WOWOWで放送されたミュージカル・コメディ番組『トライベッカ』。“ミュージカル界のプリンス”と呼ばれる井上芳雄、浦井健治、山崎育三郎の3人で結成したユニット・StarSが初めてのTVレギュラー出演、さらに脚本・演出を福田雄一(テレビ東京『勇者ヨシヒコの冒険』シリーズなど)が手がけたことでも大きな話題を呼んでいる本番組のBD&DVDが、いよいよ2016年12月21日(水)より発売となります。
『トライベッカ』誕生のきっかけやStarSメンバーの素顔など、番組の製作を務める金山麻衣子プロデューサーが語った舞台裏エピソードを紹介するコラム後編をお楽しみください。
◆『トライベッカ』製作決定までの軌跡
番組製作の発端となったのは、『僕らのミュージカル・ソング』コンサートが終わった後、ミュージカルが大好きなWOWOWスタッフがあたためていた企画書で、コメディドラマ仕立てでミュージカルを絡めた内容で書いたものがあるとお話し、そのキャスティング構想が面白くて、話が盛り上がったんです。そこから先ほどの“活動を継続していく”というところ(前回コラム参照)に繋がり、「そんなレギュラー番組があったら面白いね」という話になりました。そこで、井上さんが「それ、もし集まれたらStarSでやりませんか?」とおっしゃったんです。それでますます話が膨らんだのですが、その時は場の勢いみたいなものもありましたし、一夜限りの夢のような話で終わったんです。
しかし、そこから奇跡のような展開が起こりはじめました。
数日後に、井上さん側から「StarSの皆さん、あの企画に乗り気です!」という連絡があったんです。正直、最初に聞いた時は「あの企画・・・?」と、一瞬思い出せませんでしたが、このチャンスを逃してはいけない!思い、すぐに企画を練り直して企画会議に出しました。普通、こうしたレギュラー番組の企画がいきなり通ることはめったにないのですが、驚くことに、その会議で企画が通ったんです。
そうして、信じられないぐらいの早さで“StarS”と“WOWOWのレギュラー番組”という枠組みが出来たのですが、誰に脚本を書いてもらうのかという問題が残っていました。ここからは製作発表でも話されていたことなのですが、井上さんから「福田さんはどうでしょうか?」という提案が出たんです。それから、井上さんが福田さんに実際に打診してくださり、快諾していただいたのです。
最初に過去の企画の話をしてから番組製作が決まるまでの流れがあまりにスピーディーで、これこそトントン拍子に良い企画というのは進むんだなと実感しました。
◆撮影を通して見えたStarSの個性
井上さんは「音を外すことができない」ということがありましたが(前回コラム参照)、そうした完璧さと、アドリブがあったりするコントというものは、ある意味、真逆の性質だと思います。井上さんは完璧な“プリンス”です。しかし、プロとして福田さんの要求に応えるためには、どうしてもプリンス像を崩さなくてはならないんですね。「どこまで崩すべきか」ご自身と向き合いながら、段々と崩れていく様子が見られたことは本当に貴重でした。ただ、本当に崩してはいけない領域というのもあって、福田さんもそこをギリギリまで見極めながらチャレンジされていたと思います。
逆に、山崎さんは“どこまで崩れられるか”という挑戦をしていたように見えました。『下町ロケット』に出演されたりと映像のお仕事も増えているなかで、この『トライベッカ』の現場も成長の糧にしていらっしゃるように感じました。例えば、衣装として用意されたスーツの丈が、山崎さんだけ少し短いことに気がつかれたんです。その理由を自ら福田さんに確認して、「(山崎さん演じる)ガウディ北村はイタリア人っぽく見せたい」という福田さんの思いを緻密に汲み取って役作りに活かしていました。そうした衣装一つにも敏感になにかを感じとろうとする姿勢に、まさに今、俳優として急成長していらっしゃる最中なんだなと感じました。
浦井さんの印象は他のお二人のどちらとも違っていて、空気のように作品に馴染んでいました。さすが『ニーチェ先生』など福田作品に何度も参加されているなという感じでした。StarSの3人でいる時は、ツッコミとボケでいえばボケ役で、本当にいつも柔らかな印象のの方なのですが、出演された舞台を観ると、もしかしたらその印象すら浦井さんの一面でしかないんじゃないかと思うほど、変幻自在な方だなと思います。天真爛漫なイメージがありますが、それだけではあれほど多彩なお芝居はできない気がしますし、どんなタイプの作品にも自然に染まれる柔軟性を持ってらっしゃる方ですね。
◆今後の「ミュージカル応援し隊」について
まず、『僕らのミュージカル・ソング・コンサート』がはじめの一歩だったと思います。この『トライベッカ』ができたというのはとても大きなことですが、今回ここまでピースが揃ったことはビギナーズラックだとも思っていて、やはり次の一手が大事です。ミュージカルの裾野を広げるための活動を継続していくには、テレビ番組の放送だけでは難しいということを『トライベッカ』を作ったことで感じさせられた面もあります。
また、WOWOWというメディアで出来ることは「番組を作ること」だけなのだろうか、ということも考えています。テレビとしては、『トライベッカ』の次に続くような番組も頑張って続けていかなければなりませんが、そういった放送を通してミュージカルの魅力を発信した結果、実際に観てみたいと思っていただいた方の受け皿になるような企画にも派生していけたらと思います。そして、その先に「日本のトニー賞」と呼べるような、さまざまな作品が集まって日本のミュージカルや演劇をみんなで祝えるような祭典を作って、さらにそれを放送できれば理想的ですね。
◆福田雄一×StarS(井上芳雄・浦井健治・山崎育三郎)「トライベッカ」BD&DVD
12月21日(水)発売!
本編はほぼそのまま収録!特殊パッケージ仕様に豪華ブックレット、オリジナル劇中歌のCD付き!
詳しくは、https://www.wowow.co.jp/stage/tribeca/
◆ミュージカル応援プロジェクト「ミュージカル応援し隊」
https://www.wowow.co.jp/stage/musical/