ブロードウェイの大ヒット舞台『ライオンキング』でも演出を務めた、トニー賞受賞作家でもあるジュリー・テイモア。彼女のプロダクションとして豪華なスタッフ・キャストを迎えた舞台『夏の夜の夢』は、2014年にニューヨーク・ブルックリンにあるTheatre for a New Audience(TFANA)で上演され、前評判通りの大ヒット舞台となった。そして、映画監督でもあるテイモアの手によって撮影された本作の日本での公開決定を記念して、試写会イベントを開催。このイベントにはゲストとしてテイモア監督が登壇し、Q&Aセッションが行われた。
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シェイクスピア原作の舞台の中でもっとも場面展開が多く、妖精や魔法が登場する『夏の夜の夢』を、演出家テイモアは、視覚的に息を飲むほど魅了される世界に仕立て上げた。セクシーで、ファニーで、詩的なその演出を、『ブロークバック・マウンテン』、『アルゴ』、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の撮影監督でアカデミー賞ノミネート経験のあるロドリゴ・プリエトが撮影し、『フリーダ』でアカデミー賞作曲賞を受賞したエリオット・ゴールデンサールが音楽を担当。本作は2014年トロント映画祭でプレミア上映され、批評家たちの賞賛を浴びた。
キャストは、妖精のパック役に、1991年『貴婦人故郷に帰る』でローレンス・オリヴィエ賞最優秀女優賞を受賞し、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』にも出演したキャサリン・ハンター。その他にも『HOMELAND』や『ブラッド・ダイヤモンド』のデヴィッド・ヘアウッド、『アベンジャーズ』のティナ・ベンコ、『LAW & ORDER:性犯罪捜査課』や『ブルージャスミン』のマックス・カセラと、日本の映画ファンや海外ドラマファンにも馴染み深い名優が競演している。
「『夏の夜の夢』は、愛とそのパワーについてあらゆる側面から描いたシェイクスピアの作品の中では、もっとも楽しい戯曲です。舞台化するだけでなく、その舞台が収録され映画化されるこの企画に参加できたのは素晴らしいことです」と、本作について語ったテイモア。
生の舞台を映画として撮影した本作について、彼女は「ナショナル・シアターのライブとは違って、本作は4日に渡って4回のプロダクションを撮影しています。生の舞台を複数のカメラで撮影するだけでなく、配置をコントロールできるように撮影日を数日追加しました。私たちは、動くカメラとステディカムを駆使して、舞台上のエネルギーやダイナミックさを捉え、様々なアングル・クローズアップ・役者のリアクションなど、生の舞台では観客の目が届かないシーンを収めました。カメラはそこら中に配置され、ポストプロダクションでは通常の映画のように編集作業を行い、作曲家エリオット・ゴールデンサールが映画のためだけに音楽を追加することも可能にしました。映画と舞台のハイブリッドと言ってもいいと思います」と話した。
さらに「舞台の製作時には、映画として撮影することは全く考えていませんでした。公演中に映画スタジオの方が観に来て、ぜひ映画にしたいと言われました。ですが公演終了間際だったため、時間が無くて5日間で準備を行い、1週間しか撮影期間が無かったのです。でも、その頃には芝居のことは全て理解していましたので、何を撮るべきか、何を観せるべきかは分かっていました。舞台を撮ることで、より観客が想像力を働かせて参加できるということから、今ではこういう形で撮るべきものだったんだと確信しています」と説明。
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また、撮影技法や編集についても「例えば、タイターニアの長いセリフの時に、カメラはオーベロンの表情と反応を撮っています。実際の舞台では、オーベロンは観客席に背中を向けているので、観客には彼の表情が見えなかったのです。このように、演者のリアクションに対してクローズアップという映画技法が使える点も、本作の強みです。編集には全部で80時間のフッテージを使って10週間を費やしました。ですから、映画を観る皆さんは一番良い席で『夏の夜の夢』を観られるということなんです(笑)」と裏話を披露している。
世界最高峰の舞台を日本に居ながら映画館で鑑賞できる本作。舞台の上演では目の届かないシーンや俳優の表情のアップ、日本語字幕付きでの上映など、生の観劇とはまた違った魅力を持つ本作は、演劇ファンにも、映画ファンにもオススメできる作品だ。
映画『夏の夜の夢』は、11月13日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほかで全国順次公開。