ブロードウェイの秋冬の新作を紹介するコラムの第3弾は、ミュージカル編。開幕を迎えたのは4本と少なめだが、いずれ劣らぬ粒ぞろい。ビッグネームが出演している作品情報と共にお伝えしよう。
まずは『ON THE TOWN』。ベティ・コムデンとアドルフ・グリーンの脚本・作詞、レナード・バーンスタイン作曲による名作のリバイバル。ニューヨークで24時間の上陸許可を得た水兵3人が、大都会に驚きながら恋人探しなどをするにぎやかで楽しい一作で、先頃、日本でも坂本昌行・長野博・井ノ原快彦出演による翻訳版が上演された。映画ファンなら、ジーン・ケリー主演の映画『踊る大紐育(原題はOn the Town)』で本作を知る人も多いのでは?『ユーリンタウン』でトニー賞を受賞した演出家ジョン・ランドーによる新演出に、壮大なオーケストレーションによる楽曲も聴き応えのあるミュージカルファン必見の一作となっている。
ミュージカル『ON THE TOWN』坂本昌行からのコメントはこちらから!
『ハネムーン・イン・べガス』は、ニコラス・ケイジ、サラ・ジェシカ・パーカーが共演した1992年のコメディ映画を基にしたミュージカルだ。結婚を控えた男女の騒動をにぎやかに描いた内容は、ライトなノリで気楽に楽しめる一作。ミュージカル『マディソン郡の橋』で、今年のトニー賞楽曲賞と編曲賞を受賞した才人ジェイソン・ロバート・ブラウンによる楽曲も魅力的だ。
ミュージカルファン以外からも注目度が高いのは、イギリスの人気シンガーソングライター、スティングが楽曲を手がけた『The Last Ship』だろう。イングランド北東部の港町を舞台に、衰退していく造船業の一方で、父子の葛藤と絆を軸に町におけるさまざまなテーマを掘り下げていく。ずっしりと見応えのあるドラマに、スティングによるメッセージ性にあふれた楽曲の数々に注目したい。
新作ラストの4本目は、実在の結合双生児、ヒルトン姉妹を描いたミュージカル『サイド・ショウ』の待望のリバイバル。1998年の初演時は、衝撃的かつ大胆な試みに短期間で幕を閉じたが、ビル・ラッセル&ヘンリー・クリーガー作詞作曲による素晴らしい楽曲の数々に、キャストの熱演も手伝い根強いファンのいる作品だ。今回は、映画『ドリームガールズ』の監督・脚本を手がけたビル・コンドンによる新演出版となる。
日本版『サイド・ショウ』でヒルトン姉妹を演じたのは『オン・ザ・タウン』にも出演した樹里咲穂と貴城けいでした。
新作以外のビッグネームに目を向けてみよう。3月21日からプレビュー公演が始った『キャバレー』は、サム・メンデスとロブ・マーシャルがタッグを組んだ1998年リバイバル版の待望の再演。トニー賞リバイバル作品賞ほかに輝く名作で、主演のアラン・カミングの衰え知らずのパフォーマンスもさることながら、サリー・ボウルズ役に『ブロークバック・マウンテン』のミシェル・ウィリアムズが抜擢されて話題を呼んだ。好評を受けて、当初の予定を延長して2015年3月29日までの公演が決定したが、11月11日からは『アメリジング・スパイダーマン』のエマ・ストーンがサリー役を引き継ぐことで、再び注目を集めている。
ニール・パトリック・ハリスが今年のトニー賞に輝いた『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、『ブック・オブ・モルモン』やTVシリーズでもおなじみのアンドリュー・ラネルズが引き継いだ後、10月16日から人気TVドラマ『デクスター』のマイケル・C・ホールにバトンタッチ。こちらもまたハリス、ラネルズとは違ったパワフルなステージを見せて評判だ。キャストが変わるたびに同じ演目を見比べるのも、ブロードウェイの人気作の楽しみ方のひとつでもある。
今度は殺人鬼じゃないよ!マイケル・C・ホール、ブロードウェイのステージに登場
スティング
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アラン・カミング
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マイケル・C・ホール
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