し合いの中で、アカデミー賞のCMがミュージカル仕立てでやっていることにヒントを得て、「プロモーション映像をミュージカル風に作ったら面白いんじゃないか」となったんです。しかも、その映像を作るにあたってミュージカル界の方に出て頂こうという話になり、井上芳雄さんのお名前が挙がりました。
これは個人的な話なんですが、井上ひさしさんの『組曲虐殺』を観に行った時に井上(芳雄)さんが小林多喜二の役をやっていらしたんです。その時初めて拝見したのですが、声もスタイルもいいし、歌もすごく上手くて…ミュージカルのような華やかな世界にいる人がこんなに抑えた演技が出来るんだと、とても印象に残っていました。
なのでぜひ一緒に仕事をしてみたいと思ったのですが、ただ、そんなトップスターの方にこんなお願いをしていいものだろうか…という懸念もありました。が、井上さんの事務所にプロモーション映像の話をしたところ、すぐに快諾をいただけたのです。
プロモーション映像の内容については、トニー賞のオープニングでミュージカルソングの替え歌が披露されていたことにちなんで、替え歌を作ることにしました。それを井上さんに歌っていただいた映像を放送したところ、彼の歌の上手さと替え歌の面白さもあってものすごい反響があったんです。トニー賞の放送当日にもスタジオで歌っていただいたり、本当に井上さんのおかげで1年目のトニー賞は大好評のうちに終えることができました。

◆井上芳雄が抱く日本のミュージカル界への思い

この授賞式の放送を通して井上芳雄さんという俳優の素顔に触れ、私も含め番組スタッフも皆、井上さんのファンになっていました。あれだけの動員力を持つトップスターの方なのに本当にいつも丁寧でとても気さくで、スタッフに対する距離感がすごく自然なんです。しかも品があり、そのうえ抜群の才能もお持ちで…ご本人いわく「音を外すことができない」そうです。常に努力をされているんでしょうけど、その姿は見せない方という印象ですね。
そして、井上さんは本当にトニー賞のファンでもいらして、我々が教わることも多々ありました。ブロードウェイの現地にはお忙しいのでなかなか行かれないそうですが、そういったブロードウェイミュージカルの音源CDなどをたくさん持っていらっしゃるそうで、その音楽から作品の良さを学んでいらっしゃるんだと思います。
また、井上さん自身、ミュージカル俳優として活動する中で、お客様の層に広がりを持たせたいと考えているそうです。その裾野を広げるという意味で、「既存のミュージカルファン以外にも興味を持ってもらえるぐらい“市場”を大きくしたい」ということも仰ってました。それを表したのが「日本のトニー賞を作りたい」という彼の言葉なんですね。私たちもそれに共感して、井上さんと共に目指せたらと思っています。

そして、2年目の第69回トニー賞になり、この年は渡辺謙さんの『王様と私』がノミネートされ、準備の段階からトニー賞を盛り上げる有力な形がすでに出来ていたので、あとは井上さんと日本のトニー賞を作るという大きな夢の一歩が、現実的に踏み出せたらいいなと思いました。

◆『僕らのミュージカル・ソング』コンサートがもたらしたもの

そして、第69回トニー賞も井上さんとご一緒させて頂いた後、同年夏に『僕らのミュージカル・ソング』というWOWOWオリジナルコンサートを開催しました。そこには視聴者が“ミュージカルソングの素晴らしさに触れる機会を作る”という狙いがあったんです。

トニー賞はいわゆる賞レースの授賞式という形ではなく、その年のブロードウェイ作品の素晴らしさをダイジェストで見られるという一つのパッケージにもなっています。なので、私たちでもそういったミュージカルの名曲を披露するコンサートを作りたいという思いがあって、まずそれを夏にやりましょう!と、2015年のプロジェクトの一つとして立ち上げたものでした。

井上さんのエンターテイナーとしての才能は、歌の上手さだけではなく話術にも長けているということがあります。『デヴィット・レターマン・ショー』のような、ライブショーをやりながらトークもやるという所謂アメリカのエンタ―テイナーのような印象が井上さんにはありました。そういった魅力もお届けできるよう、このコンサートは井上さんのトークを交えながら進むことにしましょう、と。井上さんがホストを務める前提で、キャスティングも井上さんと一緒に考えました。
これも、井上さんが考えている「日本のミュージカルの裾野を広げたい」という気持ちがある中でのプロジェクトだったので、ミュージカル俳優だけではなく、他のジャンルで皆が知っているような有名な方に出ていただきたかったのです。
そこで、井上さんから「天童よしみさんとぜひ一緒にやってみたい」という話があり、依頼をしたところ、快諾いただき、その時点で、コンサートの成功を確信しました。まさにやろうとしてことが実現しました。
『僕らのミュージカル・ソング』が終わった後、井上さんとお話しする機会がありました。私たちやきっと井上さんご自身が感じたことでもあったんですけど、「これ自体は素晴らしい企画だけど、やはり単発だとその一時で終わってしまう」ということだったんです。結局、「日本のトニー賞」へ向かっていく道筋の中では絶え間なくいろんな努力を続けていかないとダメなんです。また、「日本のミュージカルの裾野を広げる」ために何をしていかなければいけないかを考えた時に、ミュージカルファンとミュージカルを知らない人達の両方に見て頂ける番組を作る、その意味でコンサートの作り方もすごく難しかったですし、「どこに向けて作るのか」という部分に関しては、常に試行錯誤しています。
そこは作り手側が割り切るしかないんですけど、どうも割り切れないところがあって、ペイチャンネルというWOWOWの仕組み上、お金を払ってまでこの番組を見てくださっている視聴者のほとんどはミュージカルファンに違いないわけです。『僕らのミュージカルソング』というタイトルをつけた時点で、ミュージカルファンに観ていただけそうですよね、しかし、知らない方にも見ていただきたい。そこでいろいろな矛盾に気づいたんです。

☆vol.2では、いよいよ『トライベッカ』誕生秘話が語られます!お楽しみに!

福田雄一×StarS(井上芳雄、浦井健治、山崎育三郎)「トライベッカ」
5月27日(金)深夜0:00
https://www.wowow.co.jp/stage/tribeca/

生中継!第70回トニー賞授賞式 [WOWOWプライム]
6月13日(月)午前8:00 [同時通訳]
6月18日(土)夜7:00(字幕版)
https://www.wowow.co.jp/stage/tony/

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この記事を書いた人

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