関西発の演劇は、若手からベテラン劇団に至るまで、独特のおもしろさを持っているのがいちばんの魅力。そこで昨年の動きを振り返りつつ、2015年に注目していきたい劇団をご紹介していきます。
2014年ふりかえり~近鉄アート館開館&水辺の芝居に新たな可能性が
全国的には文化助成金の問題に注目が集まり、厳しい環境と思われている関西の舞台芸術シーン。とはいえ広く目を向けると、逆境を変えようとする力が確実に育っていることを実感する年でもありました。中でも大きなニュースは近鉄アート館の再オープン。一般観客のみならず、著名な作・演出家も「関西一のお気に入り」にあげる人が多かったこの劇場の13年ぶりの復活は、関西人ならずとも歓迎した人が多かったことでしょう。
維新派『透視図』
また観光資源としての「水都大阪」の魅力を見直す動きが進む中、そのムーブメントに乗った芝居が話題を読んだのも、2014年の隠れトピック。「劇団子供鉅人」は、クルーズ船を駆使してRPGのようなプチ冒険物語を展開した『クルージング・アドベンチャー3』を。「維新派」は、川岸の埋立地で野外ならではの異空間を作り上げた『透視図』を、それぞれ上演しました。この2作品は、様々な意味で「まだ大阪も捨てたもんじゃない」と、多くの人に思わせたはず。この時流を上手く活かせば、文字通り“大阪ならでは”な傑作が続く可能性があるかも?
これ以外にも、川下大洋+三上市朗+後藤ひろひとの伝説のユニット「大田王」15年ぶりの公演『大田王2014ジゴワット』を始め、ピースピット『れみぜやん』、メイシアタープロデュース『グッド・バイ』、sunday『友達』、ヨーロッパ企画『ビルのゲーツ』、極東退屈道場『ガベコレ』などが、関西発の好舞台として印象に残りました。
その一方でシアターBRAVA!閉館決定、「ピースピット」活動休止&「ミジンコターボ」解散、関西在住の岸田國士戯曲賞作家・深津篤史の早逝などの辛いニュースも。とはいえ、コミュニケーションの不条理さを冷徹に描き出した深津の名作の数々は、今後も世代を超えて継承されていくはずです。
2015年の関西は、こんな劇団&動きに注目です!
2015年の関西は、引き続き「ヨーロッパ企画」を中心とした京都勢の動きをマークしておきたいところ。すでに東京進出を果たした「男肉 du Soleil」「イエティ」「夕暮れ社 弱男ユニット」に続く存在として、特に期待されているのが「THE ROB CARLTON」。その“なんちゃってセレブ”なシチュエーションコメディに、ハマる人続出中です。4月には、若手の登竜門的な劇場HEP HALLでの初公演を実現するので要チェック!
実は長らく「東(京都)高/西(大阪)低」気味だった関西の若手事情ですが、大阪からも要注意の劇団が台頭し始めました。中でも「劇団壱劇屋」は、昨年初の東京公演を成功させたばかり。パントマイムを多用した知的な舞台も、アクション満載の派手なエンタメも両方行けるバラエティ性が彼らの強みでしょう。また「D-BOYS」の関西版と言える「Patch」の急成長ぶりも特筆モノ。2014年は毎月1本公演を打つという演劇修行を敢行し、12月の本公演では見事に“半年前と違う俺たち”の姿を誇示していました。今後はタレント集団ではなく“劇団”として、演劇界をにぎわせてくれそうです。
東京進出以前の若い集団としては、他にも「第19回OMS戯曲賞」大賞作家・稲田真理のユニット「伏兵コード」、メタフィクショナルな世界で異彩を放つ「匿名劇壇」、淀んだ暗さが一周回って笑いに変わる「努力クラブ」などにも期待。また、産休中だった主宰のたみおが復帰した「ユリイカ百貨店」のこれからの活躍も楽しみです。彼女のように育児と演劇活動を両立し、子育て中の親&幼児にも優しい公演に取り組む作・演出家が現れ始めたのも、実は今後の関西の見逃せない動きの一つだったりします。
ユリイカ百貨店『どうぶつものがたり』2015年1月21日(水)、1月25日(日)大阪common cafeにて上演!
日本の演劇というと、どうしても東京ばかりに注目が集まりがち。しかし人気や流行にまどわされず、自分の好きな世界をマイペースで築き、唯一無二の作風を確立する人が多いのが関西演劇の面白さでもあります。時にはこちらの方にも足を向けて、そのオリジナリティあふれるステージにぜひ触れてみてください。