稽古場・劇場など演劇制作の現場では、一般にはあまり馴染みがない用語や普通とはちょっと違う意味を持つ言葉がたびたび登場。大半がもとは能狂言や歌舞伎など伝統芸能の専門用語で、今も演劇界で広く使われています。そんな中から、まずは〈初級編〉として、演芸・放送業界ほか演劇以外の業界でも使用されるもの・テレビのバラエティ番組などでも耳にするもの・そうして使われるうちに一般にも広まったものを中心に、演劇ファンならぜひとも知っておきたいコトバをご紹介しましょう!
稽古・公演準備編
ダメ出し【だめだし】 主に演出家が、俳優や裏方に「駄目」な点・改善してほしいところ・修正したい箇所などを伝えること。用例:「役者にダメを出す」「ダメ出しは明日13時からです」
ハケる【はける】 俳優や道具などがその場(舞台上)から退場すること。反対に、登場することは「出る」。両方を合わせて「出ハケ」という。
とちる 出ハケやセリフのタイミング、決められた演技、きっかけなどをミスしてしまうこと。
噛む【かむ】 セリフを言い損ねること。セリフを忘れたり間違えたりする(=とちる)のではなく、本人は正しく言おうとしたにもかかわらず、舌がうまく回らなかったり(もともとの)滑舌が悪かったりしてちゃんと言えなかった状態を指す。
稽古開始2時間後に本番!「秘密のアクトちゃん」は無事上演されるのか!?
押す【おす】/巻く【まく】 予定の時間からオーバーしたりショートしたりすること。スケジュールよりも遅れることを「押す」、早まったり(早めたり)短くなったりすることを「巻く」という。用例:「開場は5分押しです」「退出時間迫ってるんで、巻きでお願いします!」
見切れる【みきれる】 舞台の両端(袖)にある幕(袖幕)などの奥が、客席から見えてしまうこと。上演中に見えてはいけない人・物が見えてしまうこと。
劇場・舞台編
初日【しょにち】 複数日にわたって行われる公演の最初の日のこと。もしくは最初の公演自体を指す。終演後には、関係者らが劇場ロビーなどに集まって「初日乾杯」(無事に初日の幕が開いたことを祝し、公演の成功を祈る飲みイベント)が開かれることが多い。
中日【なかび】 一定期間行われる公演のちょうど真ん中の日。またはその日の公演自体。折り返し地点として非常に重要だが、公演期間の長短に関わらず中だるみしがち。ケガやミスなど思わぬハプニングも起きやすい。
千秋楽【せんしゅうらく】 公演最後の日、もしくはその期間内の最終公演のこと。「楽日(らくび)」「楽(らく)」ともいう。「これが最後」と思うと、上演側のみならず観客の気分も盛り上がる。本番を重ねるごとに作品も俳優もブラッシュアップされてくるのが通常で、理論的には千秋楽の内容がもっとも完成形に近く、舞台のクオリティも緊張感も最高潮・・・のはずなのだが、俳優の疲労もピークに達しており、そうはならない場合も。
幕間【まくあい】 1幕が終わって、次の1幕が始まるまでの間。「まくま」と読みたくなるが、正しくは「まくあい」。出演者もスタッフも、そして観客も一息つくひととき。物語の流れを断ち切りたくない演目の場合は、幕間なしで上演されることも多々あり。
千秋楽がライブ・ビューイング化されるステージが徐々に増えてきていますね!たとえばこちら!ミュージカル『黒執事』
消え物【きえもの】 本番中、舞台上で消費する小道具のこと。食べ物・飲み物のほか、破ったり燃やしたり壊したりして元の形でなくなるもの。終演後には量が減ったりなくなったりするので、次回公演のためにそのつど補充する必要が。
出待ち【でまち】 お目当ての俳優が退出するのを劇場の出入口付近で待つこと。またはその行為をする人々のこと。ブロードウェイでも「PLAYBILL」(観劇の際、無料でもらえるパンフレット)にサインをもらったり、一緒に写真を撮ろうとして、終演後の関係者出入口にファンが群がる光景が夜な夜な見られる。その日の公演のために劇場に入るところを待ち受ける「入り待ち(いりまち)」もあるが、入り時間は人や日によってまちまちなため、退出時間が読みやすい「出待ち」のほうがより確実。
尺貫法【しゃっかんほう】 長さ・面積・体積などの単位。いまどき日常生活で使う人はほとんどいないし、尺貫法で言われてもピンとこない人も少なくない。しかし演劇界ではまだまだ現役。舞台・劇場内部の各寸法や大道具の大きさ・材料(釘・木材・パネルなど)のサイズをはじめ、「物の長さ」を示すときによく使用する。単位は「間(けん)「尺(しゃく)」「寸(すん)」「分(ぶ)」など。一間は181.8182cmでおよそ180cm、一尺は約30cm、一寸は約3cm、一分は約3mm。十分で一寸、十寸で一尺、六尺で一間になる。
いかがでしたか?意外と耳慣れたものや普段から使う機会があるものも多かったのでは??
次回は〈中級編〉をお届けします!